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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
序章

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2話 まー君見てるか?俺は今棒を振っている

 スライムはぶるぶる震えて、逃げた。俺はひとり残された。この果てしない草原に。


「……ちくしょう、震え逃げかよ……」


 広がる草原。揺れる草。吹き抜ける風。どこからか聞こえる鳥の声。でも俺の心には、風より冷たい現実が吹き抜けていた。


「ま、まぁいい……まだ始まったばっかりだしな。こっから、こっからよ……」

 俺は前を向く。ぐっと拳を握る。


 ──そして、三十分後。


「……いない。敵、いない。スライム一匹以外、なんもいない……!」

 誰かが言っていた。「異世界転生したら、だいたい最初は草原か森」って!その通りじゃねぇか!!その通りすぎて泣ける!ご都合主義でいいんだよ……!


 ぶつくさと文句を垂れながら、あてもなくてくてく歩いていたら──視界の端に、ちょっとした木立が見えた。

「ん?」


 その根元。何かが、光っていた――ように見えた。

「……おお?棒?」


 そこには、まさしく“いい感じ”の木の枝が落ちていた。重すぎず、軽すぎず、振り回しやすい長さと手に持ちやすいフォルム。これよこれ。

 反射的に拾い上げたそのとき──

 目の前に、ぼんやりと文字が浮かび上がった。


 〔丁度良い棒〕

 子どもが見つけたら、ついつい拾いたくなる丁度良さ。すぐ壊れる。


「……子どもで悪かったな!!」

 即ツッコミ。

 いや、こちとら二十だぞ!? ハ・タ・チ!だって仕方ないじゃん!?俺ってばな~んにも持ってないんだし!?いちいち嫌味なコメントつけんなっ!

 むくれながらも、俺は棒を一振り。ふん、意外と悪くないぞ。剣道の素振りっぽく振れば、それなりにサマになる。剣道やったことないけど。


「よし。これでちょっとはマシだな……さぁ、次の敵はどこだぁ!」

 その直後だった。

 ──ガサッ。

 草むらの奥で、何かが動いた。

 そして、姿を現す。ゴワゴワした茶色の毛並み、口から飛び出た尖った歯、小さな目。


「……ネズミ、でかっ!」

 子犬サイズの巨大ネズミだ。リアルなら絶対に目を合わせたくないタイプ。だが、俺は今、異世界転生者!


「こっそり近づいて……」

 巨大ネズミまでの距離、数メートル。俺はひっそり叫ぶ。


「【パライズ】ッ!」

 スキルが発動し、空気がビィィンと鳴る。さあ、ぶるぶる震えるがいい!

 ──だが。


「……あ、ああああれれれ!れ?」

 ……ぶるぶる震えてるの、俺じゃね?

 指先がピリピリ。膝がガクガク。目が勝手に瞬きを始めて、舌が口の中でぐねぐね踊ってる。

 握りしめたままの木の棒が、みっともなくふにゃふにゃと揺れる。


 ――ああ、昔、鉛筆を揺らして「ほら、見てみ!ほら、曲がってるよ!」とかやってたのを思い出すなぁ。あ、それ以来疎遠になったまー君のこと思い出しちゃった。


「おわわぁっ!? な、なななになににに!? なにこれ、にににっ……!」

 ガクガク震えながら、スキル説明の隅っこに小さく書かれていた注意文を思い出す。


【スキル:パライズ Lv1】

 効果:対象を最大3秒間行動不能にします。

 MP消費:10

 ※使用しすぎると自分も痺れます。


「使用"しすぎて"ねえよ! まだ三回目だっつの!!」

 麻痺が解け、叫びながら転げまわる俺を横目に、巨大ネズミは鼻をひくつかせてじっと見つめる。


「あ、お前いま"こいつアホだな"みたいな顔しただろ! 分かるぞ、まー君も最後そんな顔をして、おい待て――」


 ネズミは、あっさりと立ち去っていった。

 異世界転生ライフ、早くもガタガタである。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

感想、ブクマ等いただけたら励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
三回目で自分も痺れるとは……。 でも無制限に使えたら強すぎるスキルなので、 こういう風に制限をつけるのも仕方ないですね。
※使用しすぎると自分も痺れます。 ここできましたか。3回とは、意外と少なかったですね。 面白くてどんどん読み進めてしまいますね^^ ★評価も失礼します。応援しております
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