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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
2章

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37話 ラヴィのヘルム改造計画

 ミーちゃん騒動の翌朝。

 俺とラヴィは、たんぽぽ亭の食堂で焼きたてのパンとベーコンを前に向かい合っていた。

 昨日の猫ダッシュ劇を経て、俺には一つの確信がある。


「なあラヴィ。兜、見に行くぞ」

「……なぜ?」

「なぜ?じゃねぇよ! 走ってる途中でこっち向く頭装備なんて、俺、初めて見たぞ」


 ラヴィは黙ってパンにバターを塗り続ける。無表情だが、その手つきはやけに丁寧だ。


「……むぅ」

「むぅ、じゃねぇ! あれで柱に激突したんだろ!」


 パンをちぎりつつ、思わず身を乗り出して詰め寄ると、ラヴィはようやく顔を上げた。


「……どうすれば」

「鍛冶屋に行く。頭に合うやつを作るか、手直ししてもらうかだ」

「……任せる」


 そうして話は決まった。ミレナさんによれば、本格的な装備については、鍛冶職人に頼んだほうが良いとのことだった。鍛冶場や工房は街の西側、職人街に集中しているらしく、ベルも誘おうとしたが、「今日は大切な用事がありますの!」とだけ言い残して、出かけてしまった。

……まぁ、ベルの「大切な用事」なんて新作料理の屋台巡りとかだろうし、深くは考えないことにしよう。



 * * *



 職人街は、街の他のどこより音が多かった。石造りの建物がぎっしり並び、鍛冶の槌音が絶え間なく響く。


 やっぱり、コレだよコレ!

 ゲームと言えば装備品、装備品といえば鍛冶屋!

 引きこもってた頃、足しげく通った店が懐かしいぜ……まあ、いらないものを売り付けてただけなんなけど。


 カン、カン、カン――。

 赤く揺れる炉の光が軒先に漏れ、鉄の匂いが鼻を刺す。店先には胸当てや篭手、兜が整然と並び、磨き上げられた金属が陽の光を反射している。その質と量は、商業通りの比じゃない。


「賑やか、だな」

 ラヴィは耳をピクピクさせながら、辺りを気にしている。


「だな。じゃ、まずは防具の店を当たってみるか」


 歩きながら幾つかの店を覗く。どの店も職人の矜持がにじむ品揃えで、見て回るだけでも目が潤う。

 やがて、ひときわ立派な看板を掲げた鍛冶屋が目に入った。店先には立派な兜や鎧が並び、品格がある。


 俺が店主らしき大柄な男に声をかけると、男はちらりとラヴィの防具を見て、


「サイズ直し? できるぜ」

 と即答した。仕事の早い男だ。


 俺は昨日の一部始終を説明する。猫を追って走って、防具がぐるんと回転して柱に激突――と。

 いや、改めてなんだこの話は。

 男は話の最中に腹を抱えて笑いだした。


「ガッハッハッ! そりゃ直さにゃ危ないわ!」

「笑いごとじゃ、ない」


 ラヴィがむすっとすながらヘルムを脱ぐ。男は笑いを引っ込めると、巻き尺を取り出し手早く採寸を始めた。

 職人の手は慣れている。頭に巻き尺が回ると、すぐにメモが取られる。


「料金は千五百ゴルド、二、三時間で直せる。工房に持って帰って調整すりゃ、ぴったりにできるぜ」


「助かる」

 ラヴィは小さく頷いた。ほっとした顔を見せると、こっちまで気分が軽くなる。


「もし、今の形にこだわらないってんなら、お前さんに会うような形に調整できるぜ」


「お願い、します」


「よし、とびっきりのを作ってやるからな!」


 ところが店主はふと、ラヴィの腰に差された剣に視線を移し、眉をひそめた。


「ところで嬢ちゃん、その剣……ずいぶん酷ぇな」


「……そう、か?」


「刃こぼれが酷いし、バランスも悪い。柄もガタついてる。多分、安物を買わされたか、古い修理品だ。武器も新調した方がいい」


 俺とラヴィは顔を見合わせる。防具が直る半日の間に、武器も見繕う時間は十分ある。ならばついでに良い物を探そうじゃないか。


「じゃあ、できるまで武器を見て回ろうか」



 * * *



 職人街の奥へ入ると、賑わいは徐々に薄れ、通りは細く、看板も煤けてくる。

 煌びやかな店構えは少なくなり、かわりに木製の小さな扉と鉄の匂いが強くなる。


 その中に、なんとなく気になる小さな鍛冶屋があった。表に並べている品は少なく、どこか控えめな雰囲気だ。俺たちは覗き込む。


 ドアを押すと、かすかな金属音と炉の熱気が押し寄せた。奥から現れたのは――

 もぐらのように逞しい腕をした、オレンジ色の短髪の若い女性の獣人だった。


 鉢巻きをきっちり締め、とがった耳が動く。作業着は煤で黒く染まり、腰にはずっしりとしたハンマーが下がっている。


「……いらっしゃい」


 低めで落ち着いた声。手を見ると、筋が隆起し、何年も鍛冶仕事をしてきたことがすぐにわかる。

 彼女の顔には少し泥と煤の跡がついているが、目は鋭く、しかしどこか柔らかさがある。


 年季の入った店の雰囲気にぴったり――というか、その腕一本で十分説得力がある。「見て回るだけでいいか?」と俺が訊くと、彼女はうなずきながら奥へ案内してくれた。


 店内には大小さまざまな工具、途中で止まった製作物、そして壁には昔の武具の断片が飾られている。静かな仕事場だが、空気は確かな熱を帯びていた。


 なんとなく面白くなってきた。メイン通りから少し離れた、いわば"隠れ鍛冶屋"。

 この店でどんな武器や出会いが待っているのか――期待値爆上がりだ……!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

感想、ブクマ等いただけると励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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