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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
2章

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21話 痺れるような収穫祭

「だからっ!何度も言ってますけどっ! こんな危険な依頼なら、普通はもっと準備を──」

「はいはーい、じゃあ通りますねー」


 不用意にキノコを触って麻痺ったベルは、ぷりぷりと文句を垂れ、怒りの矛先を俺に向ける。

 準備も何も、完っ全にベルの不注意だもんな。

 そんなベルの声を背に、俺はのそのそと“それ”に近づいた。


 丸々と太ったカサ、オレンジ斑点に、ぞわりとした質感の茎。大きさは俺の拳ほどだ。明らかに毒々しい存在感。地面にぽつんと生えたそれは、紛れもないシビレキノコだった。


「ま、待ってくださましっ! 素手で触ったら──」


 ベルが何か言いかけたが、俺はためらうことなく、むんずと掴んだ。


 ──ぼふっ。

 黄色い粉が舞う。


「……あ」

 ラヴィが短く声を漏らした。


 けれど俺には、妙な確信があった。

 これは大丈夫だ。体が拒絶しない。むしろちょっと懐かしい。昔、部屋で使ってた虫除けスプレーの匂いに似ている。たぶん、無害。


「ほれ、キノコげっと〜〜!」


 俺の予想通り、粉を吸っても麻痺ることはなかった。

 これは恐らく、麻痺耐性スキルのおかげだろうが、まさかこんな形で役に立つとは。

 ぴっぴっと手を払って痺れ粉を落とし、二人にニカッと笑いかけた。


「く、悔しいですのっ……!」

「すごい……」


 ベルが地団駄を踏み、ラヴィは感心したように言った。


「ふ、ふん! あなたがみっともなく痺れるところ、見たかったですわ! それはもう、きっと見ものでしたのに!」

 と、ベルが口元を隠して笑った。


「お前みたいにか?」

 ニヤッと返すと、ベルの顔が真っ赤に染まった。


「だ、誰がそんな──っ!」


 そのやり取りの最中、ラヴィがすっと一歩前に出た。


「……拙者も」


「へ?」


 俺が何を言う間もなく、ラヴィが手を伸ばす。

 ──ぼふっ。

 再び黄色い粉が舞い、直後、がくんとラヴィの身体が崩れる。


 ──ドサッ。

 無言で倒れた彼女は、ピクリとも動かない。その代わり、無駄にでかいヘルムだけがガタガタと震えていた。


「ら、ラヴィ!? なにやってんだよ!」


 俺は慌てて駆け寄り、腕を引いて起こすとラヴィはぽつりと呟いた。


「拙者も……採ってみたかった……」


「無理すんなって。俺は麻痺耐性あるから効かないだけで、普通はアウトなんだって。 さっきもぶるぶる震えてるおかしな人がいただろ?」


「……ちょっと、誰のことを言ってるんですの?」


 ベルは目を細めて俺を見る。あなたしかいないじゃないの。

 全く、この二人は俺がいないとダメだな──なんて思いながら、キノコをむんずむんずと採っていく。


 粉が舞う。黄色い霧のようだ。

 粉まみれの俺を、ラヴィが感嘆の眼差しで見つめる。

 邪魔だったのか、あのヘルムはいつの間にか脱いでいた。


「すごい……」


 その隣で、ベルが呆れたように言う。


「あれはね、ただの麻痺オタクなんですの」


 うるせぇ、シビレダケ投げんぞ。

 心の中でツッコミながら、大量のキノコを確保し、無事採取完了。


「よし! クエスト、コンプリート!」

 両手を広げて満面の笑み。全身粉まみれのまま、二人に近付いていく。


「うわっ、来ないでくださいまし!」

「……っ」


 ベルが手を振ってしっしと追い払い、ラヴィが無言で後ずさる。


「えっ、ちょっと冷たくね?」

 キノコの袋をぶら下げたまま困惑していると──


 ──ドスンッ!!

 地面が揺れた。


「っ……!」


 二人の表情が一変し、俺たちは即座に身構える。

 木々の隙間から影が覗く。茂みがガサガサと揺れ──


 ──ズドンッ!!

 現れたのは、キノコ。


 赤や紫、黄や橙などのドギツイ色の巨大な傘。それに手足のような茎を持つ──異様に大きな、歩くキノコだった。その大きさは俺たちを軽く超え、そそり立っている。 


「……立派!!」

 思わず叫ぶ。


「きゃ、キャァァーッ!」


 ベルが腰を抜かし、後ずさる。


「こいつは……! 《ジャイアント・マッシュ》!!」


 ラヴィの額に、一筋の汗が流れ落ちる。

 ふふっ、近場の森で簡単なクエスト中に、予想外の小ボス登場って感じか?

 いいじゃん。これは、シビれる戦いになりそうだぜ……!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

感想、ブクマ等いただけると励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
お世話になっております。X読みます企画、ありがとうございます。 いったんここまで拝読させていただきました。 麻痺! 麻痺楽しいですね。 某モンスターゲットゲームでも、某モンスターハントゲームでも、補…
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