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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
3章

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49話 受付嬢と飲まナイト!

 なぜか俺たちのテーブルに腰を下ろし、ふぅーとため息をついた受付のお姉さん。え、一緒に飲むつもりで……?


 改めて見ると、黒髪ピッチリまとめヘアに、細身のメガネ、すらりとした体型。まさに「クールで知的なお姉さん」という言葉が服を着て歩いてるような人である。


 その人が、なぜか俺たちと同じ卓にいる。


 俺は思わず凝視してしまい――その瞬間、バチリと視線が合った。


「……なに?」


 声は低く、冷たく、そして鋭い。俺は慌てて背筋を伸ばす。


「い、いえいえ! なんでもないです……!」


 な、なんつぅ気迫だよ……そういや、さっきもえらくドスの効いた声を響かせてたな。さては、元ヤン……? でも、何にせよ俺たちを助けてくれたんだよな。


「……あ、あの、さっきはありがとうございました!」


 俺がそう言うと、横に座っていたベルも深々と頭を下げた。ラヴィは無言で頷く。


 するとお姉さんは、ふっと肩をすくめて言った。


「いやいや、いいんだよ。あんなバカ共のせいで酒が楽しめなくなるのは許せないからね」


 ……行動原理、酒!?

 見た目はクールビューティーなのに、中身は完全に飲んべえじゃないすか。


「あの、お姉さんは、よくここに来るんですか?」


 俺が恐る恐る尋ねると、お姉さんは一拍おいて、メガネの奥からじっと俺を見据えた。


「セラーナだ」


「えっ?」


「……私の名前。セラーナだ。ちなみにこの店は、たまの贅沢に使うくらいだ」


 セラーナさん……! 初めて名前を聞いたけど、知的でクールな彼女にぴったりの名前だ。……いや、今の酒飲み姿じゃなくてギルドの姿のほうだけど。

 あの気迫、酔っ払って「セラちゃ~ん!」とか呼んだら殺されかねない。


「まだ飲めるだろ?」


 俺が返事をする前に、セラーナさんはひょいと手を上げた。


「すいませーん! ブドウ酒二つとフルーツ盛り合わせお願いしまーす!」


 ウェイターを捕まえて、堂々と追加注文。完全に常連ムーブじゃないですか。


「あ、あの……お酒、強いんですね?」


 俺がおそるおそる言うと、セラーナさんはグラスをくるりと回しながら笑った。


「ん? まだ六杯しか飲んでないよ。そらに、飲まなきゃやってられないしね。誰かさんがクエストをどんどんこなしていくもんだから、忙しいったらないよ」


 そして、ジロリと俺を見た。


「えぇ~と……それって、ひょっとしなくても俺たちのこと……?」


「当たり前でしょーが」


 セラーナさんはギルドでよく聞く深いため息をついて、ワイングラスを置いた。


「あんたたち、ちょっとした話題になってるんだからね?」


「話題、ですか?」


「素性の知れない謎の男が来たかと思ったら、いつの間にかパーティーを組んで依頼をどんどん解決するし。冒険者としてはEランクだっていうのに、DランクやCランクのモンスターを倒すし……」


 そこまで言って、運ばれてきたブドウ酒を一気にあおった。


「もうめちゃくちゃだよ? 本人は無自覚で、しかも麻痺がどうこう言ってるし」


「……申し訳無ぇです……」


 俺は肩をすくめて小さく呟いた。だがセラーナさんは、不意に柔らかい笑みを浮かべる。


「でも、ギルドに貢献してくれてるのは確かだし、この前のゴブリンの件だって、本当に助かった。あんたたちパーティーには感謝してるよ」


 快活な笑顔。あ、これ、やばい。普段クールだからこそ、笑顔の破壊力が半端じゃない。


「ほら、ベルにラヴィ! まだまだ食べな! 今日は私のおごりだよ!」


「そ、そんな、だめですって!」


 俺が慌てて手を振ると、セラーナさんは目を細めて――


「受付嬢の言うことが聞けない……? ライセンス剥奪すっぞぉ?」


「……さーせん、ゴチになりやす!」


 姐さんには敵わないな……

 俺の声が一瞬で居酒屋の下っ端テンションに切り替わった瞬間だった。


 * * *


 それからしばらく、俺たちはすっかりセラ姐のペースに飲まされ、食べて笑って、豪快な飲み会は幕を閉じた。


 帰り道、夜風にあたりながら俺はポツリと言った。


「セラーナさん、すごかったな……」


「ギャップ……ですわ……!」


 ベルは頬を赤らめ、ジュルリと涎をたらした。なんで?


「豪快、だった」


 ラヴィは短くまとめた。うん、それが正解。


 それから数日後、俺たちはいつものようにギルドへ行った。


 そこには、冷静沈着、テキパキと業務をこなすいつものお姉さんの姿があった。事務的に会話を進め、必要事項だけを淡々と告げる。あの日の豪快な飲み会が幻だったかのように。


 ――でも。


 最後に、ほんの一瞬だけ、彼女は口元に柔らかい笑みを浮かべてくれた。

 思わず二度見すると、そこにはいつものクールなお姉さんが、いつも通り仕事をしていた。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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