表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/140

66話 お嬢様の証

 商業通りの一角、少し高級そうな店構え。そのショーウィンドウを飾るドレス一式は――八万ゴルドという大金だった。

 店員さんは営業スマイルの裏で「買えるわけないだろう」という冷ややかな視線を投げてくる。うむ、まあ、俺のボロ麻布姿を見ればその反応も正しい。


「いや、お金ならあるんですよ。だから、さっき試着室に入った金髪の子に着付けしてほしいんですけど」

「しかし……あのバトルドレスは、正直、私でも手が出ない代物ですが」

「払います払います。っていうか、バトルドレスって言うんですね、あの服」

「ええ。『冒険者にも気品を』というモチーフで作られたそうですが……品質を上げすぎてこの値段に」


 なにその伝説。けど、モチーフからしてベルにピッタリじゃん。これは決定だな。財布は泣くけど……。


 ――ベルは元貴族。失ったものは凡人の俺では計り知れないものがある。

 だからこそ今の彼女には、「自分の居場所を象徴する何か」が必要なんだと思う。

 懐に余裕がある今、それをしてあげられるのは俺たちしかいない。これもまた、"運命"ってやつだろう。


 ――戦うための気品あるドレス。

 それが、きっと彼女の支えになってくれると信じて。


 俺は会計を済ませ、こっそり店員さんに運んでもらうよう頼んだ。勿論、ベルには内緒で。

 試着室のほうからは、「えぇ!?いいんですの!?」「キャアァーー素敵ですわ!」と楽しそうな声が響いてくる。


 やがてドレス姿のベルが誇らしげに出てきた。その姿はまさしく"戦う貴族令嬢"。


「ふふん、どうですか?」

「うん、めちゃくちゃ似合ってる!」

「ベル、素敵」

「ふふん、そうでしょう……!」


 ベルは嬉しそうにくるくる回り、満喫している。さて、用事も済んだし帰るか。


「ありがとうございました!」

「またのお越しを!」


 俺はベルの手を引いて店を出た。


「えっ、ちょっ、マヒルさん!? これ着たままですわ! それに靴も!」

「もう買ったから大丈夫」

「え、えぇ? 買ったって、何を?」

「そのドレスと靴」

「へ……? え?」


 状況が呑み込めないベルに、ラヴィがトテトテと近寄る。


「……これ、プレゼント」

「プレ……え?」

「おいおい、察し悪いなー。ベル。これはお前の新しい装備だ!」

「えぇぇぇぇ!?!?」


 ベルは大慌てで手を振る。


「い、いただけませんわっ!? 一体いくらしたんですの!?」

「総じて八万ゴルド」

「はちっ……はひゃっ!?!?」


 奇声を上げて後ずさるベル。


「もしかして、嫌だったか?」

「そ、そんなわけありませんわ……むしろ、こんなに嬉しいのは久しぶりで……」

「なら、いいじゃん」

「こ、こんな高価なものを……?」

「だって、この服が似合うのはお前だけだろ。なあ、ベル?」

「うん。とっても素敵」

「なぁっ!?」


 ラヴィの不意打ちに、ベルの顔がみるみる真っ赤に染まる。


「……ありがとうございます。大切にしますわ」


 うっすら涙を浮かべ、笑うベル。その声が震えていて、俺の胸もぎゅっと締め付けられる。


「……本当に似合ってるよ」

「ふふっ、当然ですわ! ワタクシこそが、高貴なる天才魔法使い、ベルフィーナ=エーデルワイスですもの!」

「ベル、かっこいい」

「天才かどうかは知らんけどな」

「ちょっとぉ!?」


 俺たちの笑い声が通りに響いた。財布はすっからかん。でも、心は妙に満たされていた。

 ――そう、このドレスはただの布じゃない。ベルと俺たちが共に進む証なんだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

感想、ブクマ等いただけると励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ