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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
2章

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40話 とろけるチーズと魔鍛冶屋の魔法

 広場での試し斬りとやらに楽勝で勝利した俺たち(ラヴィ)は、早速昼飯を食べることにした。

 さっきまで揉めていた鍛冶屋のオヤジが、まさかの店をオススメしてきた。しかも「炉焼き」なる謎の料理をだ。


 こういうの、この町の職人たちにとっては日常茶飯事なのか……血気盛んすぎるて。『あそこの炉焼きは絶品だぞ!オレが保証する!』とか言ってたけど、おいおい、鍛冶屋が言うんだから絶対熱いじゃん。文字通り。


 ラヴィと一緒に教えられた場所へ向かうと、そこは……店というより、鍛冶場の延長線みたいな空間だった。

 片隅に簡易キッチン、そして中央には鎮座する特製の炉。鉄枠に煉瓦を積み上げた姿は、まるで「武器を焼くか料理を焼くか迷ってる」ような存在感だ。


 席は外。木製のテーブルとベンチが並び、客は自由に炉の前をうろついては焼き上がりを待つ。煙の香ばしさと溶けたチーズの匂いが、胃袋をこじ開けてくる。


 最初に運ばれてきたのは――薄い生地に黄金色のチーズをたっぷり乗せ、表面をカリカリに焼き上げた薄焼きチーズパン。もう、見たまんまピザだ。

 皿の上でチーズが糸を引き、光を反射してキラキラしている。


「ほあ……」


 ラヴィがチーズパンをつまみ上げると、チーズがびよーんと延びた。その瞬間、銀の耳がぴくぴくっと動く。……やめろ、かわいすぎる。


「ほら、食ってみなよ。焼きたてだから、ヤケド注意な?」

「んあ……あつっ……。でも、美味しい」


 おお、耳も尻尾もぶんぶん動いて、完全に「美味しいモード」だ。見てるとこっちまで嬉しくなる。

 続いて出てきたのは鶏の香草炉焼き。パリッと弾けた皮から肉汁がじゅわっと溢れ、ローズマリーとタイムの香りが鼻をくすぐる。ナイフを入れれば、湯気がもくもくと立ち上り、食欲の理性を破壊してくる。

 ――うわ、これ絶対ビール欲しくなるやつだ。


 二人で頬張りながら、俺はふと尋ねた。


「なあ、ラヴィの故郷って、こんな感じの料理あった?」


 少し考えてから、ラヴィは短く答える。

「似たのはあった。でも、炉はこんな形じゃない。それに、チーズもない」


 そこから、ぽつぽつと故郷の話をしてくれた。

 雪深い土地、焚き火の回りで皆が集まり、焼きたてのパンや肉を分け合う夜。母親が作ってくれる濃厚なシチューの匂い――


 それから一年に一度、家族全員が集まって三日をかけて大きな宴をするんだと、楽しそうに語ってくれた。正直、こんなに話してくれるのは意外だった。……こんなに楽しそうに喋る子なんだな。

 こうして食事を終えた俺たちは、満足した腹を抱えながら鍛冶屋へ戻る。


「おう! 待ってたぞ!」


 オヤジは鼻息荒く、作業台の下から何かを取り出した。

 ――狼をかたどったような耳あて付きの兜だ。流線型のシルエットが美しく、目元を程よく隠す。革ベルトでサイズ調整もでき、着脱も楽そうだ。


「……すごい」

 ラヴィが小さく呟く。オヤジは誇らしげに腕を組んだ。


「見ろ、この仕上がり! 動きも邪魔せんし、耳あては特殊仕様だ。音もよく聞こえるはずだ!」


 ラヴィが早速着けてみると、銀の耳と一体化し、まるで生まれつきそうだったかのように似合う。


「……これ、すごい。動きやすい、耳も、いい」


 くるくる回って着け心地を確かめる様は、新しいおもちゃをもらった子犬そのものだった。


「また、なんかあったら持ってきたらいい!次は転ばねぇと思うけどな!ガハハハ!」


 オヤジは大きく笑って、ヒラヒラと手を振った。

 礼を言って鍛冶屋を後にし、宿に戻ると――


「まあっ! 見違えたわねラヴィ! とってもカッコよくてきゃわいいわ!」

 

 ベルが入口で待ち構えていた。テンションは相変わらず天井知らずだ。


 そして、胸を張ってドヤ顔。

「ワタクシからもご報告がありましてよ?」


 ……あれ?この顔、なんかろくでもない報告が来そうだぞ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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