55話 Dランク昇格!挑む新要素!
ある朝、ギルドからの封筒が。
はてさて中身は……?
ミノタウロスを倒してから数日。俺たちはのんびりした日々を送っていた。
討伐祝いに、ちょっと良い焼肉屋にも行ったりしてな。
ベルは「食べ尽くしますわよ!」と豪語したくせに、数皿でギブアップ。
ラヴィは逆に「肉が足りない」と言って延々と肉を追加注文。
俺はというと筋肉痛で動くのもやっとだったが……まあ、楽しい時間だった。
――そんな朝のことだ。
宿の部屋で伸びをしながら「今日はクエストでも行くかな~」なんて考えていたら、視界の端に一通の封筒が落ちているのが見えた。
「ん……? これって……!」
思わず飛び起きる。そう、Eランク昇格のときと同じ封筒だ!
寝ぼけ眼も吹き飛ぶ。だがこれは一人で読むもんじゃない!
俺は封筒を握りしめ、部屋を飛び出した。
「おーい! ベル! ラヴィ! ちょっと来てくれ!」
ほどなくして、ベルが優雅に登場。ぼわぼわの髪を振り撒いて、まだ眠たそうに目をこすっている。ラヴィは……すでに着替えを済ませていた。何をするつもりだ、朝っぱらから。
「なんですの? マヒルさん。こんな朝早くから騒がしいですわ」
「……ごはん?」
「いやいや違うって! これ見ろ!」
俺は自室に二人を呼び込み、机の上に封筒を置いた。手早く封を切り、中の紙を広げて見せる。
ーーー
『冒険者ランク昇格の通知』
ギルドの決定により、以下の者をDランク冒険者へ昇格いたします。
・マヒル=パライザー
・ベルフィーナ=エーデルワイス
・ラヴィーナ=シルヴァリオ
また、Dランク昇格に伴い迷宮探索と対抗戦への参加が可能となります。詳しくは、お近くのギルドまでお尋ねください。
ーーー
「うおおおおお!Dランク! 迷宮! 対抗戦!? 新要素キタコレ!」
俺は思わずガッツポーズ。胸熱すぎる展開に、テンション爆上がりだ! 俺たちは胸を高鳴らせつつ、ギルドへと向かった!
* * *
ギルドにつくと、セラ姐が出迎えてくれた。
「あら、Dランクのみなさんじゃないですか」
そう言って彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「へへ、おはようございます!色々聞きにきました!」
「来るとは思ってましたが……にしても早かったですね。待合所で少し待っていてください」
セラ姐はそういうと、カウンターの奥に戻り準備を始めた。俺たちは言われたとおり待合所で、それはもうソワソワと待った。
しばらくして、セラ姐が大量の書類の束をドンッと机に置いた。
「さて、ルーキー冒険者のみなさん、お勉強の時間です」
セラ姐はそう言って細身の眼鏡をくいっと上げた。
そしておもむろにに地図をバサッと広げる。
「まず、迷宮探索についてですが、一般には《ダンジョンチャレンジ》と呼ばれてまして、日夜冒険者たちが迷宮に挑んでいます。迷宮の仕組みはご存知ですか?」
「知りません!」
俺は元気よく答え、横の二人を首を横に振る。
「……はぁ。迷宮というのは、入場料を払うことで入れる不思議な空間で、一定周期で迷宮の中身が入れ替わります。この地方にはいないモンスターや、何故か設置されているお宝。それに、迷宮ボスというのもいて、倒すことでボス報酬というものがもらえます」
おお、これこれ!まさしく思い描いていた迷宮像だよ……!未知なる敵、豪華な報酬、何度でも楽しめる、まさにローグライクゲーム……!
「はい!迷宮って具体的にどんなところなんですか?」
「そうですね、迷宮の中身は多種多様で、何階層にも別れているものや広大な一つのエリアなどもあります。迷宮ごとの特徴は、資料で確認しみてください」
「分かりました!」
「あ、あの、聞いてもよろしいですか?」
ベルがおずおずと手をあげる。もう、完全に授業。
「はい、ベルさん」
「迷宮の変動中に残っていたら、どうなりますの?」
「強制転移です。迷宮内のどこかに飛ばされます。無事にすめばいいですが……お勧めはしません」
「……め、迷宮、怖いですわ、」
なるほど、そういう仕様になってるのか。冒険中に勝手に転移ってなるとえらい大変じゃないか……変動周期はちゃんと確かめたほうが良いな。
……ってなると、事前に迷宮の情報を確認してからどの迷宮に挑戦するか決めていく感じになりそうだな。あとでじっくり調べるとして――
俺は最後に質問をぶつけた。
「対抗戦っていうのはどういうものなんですか?」
ふいに、ベルがぴくっと肩を揺らした。どうしたのかと見ると、彼女はスンと顔を背けた。
……なんだ?まあいい、それより説明だ。
「……そうですね、簡単に言えばパーティー同士の力比べみたいなものですが……まあ、見てもらったほうが分かりやすいですね。どうぞ、こちらへ」
セラ姐はそう言うと、ギルドの奥にある大きな扉を指差した。
入口の扉よりも大きく立派で、木製の赤い両扉に金の装飾が施されている。
「この扉の先は、”闘技場”。あなたたちが望むなら、これから幾度となく訪れることになる場所……力のあるものだけが這い上がる場所です」
ギギィ、と彼女が開いた扉の先は――巨大な闘技場。
外の世界と隔絶された異様な空間。段々に広がる観客席が、俺たちを試すように見下ろしている。
俺は思わず息を呑んだ。
(……これが、Dランクの世界か!)
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