3話 発見、第一異世界人
「らんらら~ん♪ 風にそよげ、俺の棒~♪」
ネズミとの死闘(?)を終えた俺は、上機嫌で草原を歩く。手に握っているのは、さっき拾った『丁度良い棒』。ステータスによると「子どもが拾いたくなる丁度良さ」とのことだった。つまり、俺の童心は今、フルスロットルというわけだ。
……バカにすんなよ?
攻撃力ゼロの俺にとって、棒があるかないかで生存率が違うんだからな!
「ふっ、魔王の軍勢よ……この棒が目に入らぬか……!」
などと、口上をぶつぶつ言いながら振り回していたそのとき。 視界の端、岩陰で何かが動いた。
「ん?」
俺は鼻歌をやめ、そっと足を止める。 草むらの向こう、でかい岩の影に、人影が二つ。……いや、よく見ると三つだ。一人は座り込んでいる。
(おお……これは……)
見た瞬間わかる、やばそうな奴らである。
背中の丸いチビと、木の根っこみたいなものをくわえた無精ヒゲの大男。まるで絵に描いたような悪党面で、悪人ビジュアルだけでグランプリでも狙えそうだ。
――で、彼らの前にいる少女。
腰まで伸びた金髪ツインテール、紺色のドレス風の服、小さな革靴。一見して、「あーこれはお金持ちの箱入り娘だな!」って感じだった。
よ、ようやくイベント発生だ!俺はこそ~り近づいて聞き耳をたてまくる。
「こいつを王都に連れていきゃ、きっと身代金が取れるぜ!」
「うっひゃあ!間違いねぇ、貴族の娘だ!このドレスも絶対高級品だろ……なあ、ちょっと触っていいか?」
うわ、もうこいつら最悪だ。
……だが俺は違和感に気づいた。というかもう、すぐに気づいた。
「……おい兄貴、なんか、この服……継ぎはぎだらけじゃね?」
「は?」
兄貴と呼ばれたほうの野党が、まじまじと少女を見下ろす。俺も目を細めて凝視。
――袖、繕ってある。
――スカート、布の色がちょっと違うところがある。
――足元……左右違くないか?
「……こいつ、本当に貴族か?」
「……それに、なんかちょっと、臭い……?」
「なっ……!」
ざわつくノンデリズッコケ兄弟と金髪ツインテール。
いやもう、さらった時点で気づけよ!
「く、臭くないですわ! それに、わ、私のこの格好は……そう、カモフラージュですのよ!敵を欺くにはまず味方から!さあ、今すぐ王都に連絡を!」
「いやいやいやいやいや!騙されるかバカ!!」
全員、総ツッコミ。俺も内心ツッコんだ。味方からって、どこにその味方がいるんだよ。
……なんだろう、状況だけ見ればシリアスなはずなのに、この場の空気は完全にコントだった。
正直、助ける必要があるのか?と思わなくもないが、大の男二人に囲まれてる女の子を放っておけないよな。
幸い、俺には頼りになる相"棒"と無敵(仮)の麻痺スキルがある。タイマンまで持ち込めれば多分勝機はある……!
(……よし、今ならイケる)
俺はそっと右手を伸ばし、兄貴と呼ばれた髭面のでかい男に照準を合わせる。
「【パライズ】、発動――!」
ちゃちい稲妻エフェクトがほとばしる――!
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