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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
3章

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50話 森の悲鳴とマンドラお嬢

今日のクエストは――薬草採取。


 なんかこう、もっとこう、ド派手な戦闘とか、麻痺スキルの新境地とか、そんな展開を期待していた俺の胸に突き刺さる地味ワード。だが、冒険者ランクD以上の依頼しか掲示板には残っておらず、俺たちが選べそうなやつはこれしかなかった。

まあ、こういう地味な仕事も積み重ねが大事ってことだろう。


 俺とラヴィは、ベルが操縦する馬車に揺られて、一時間ほどで目的の森に到着した。


 木々は高くそびえ、昼間でも木漏れ日が斑に差し込む程度。葉は濃い緑で、湿った土と苔の匂いが鼻を突く。小鳥の鳴き声がちらほら聞こえ、森特有の静けさがある。


いやぁ~冒険者らしい仕事だ。俺の厨二心が「森の奥で何かが潜んでいるぞ!」って騒いでる。 ふふ、今日はどんな麻痺が炸裂するかな……?


「さて、今日は薬草採取なんだが……ベル、なんでも食べるなよ?」


「なっ!?ワタクシ、そこらの野草をむしゃむしゃする野ウサギじゃありませんわ!」


ベルは頬を膨らませて、ぷりぷりと怒る。その姿は野ウサギというより、野ハムスター。


「ラヴィ、なんでも触るなよ?」


「了解」


「ちょ、ちょっと待ちなさいませ!明らかにワタクシだけ扱いが雑ですわよ!?」


 よし、今日も平常運転。


 森を少し進むと、俺は地面に生えた草を指差した。


「お、これじゃないか?」


「うん、それ」ラヴィが即答。


「群生してるみたいだし、ここだけで終わりそうだな」


「よし、やってやりますわぁ~!」


 ベルはドレスの裾をまくり、がさがさと草を掘り始めた。うん、なんか嫌な予感しかしない。


「大丈夫か、あいつ……」とつぶやきつつ、俺もしゃがみ込んで草を抜く。


 そのとき――。


「ニイィィィィィィィィィン!!!」


 おっさんとカエルをかけあわせてできた生物が、断末魔の悲鳴をあげるような、耳を裂く甲高い音が森に響き渡った。思わず俺は両耳を塞ぐ。


「な、なんだ!?大丈夫か!?」


 周囲を見渡すと、ラヴィが耳を押さえて苦しげにうめいている。


 そして――ベル。


「べ、ベル!?……おいっ!どうしたっ!?」


 ふらふらと立ち上がったベルは、魔導書を開いていた。ページがバラバラとめくれ、強烈な魔力が渦巻いていく。目は虚ろで、口からは奇妙な笑い声。


「おほ、おほほほほほ……!」


 うわぁぁぁぁ!?なにこれ怖い!!


 魔方陣が展開され、俺とラヴィを焦点のあっていない目で睨みながら、ベルはにじり寄る。ラヴィは咄嗟に腰の刀に手をかける。


「ラヴィ、ま、待て!あいつはモンスターじゃない!……多分!」


「……でも、なんか変」


「確かに、いつも以上に変だが……って、おいおいおい!」


 魔方陣の中から、白い手袋がにゅるりと現れ始めた。


「おい、あいつセバスチャンを召喚しようとしてないか!?」


「倒す?」

ラヴィは刀身をチラリと見せる。


「待て待て、早まるな!こういうときはこれだろ!」


 俺は右手を突き出し、叫んだ。


「【パライズ】!!!」


 直撃。ベルは「あばばばばばば!」と痙攣し、その場にがくんと倒れる。

――と同時に、ラヴィが滑らかに動いてベルを抱きとめた。


「ナイスキャッチ! これにて、一件落着だな」


 胸をなでおろしながらベルに近付くと……彼女の手にはしなびた大根みたいな物体が握られていた。よく見ると――手足と、干からびたおっさんのような顔?がある。


「これは……」


「これ……マンドラゴラ」とラヴィが冷静に言う。


「鳴き声聞いた人、おかしくする」


「なるほど。薬草と間違えてマンドラゴラを採ったってわけか……」


 俺は天を仰ぎ、絶叫した。


「あほかぁぁぁぁぁ!!!」


 薬草とマンドラゴラ。どう見ても違うだろ!?葉っぱの形もギザギザとまん丸だ!どんだけ目ぇ腐ってんだあのお嬢さん!


 ベルはふらりと意識を取り戻し、ぱちぱちと瞬きをした。


「あれ……ワタクシ……?」


「変になってた」ラヴィが淡々と告げる。


「へ、変っ!?なんですの!?ワタクシ、なんだか記憶が……」


「変なのはもともとだろ?ほら、薬草は全部集めたから帰るぞ」


 俺が歩き出すと、ベルは慌てて叫んだ。


「え!?え!?ちょっと待ってくださいまし!ワタクシ、なんなんですの!?記憶が曖昧で……!」


 ラヴィと二人で馬車へ向かう俺。


「ちょっとぉ!?馬車の操縦士を置いていかないでくださいましーーーっ!!」


 森にベルの叫び声が響き渡った。

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