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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
2章

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23話 マヒルの未来と開ける麻痺道!

「す、すごいですわ二人とも! いま回復させますわね!」


 ようやく回復したベルが息を切らせながら、俺とラヴィの間にしゃがみ込む。

 その手から、淡い緑色の光がふわっと広がった。ベルの唯一の回復魔法【ヤヤヒール】だ。


 ……おお、なんか光ってる。けど――

 効果は名前の通り。うん、回復量ほぼゼロ。痛みもダルさも変わらねぇ。


 俺がまだ地面に転がってる横で、ラヴィがよろりと立ち上がる。

「ベル殿、すごい……! 身体が、動く……!」


 いやいや、麻痺が解けただけだろ……


「おーい、俺、筋肉痛で動けないっぽいんだけど」

 そう言うとベルが「しょうがないですわね」と、再び【ヤヤヒール】。


「いや、それ意味ないんだけど……」

 と口では言ったが、さっきより少しだけ痛みが和らいだ……気がする。気のせいかも。

 痛みに耐えながらよろよろと立ち上がり、「……とりあえず、そいつの魔結晶を回収して帰ろうぜ」と言った時――


「……待って」


 ラヴィの低い声に足を止めた。


「マヒル殿、あなたの戦いは……異質。 武士道精神は、ないのか?」


 いつになく、真剣なまなざし。

 ――ああ、そういうことか。さっき麻痺をかけた時に、ラヴィが一瞬戸惑った理由は。

 思い返せば、巨大羊との戦いの時も戸惑ってたな。


「……武器とか拳で戦うのが一番って言うんだろ? でも、理想だけじゃモンスターは倒せないし、金も稼げない」

「しかし、その戦いは……武士道精神に反する。 拙者の、信じる道に……」


 その口調からは、俺を咎めようとするというよりも、ラヴィ本人の動揺、信じる道に対する信念の揺らぎのようなものを感じる。

 張り詰めた空気に、ベルが心配そうに俺とラヴィに交互に目をやる。

 俺は少し肩をすくめ、軽く笑った。


「……そういうなら、これが俺の武士道精神だ。 いや、“麻痺道”精神だな」

「麻痺……道?」

 ラヴィが眉をひそめ、ベルはあきれ顔。


「俺は、自分の信念に従う。 ラヴィが自分の武士道を重んじるように、俺にも信じるもの、譲れない理想ってのがあるんだよ」


 ラヴィは黙ったまま、視線を落とす。


「誰に何を言われようとも、この道は曲げない。 それに、この力で自分や仲間の命を救えるかもしれないなら……使わない手はないだろ?」


 笑いかけると、ラヴィは小さく息を吐いた。

 心のもやもやを吐き出すように。


「……そうか、すまない。 拙者は、マヒル殿の道、尊重する」

 そう言って、ペコッと頭を下げた。


「ふふっ」

 ベルが小さく笑う。


「さあ、はやくこんな危ない場所から帰りますわよ! もう、キノコなんて見たくありませんわ!」

 そう言って、ベルは俺の手を取った。


「ベル……」


「さっ、マヒルさん。素材回収お願いしますわね!」

 にっこり笑うベル。


「お前なぁ……」

 呆れながらも、俺は魔結晶の回収に向かった。


 * * *


 無事に素材回収を済ませた俺たちは、ギルドでクエスト報告を行っていた。


「はい、これが依頼のあったシビレキノコです」


 大量のシビレキノコが入った袋を受付カウンターにどんっと置く。

 中身を確認したクールなお姉さんの眉がわずかに上がる。


「確かにシビレキノコですね……でも、こんなにたくさん……?」

「あ、多いとだめだった?」

「いえ、そういうわけでは。では、その分の報酬を上乗せしておきますね」


 おお、やったぜ! 夢中で採ってたら二十個くらいになってたからなあ。

 無駄にならないどころか、報酬上乗せはありがたい。


「あと、これもお願いしたいんですけど……」


 それから、ジャイアントマッシュの魔結晶と、やつの体についていた小さなドギツイ色のキノコを差し出す。


「……! これは、ジャイアントマッシュの……そしてこれは……えっ!?」


 お姉さんの表情が一変する。

 まじまじと、舐めるようにキノコを見つめる。


「これは、無毒化された〔マグリダケ〕……たくさんの毒素を放出させないと、この状態にならないのですが……」


 ああ、だから採る時にぷしゅぷしゅ粉が出てたのか。

 残念、俺に麻痺は効かないのだよ。


「ああ……俺、麻痺が効かないみたいで、なんか採れました」

 そう言うと、お姉さんはじっと俺を見つめる。


「この毒は、耐性を持っていてもかなり危険です。耐性がない者が吸えば、筋肉が硬直し、最悪心臓が止まります。 それに、キノコによって毒の種類は変わります」


 背筋に冷たいものが走った。俺、そんな危険物の中で作業してたの……?

 仮に、出てきた毒が麻痺じゃなかったら……?俺、もしかしてあの森の養分になってたかも……?


「……それに、《ジャイアントマッシュ》はDランク相当のモンスターです。あなた方で倒せるとは……」


 怪訝な顔で見つめられる。ああ、そんなに冷たい目で凝視しないで。

 ただでさえこっちは肝が冷えてるんだから。


「いやぁ……ギリギリの戦いでしたけど、最終的には俺が麻痺させて、その隙にラヴィが一撃を、って感じで」


 俺がやつとの戦いを端的に伝えると、お姉さんは「はぁ」とため息をついて頭を抱える。


「……《ジャイアントマッシュ》は麻痺への完全耐性持ち。 すなわち、麻痺は効きません。 あなたは一体……?」


 えぇ……俺って一体……?

 どうやら俺の麻痺スキルは、耐性持ちでも有無を言わさず麻痺らせるという、相当わけのわからない代物らしい。ふふ、やはり麻痺こそ至高。

 俺は自分のスキルに異質さを感じながらも、麻痺の可能性を一人見出だしていた。 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

感想、ブクマ等いただけると励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
まぁ何にでも麻痺が効くのはテンプレですよね
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