26話 相棒誕生、スタンブレイカー!
しばらく、伸びた棒に気を取られていた俺たちだが、最初にベルが口を開いた。
「マヒルさん、その棒、何か特別な力を感じますわ」
ベルが真剣な顔で言うと、ラヴィもじっと俺の持つ棒を見つめて、「うん……ただの棒、じゃない」と言った。そうか……やっぱり俺だけの気のせいじゃなかったんだな。
「だ、だよな!何か俺も分かる気がするんだよ!ちょっと店の人に――」
俺が振り返った瞬間――
「あれ?」
店主の姿はもうどこにもなかった。まるで霧のように消えやがった。
「幻……じゃ、ないよな?」
俺はじっと棒を見つめた。
その時、ラヴィがぽつりと言った。
「……その棒、マヒル殿に会うため、きたのかもしれない」
「俺に会うため?」思わず聞き返す。
「そう。あの露店、拙者たちは何も感じなかった。しかし、マヒル殿は、呼ばれたのだ」
なんだかファンタジーの教科書に載ってそうなセリフだな……いや、これが運命ってやつか?
「俺が、こいつに……」
「……そういう導き、運命、存在する。拙者と、本のように」
……いや、それとこれとは……と思いかけたが、いや、同じことだよな、多分。
ベルがにやりと笑った。
「特別な魔道具かもしれないですし、とりあえず魔力を込めてみればどうですの?」
「お、おう、やってみるか!」
俺はスキルを使う要領で棒に力を込める。
すると、棒全体にボヤッと古代文字のようなものが青白く浮かび上がり、バチバチッと電気を帯びた!
「こ、これは……!分かる、分かるぞ!俺と運命を共にするべく、互いに惹かれあったんだ……!」
俺は興奮しながら棒を高く掲げて、叫んだ。
「命名しよう。お前の名は、相棒Ⅲもとい、〔スタンブレイカー〕だ!!!」
ベルもラヴィも目を丸くして見ている。
俺の脳内では、スタンブレイカーの誕生を祝して稲妻が駆け巡った……!
やっぱ俺って天才だわ、間違いない。
――新たな相棒と共に、俺の異世界無双伝説、ここに幕を開けたのだ。……多分。
〔スタンブレイカー〕
ユニーク武器。通常攻撃に蓄積型の麻痺属性を付与する。攻撃する程、衝撃を内部に溜め込む。
『スキル【超電撃滅】を獲得』
【スキル:超電撃滅】
効果:溜め込んだ衝撃を一気に解き放つ。麻痺状態の対象に物理属性の絶大なダメージを与える。
MP消費:150
* * *
翌日、俺たちはスタンブレイカーの実力を試すべく、新たなクエストを受けた。
え、ベルの強化?そんなもん後だ後!
ーーー
【討伐クエスト】
依頼内容:ワイルドホーン二体の討伐(Eランク推奨)
目的地:アルクーン市外・外壁南側の草原
報酬:千ゴルド
ーーー
今回のターゲットは、ラヴィと初めて出会ったあのワイルドホーン二体だ。俺の真の力を見せつけるには、丁度良い相手だ。
「よし、ここが目撃情報のあった南の草原だな」
アルクーンの街から南に三十分程歩き、目の前には広大な草原が広がった。
遠くの草むらがざわめく。
「いた!」俺は目を凝らす。角を突き出す巨大羊、ワイルドホーンだ。
俺は意を決し、カシャッ、とスタンブレイカーを展開した。
一瞬で手のひらサイズの棒から、頼りになるポール状へと変化する。
じりじりと距離を詰めていく。
相手も警戒してか、「ベエ、ベエ」と低い唸り声を上げる。
「ンベエェェェ!」
一際大きな声を上げ、いきなり突進してきた!
俺はすかさず【パライズ】を発動。相手の動きを麻痺させ、動きを止める。
「今のうちに、うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺はスタンブレイカーを振り下ろす。何度も何度も叩きつける。非情に見えるがこれこそが、俺が獲得した新スキルの真価を発揮する方法なのだ。
「……そろそろか!?」
俺は大きく肩で息をしながらも、スタンブレイカーを高く掲げ、叫んだ。
「唸れ相棒!我らが敵に永久の時を!【超電滅撃】!!!」
ゴロゴロゴロッ――!
スタンブレイカーから青白い光が放たれ、雷鳴が轟く。
振り下ろしたスタンブレイカーが巨大羊に直撃する。瞬間、眩い光を放ち、落雷のごとく爆音が晴れ渡る草原に響いた。
バガアァァンッ!!!
ワイルドホーンはその衝撃に吹っ飛ばされ、数メートル先の草むらに倒れ込む。
「いぃぃぃやったぜ、相棒!!!」
俺は強く拳を握りしめた。
草むらの向こうからは、ワイルドホーンの別の個体が気付いて猛然と駆け寄ってくる。
「ま、マヒルさん、すごいですわ!一撃であんな巨大羊を……!」
「……すごい。拙者でも、あそこまでは飛ばせない」
ベルとラヴィは口々に褒め称える。ふっ、これで俺の新たな力が証明された。
俺は二人に向かって高らかに声をあげる。
「おーーーい!俺、もう魔力切れだ!あとは頼んだ!マジで!」
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