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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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74話 ラヴィの本能

 急いでたんぽぽ亭に戻った俺たちは、ラヴィをベッドに寝かせた。顔色は悪くない、むしろすやすや眠っているようで安心したが……あの"暴走"とかいうやつ、その正体を俺はまだ知らない。


 だから今、こうして向かいに座るハルヴァンから、ちゃんと説明を聞いておく必要がある。


「――さて。お前たち、獣人についてどれくらい知ってる?」


 低い声でそう問いかけられ、俺は腕を組んだ。

「うーん……人っぽい見た目だけど、耳や尻尾とか動物的な部分がある……そのくらい、かな」


 隣のベルもすぐに頷く。

「ワタクシもそれ位の認識ですわね」


 ハルヴァンは鼻で笑った。

「まあ、普通はそんなもんだろうな。だが――まず獣人ってのは、姿こそ人っぽく見えるだけで、本質は獣だ。体の使い方も違うし、質も違う」


「質……?」


 俺が首を傾げると、ハルヴァンは顎でベッドのラヴィを指した。

「ああ。お前より細く見えるあの娘だが、力はお前の何倍もある。しなやかで強靭な筋肉の賜物だな」


「……そ、そんなにか」

 言われてみれば、ラヴィが剣を振るう時の速さは尋常じゃないし、巨大羊をぶっ飛ばしたりでかい戦斧を引きずり歩いたり、何度もそういうシーンを見てきてる。


 ハルヴァンはさらに言葉を続ける。

「ちなみに俺みたいな亜獣人ともなると、人間との力の差は歴然。獣人であってもそうそう勝てないだろうな」


 どや顔だ。まあ事実なんだろうけど、こう堂々と言われると腹立つな。


「さらに言うと、獣だっていうのは体だけじゃねぇ。心、強いてはその血に至るまでと言っても過言じゃない」

「血……?」

「ああ。さっきの暴走がまさにそれだ。抑えきれない"獣の衝動"ってやつだな」


 思い返すと、あの瞬間のラヴィはまるで別人だった。目は理性の光を失い、ただ獲物を狙う獣そのもの……

 目で追えない程のスピードに、猛牛二体を一人で倒してしまう程の力。いやいや、そんなの俺がどうやったって勝てる相手じゃない。


 ベルが不安げに声を上げた。

「じゃあ、どうすることもできないんじゃありませんの……?」


 だがハルヴァンは首を横に振る。

「いや、そうでもないさ。あの様子から見て、今回が初めての暴走だったんだろうから、これから徐々におさまっていくと思うぜ?」


「……でも、もしまた暴走したら?」

 俺は口に出さずにはいられなかった。


 ハルヴァンは笑って俺を見た。

「そん時は、お前が麻痺で止めてやったらいいんじゃないか?」


 俺が――止める?

 そんなこと、できるのか? ……いや、できるかじゃない。やらなくちゃいけないんだ。俺にしかできない役目なら、逃げる理由なんてない。


「……その時は、何としても止めてみせる」


 言葉にすると、心が少しだけ覚悟を固めた気がした。


 ベルも力強く頷く。

「もちろん、ワタクシもですわ!」


 ハルヴァンは口元を緩めた。

「あぁ、そうしてやるといい。いくら強くても心は繊細だ。傍で支えてくれるやつがいるってのが、あの娘にとっても何よりの支えになるだろう」


 俺とベルは深く頷き合った。


 ――その時。


「ん……」


 小さな声が聞こえた。ベッドに横たわっていたラヴィが、ゆっくりと目を開ける。


「ラヴィ……! おい、起きるな、そのまま寝てろ!」

「もう、大丈夫ですからね!」


 俺とベルが慌てて声をかけると、ラヴィは困惑した様子で辺りを見回した。


「え、ここ、どこ? 拙者は何を……? あれ、あなたは……ハルヴァン殿……? なんで、ここに?」


「……ラヴィ、落ち着いて聞いてくれよ?」

 俺はできるだけゆっくりと、スカーブルズをラヴィが倒したこと、その時の暴走のこと、そしてハルヴァンとの戦いについて説明した。


 ラヴィはしばし呆然とし、やがて俯いた。

「……不覚。まさか拙者が、そんなことを……すみません、ご迷惑を、おかけしました」


 そう言って起き上がろうとするのを、俺は慌てて押しとどめる。

「わあ、ちょっと! まだ寝てろって……!」


 だが、ハルヴァンは笑った。

「まあ、いいじゃねぇか。多分その娘、今相当元気なはずだぞ? なあ」


 促されるようにラヴィは自分の体を見下ろし、首をかしげる。

「え? ああ、そういえば……体が軽い。それに、お腹も、空いた」


 俺とベルは同時に息を吐き、顔を見合わせて小さく笑った。


 ――が、その穏やかな空気を破るように。


 ドタドタと足音がして、部屋の扉がノックされた。


「はい」


 俺が答えると、扉の向こうから声が響いた。

「ギルド職員です!マヒルさん、今すぐギルドまで来ていただけますか」


 おいおい、今度はなんだよ。

 こっちは一騒動終えたばかりなんだ、少しは休ませてくれぇ……

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