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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
3章

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51話 アルクーンに迫る脅威

 俺たちは、昼過ぎにギルドへ戻ってきた。

 馬車の御者席でベルが「ふぅ~」と息をつき、ラヴィは荷台から無言で降りる。


 俺はといえば、収穫した薬草の束を抱えながら、街に帰ってきた安堵感にひたりつつあった。


 ……のだが。


 ギルドの前からなんだか騒がしい声が聞こえてきて、俺は足を止めた。中に入れば、その理由はすぐに分かった。

 ざわざわ……いや、わいわいガヤガヤ。冒険者たちがあちこちで声を上げている。


「おい聞いたか?」「近くで出たらしいぞ!」「まさか本当に……」


 ――こういう時、主人公は耳ざとく情報を拾うものだ。

 近くで飲んでいた二人組の冒険者にさりげなく近寄り、耳を澄ます。


「ああ、ミノタウロスが出たらしい!」


 ――はい出ましたァァ!


(ミノタウロス!?って、あの!?)

 心の中で叫びながら、俺は興奮を抑えきれない。


 やばいやばい、またしてもファンタジー代表選手みたいなモンスターがご登場です!

 ていうか俺の頭の中じゃ、もう完全に「迷宮の守護者」ポジションなんだけど!?

 あいつだよね!?人間の上半身に牛の頭が生えた、でっかい戦斧振り回す筋肉モリモリ怪物だよね!?


「……なんだか楽しそうじゃありませんこと?」


 横からベルがジト目で俺を見る。ラヴィは相変わらず無言だが、腕を組んだまま目を細めている。

 いやいや、俺だって危険なのは分かってる!でもさ!異世界で「ミノタウロス」って単語を聞いたら、テンション上がるに決まってんじゃん!?


 とりあえず報告を済ませ、報酬の千ゴルドを受け取るとカウンターの奥から俺を呼ぶ声が――


「マヒルさん!……もう聞きましたよね?」


 クールで知的な受付嬢、セラーナさん。通称セラ姐だ。(俺が勝手に読んでるだけだが)


「え? あぁ、ミノタウロスのことですか?」


「そうです」

 彼女は眉をわずかにひそめて続けた。


「あなたがゴブリンを倒した時に、調査していた“謎のモンスター”を覚えていますか?」


「あー……いましたね、そういえば」


「……忘れてたんですか」


 セラ姐はため息をつき、真剣な目で俺を見据えた。

 すいません、そんな冷たい視線を向けないでください……


「くれぐれも、近付かないでくださいね。相手はランクCです」


「わ、分かってますって!俺だって危険な目にあいたいわけじゃないですから!」


 本音を言えば、ミノタウロスを一目見たい気がするんだけど……いやそこは黙っとこう。


「そういえば、ミノタウロスって普通に生息してるもんなんですか?」


「……いや、普段は迷宮にしか現れないモンスターです。それが街の近くへ出現したので、対応が滞っているんです」


「へぇ……散歩って訳じゃなけりゃ、本当に異常事態なんですね」


「そりゃあそうですよ……お願いですから、近付かないでくださいね?今、Cランクの冒険者に召集をかけているところなので、数日は気を付けていてください」


「了ー解です」


 俺がひらひら手を振ってギルドを出ようとした、その時だった。


 ――バンッ!


 勢いよく扉が開き、ギルド職員が駆け込んできた。


「ほ、報告です!ミノタウロスが移動を開始、近くの放牧場へ向かっている模様!」


「なっ……!」

 セラ姐が息を呑む。


「くっ……あそこは食糧供給の要だってのに。すぐ動ける人は?」

「Dランクの冒険者が数名いますが……」

「Dか……よし、それでも声をかけて――」


 職員が言葉を重ねる。

「それが、すでに話をしましたが……その冒険者たちはどこかへ行ってしまったようで」


「……逃げた、か」

 セラ姐が額を押さえる。その姿に、ざわめいていた周囲の冒険者たちは沈黙した。


 俺はベルとラヴィを見た。ベルは強気な視線を返し、ラヴィはグッと拳を握る。そてし二人は無言で頷いた。


 よし。決まりだ。


「あの、セラーナさん」

「……なんですか」

「俺たちなら、すぐ動けます」

「……あなたたちが? だめです、相手はCランクなんです。危険すぎます」

「Cランクなら、この前倒しました。もちろん、過信はしてません。でも今動かないと、本当に大変なことになるんじゃないですか?」


 セラ姐は唇を結び、長い沈黙のあと――深いため息をついた。


「……無事で帰ってくるんですね?」


「任せてください!」

「もちろんですわ!」

「倒す」


 俺、ベル、ラヴィの声が重なる。


 セラ姐は目を閉じ、そして静かに告げた。


「……分かりました。非常時です。あなたたちにミノタウロス討伐の任を命じます。ただし、自分の身を優先すること」

「了解!」


 俺たちは力強く返事をし、ギルドを飛び出した。

 放牧場へ――ミノタウロスの元へ。


 胸が高鳴る。恐怖と興奮が混じり合って。

 次は、俺の「麻痺スキル」がどこまで通用するのか――。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

感想、ブクマ等いただけると励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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