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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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71話 猛牛、迫る

 街中に解き放たれた凶暴なモンスター、スカーブルズ。広場に集まった男たちは我先にと逃げ出し始め、辺りは騒然としていた。


「おい、ちょっと、落ち着けって――いてっ!おい、こらぁ!」


 俺も人の流れに押され、身動きが取れないまま押し流されていく。

 くそっ、誰一人として聞く耳を持たない。それだけやばいモンスターってことなのか……。でも、だとしたらあいつらを放っておいたら、それこそやばいってことだよな……!


「ぐっ、この……パライ――」


 麻痺を放とうと伸ばした腕は、横からの体当たりに弾かれ、俺は無様に転倒した。

 押し寄せる群衆に踏みつけられ、顔の周りをドコドコと駆け抜ける足音が響く。


「いい加減に――」


 ふいに人の流れが途切れ、態勢を立て直した瞬間、視界に飛び込んできたのは――スカーブルズに軽々と吹っ飛ばされる男たち。

 あぁ、これはマジでやばいやつだ。


「ヴヴオォォォッ!!!」


 真っ赤な巨牛は群衆を押しのけ、通路の柵を木っ端みじんに砕きながら突進していく。


「大丈夫ですか、マヒルさん!」

「マヒル殿……!」


 駆けつけたベルとラヴィ。ベルはすぐさま【ヤヤヒール】を詠唱し、俺の体を包む光がほんの気持ち程度に痛みを癒す。


「ありがとう、ベル、ラヴィ。俺は大丈夫だ……でも、あの牛は本気でやばい」

「……うん、あれ、C+ランクの危険度。強い」

「真っ赤っかでしたわね!」

「ああ、やばかったわ……」


 本当なら今すぐ逃げるのが正解だ。だがその考えは一瞬で消えた。

 麻痺魔法への絶対的な信頼と、危険な場所に飛び込んできてくれた仲間への信頼――その二つが、背中を押していた。


「うっし、それじゃあ……二人とも、”牛追い祭り”を始めようか」

「……!はいですわ!」

「……肉……!絶対、倒す」


 パライジング・グレイスは、勝手に本当の「牛追い祭り」を始めた。


 * * *


「マヒルさん、その先を右に曲がってください!」

「了解!」

「そしたら、あの路地をまっすぐです!」


 俺たちは、複雑な街並みをくぐり抜けるようにして駆け回る。スカーブルズの後を追っても到底間に合わないことから、裏道にやたらと詳しいベルに従って、やつを待ち伏せしようという作戦だ。


 小さな路地や狭い通路を抜けると、ガランと開けた大通りに出た。そしてこの場所に、徐々に衝突音が迫ってくるのが聞こえる。


「はぁ、はぁ……よし、間に合ったな」

「ふぅ……さ、さすが、ワタクシですわ」

「ああ。本当にな。 さて、後はあの赤牛を止めるだけだな。みんな、最大火力で叩くぞ!」

「了解」


 ベルが魔法陣を展開し、ラヴィは抜刀の構えをとる。

 そして俺はスタンブレイカーを展開し、左手は銃の形を作る。


「…………来た!」

 バガァ!ドガァ!と手あたり次第に破壊を続けながら、スカーブルズが猛然と迫ってきた。

 狙うは、前脚――


「射貫け【麻痺銃(パライ・ガン)】ッ!」

 麻痺の弾が赤牛の脚に命中し、スカーブルズが激しく転倒。その隙に俺は【パライズ】を畳みかけ、全身を麻痺で縛り上げた。


「今だ!いけぇっ!」

「はいっ!【サモン・セバスチャン】!!」


 魔法陣から現れた屈強な執事のセバスチャン――の両腕が空を舞い、地面を抉るほどのストレートを叩き込む。スカーブルズの巨体が揺らぎ、鈍い衝撃音が響き渡った。


「参る……!」

 続け様にラヴィが一気に斬り込み、筋肉に覆われた巨体へ鋭い刃を浴びせる。斬撃は浅くしか通らないが、立て続けに何度も刀を振り抜き、赤黒い血が飛沫を散らす。


 俺はスタンブレイカーを地面に擦り付け、火花を散らしながら駆ける。相棒に電流が蓄積し、青白い火花がバチバチ爆ぜる。


「久しぶりの大技だ……!喰らえ【超電(ボルティック)撃滅(・インパクト)】!!」


 ドゴォォォン――!!落雷のような轟音と共に、雷撃がスカーブルズを直撃。巨牛は弾き飛ばされ、ついに動きを止めた。


 ……そう思った瞬間――


「ヴォヴォオォォォッ!!」


 ドガァッ!と隣家を突き破り、もう一体のスカーブルズが乱入してきた。瓦礫が弾丸のように飛び散り――


「ラヴィ!!」


 次の瞬間、ラヴィの頭に石片が直撃。彼女は通路の端に崩れ落ち、意識を失った。


「くそっ……!まずはあいつを麻痺らせて――」


 言いかけた俺の目の前で、倒れていたはずのスカーブルズがのそりと立ち上がる。

 二体の巨牛が同時に咆哮し、通路が震えた。


「「ヴォヴォアァァッ!!!!」」


 絶望的な二重奏。

 俺は震える腕を押さえつけるように、スタンブレイカーをきつく握りしめた。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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