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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
3章

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52話 激突、ミノタウロス

 放牧場に着いた瞬間、鼻を突く鉄錆の匂いに思わず息を呑んだ。

 そこら中に、真っ赤な染み。転がるウシのような動物の亡骸。首がないやつ、腹を裂かれたやつ。まるで悪夢の見本市。


 その中を――悠々と歩く、巨躯。

 三メートル……いや、四メートルは軽く越えてる。筋肉は鋼鉄みたいに盛り上がり、全身に浮き出た血管は蛇のように蠢いていた。そして、その手には――血に濡れた巨大な戦斧。


 まさに想像した通り――いや、想像以上のモンスターだ。


「……あれが、ミノタウロス」

 気づけば、俺の声が震えていた。


 ベルは青ざめて小さく肩を震わせ、ラヴィの額には冷や汗が一滴流れていた。

 ……やべえな、正直、俺も足がすくみそうだ。


「作戦、確認だ」俺は息を整え、二人を見回した。


「まずはベル。お前の一撃で先制する。セバスチャンをぶちかませ」


「……はい、ですわ」ベルが唇を噛み、魔導書を握り直す。


「ラヴィ、お前はスピードで奴の隙を作ってくれ」

「……うん、任せて」

「そしたら俺が麻痺らせて、ラヴィでトドメだ」


 二人とも小さく頷いた。俺は深呼吸してから小さく叫ぶ。

「みんな、くれぐれも命大事に! いくぞ!」


 ベルが魔導書を展開し、魔力が集まり始める。そして魔方陣が展開された――その瞬間。

 ミノタウロスの赤黒い瞳が、ベルを捉えた。


 次の瞬間。

 地面が爆ぜるみたいな音を立て、巨体が駆け出してきた。


「な、気付かれた!? まだ何十メートルもあるだろ!?」


 慌てて【パライズ】を放つが――かわされた! 速え!?


 ベルの魔方陣が完成しかけたその刹那、ミノタウロスは斧を振り上げ、喉奥から獣じみた雄叫びを放った。


「ブオォォォォッ!!!」


 ――その声を聞いた瞬間、俺たちは地面に叩きつけられたように倒れ込んだ。まるで心臓を鷲掴みにされたように身体がすくむ。


「ぐっ……なんだ、これ……!」耳の奥に杭を打ち込まれたみたいな衝撃。体が鉛みたいに重い!


「【ウォリアー・ハウル】……。周りの敵を、萎縮させるスキル」

 ラヴィが苦しげに呟く。


 なんとか立ち上がり、俺は叫んだ。

「ベル! 魔法の準備を頼む!」


「わ、分かりましたわ!」


 ラヴィと俺は駆け出した。ラヴィが先陣を切り、ミノタウロスの斧を紙一重で躱して反撃の機会を伺う。俺もスタンブレイカーを展開し、攻撃の機会を伺う――が。


 隙がねえ! 一撃一撃が重すぎる! ヘタに手を出したら俺が二つになっちまう!


 防戦一方のラヴィ。それにひきかえミノタウロスは――笑ってやがる。戦いを楽しむかのように、蹂躙こそが快楽かのように、ニタニタと――


「っ……!」

 ラヴィが一瞬タイミングを誤った。ミノタウロスが戦斧を地面に叩きつけ、轟音とともに地面が揺れる。ラヴィの体勢が崩れた――そこへ岩のような拳が。


「ラヴィ!!」

 鈍い衝撃音。ラヴィは殴り飛ばされ、草地を転がった。


「くそっ!」俺は駆け寄りながら【パライズ】を撃ち込む。しかし、またしても避けられ、距離を取られてしまう。


「ラヴィ、大丈夫か!?」

「……うん、少し痛いけど……まだ動ける」

 その言葉に少しだけ安堵し、俺は覚悟を決めた。


「ベルぅぅぅ!!! ラヴィに回復を! その後は、セバスチャンの準備だ!!」

「わ、分かりましたわ!」


 ベルがラヴィに治癒魔法をかける。その間にラヴィは後退。

 俺は深く息を吸い込み――叫んだ。


「【リミット・ブレイク】!!!」


 稲妻みたいな衝撃が全身を駆け抜ける。筋肉が爆ぜるような力が湧き、視界が異様に鮮明になる。


 体を感覚を麻痺させて、限界以上の力を出すとっておきの技だ!当然、負担もバカでかいがな……!


「おおおおおおおっ!!!」


 一気に駆け出し、脳天にスタンブレイカーを振り下ろす。衝撃が骨に響き、ミノタウロスがわずかに怯む。戦斧の一撃を受け止め、火花を散らしながら押し返す。


 さらにもう一撃! 確かに効いてる! だが――


「っ……!?」

 急激に力が抜け、膝が崩れた。スキルの効果が切れたのだ。

 俺は地面に崩れ落ち、動けない。


 影が覆いかぶさる。ゆっくりと近付いたミノタウロスが、勝ち誇ったように口角を上げ、戦斧を大きく振り上げた。


「だ、駄目……!」

 ベルの悲鳴。


 俺は、ニヤリと笑い返し、最後の力を振り絞って腕を上げた。

「……【パライズ】」


 至近距離で、稲妻エフェクトが炸裂。

 ミノタウロスの巨体が震え、筋肉が痙攣した。


 ――動きが、止まった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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