19話 三人目の仲間、ラヴィ
街についた俺たちは、ササッとクエスト報告を済ませた。
報酬は、千ゴルドぽっきり。
いやいや、スライム五体にワイルドホーンとかいう巨大羊一体だぜ?安すぎない?お得セットにも程がある。ギルドの人曰く「ワイルドホーンは角が売れないと安いんですよー」とか言ってたけど、あんなヤバいの倒して報酬が五百ゴルドって……
なんとも、現実は厳しいな。
項垂れる俺を不思議そうに見つめるラヴィは、再びフルプレートの重装備に身を包み、歩くたびにガッポガッポと音を鳴らしていた。
せっかく外した鎧だったが、どうやら体を洗うまでは隠れていたいらしい。乙女か。
クエスト報告を終えてたんぽぽ亭に戻り、とりあえずミレナさんに事情を話す。やはりというかなんというか、ミレナさんは快く部屋を貸してくれた。色々と察してくれたのか、「着替えを持っていくから、シャワーを浴びてさっぱりしてきな」とのことだ。まじで女神。
ラヴィは「……お願い、します。 感謝です。……拙者、綺麗になってきます」と言ってミレナさんに深々と頭を下げ、急いでシャワーを浴びに行った。
うん、拙者?
異世界にまで来て、日本の古風な一人称を聞くことになるとはな。
鎧の件しかり、一人称しかり、色々とツッコミ所のありそうなお嬢さんだ。ベルは「ワタクシ、正直そういうギャップも好きですわぁ……たまりませんわぁ……」とか変態発言してた。やめて差し上げろ。
そしてたんぽぽ亭の食堂で待つこと数十分――
湯上がりラヴィ、登場。
「……っっ!?」
俺とベル、ミレナさんは三人そろって息を飲んだ。
サラッサラの銀髪がふわりと揺れて、雪みたいに白い肌は見るからにスベッスベ。
大きな耳をぷるぷる揺らし、絹のような尻尾をふりふり揺らしながら、俺たちを不思議そうに見つめてきた。
「……どうか、しましたか?」
俺たちの熱い視線に対し、本人はきょとんとしてる。
「いやぁぁぁん! ラヴィちゃん、とってもキレイですわ! 好きっ!」
ベル、超絶食いつき。限界突破。「やーん、お肌ぷるぷる……! 匂いもいいし、ああああこれはずるいですわぁー!」とか言いながら、ぐいぐい迫っていく。
ラヴィはどういう気持ちでいるのか、無表情のままそれを受け入れていた。
一発くらいしばいてもいいのにな。
ミレナさんも、「ほう……これは、たまげたね」と目を丸くしていた。
「シャワー、いただきました。 ありがとう、ございます」
ラヴィは深々と頭を下げた。
「いいんだよ、そんなにかしこまらなくて。 それよりラヴィちゃん、あんたも冒険者を目指してこの街に来たみたいだね。 もし、あんたさえよければ、この二人みたいに、少しは生活の面倒見てやれるけど……どうするかい?」
ミレナさんが優しく問いかける。
その言葉に、ラヴィは一瞬きょとんとしたあと――すっと背筋を伸ばして。
「……感謝……! よろしく、お願いしますっ!」
ラヴィはまたもや深々と頭を下げた。
まっすぐで、不器用で、真面目で。そんな人なんだなって思った。
その姿を見て、なんかちょっと、俺も背筋が伸びた気がした。
* * *
それから俺たちは、ラヴィの冒険者登録の為に再びギルドに舞い戻った。
そして一時間程でラヴィの冒険者登録、完了。
モンスター知識や戦術指南については文句なしだが、一般常識的な部分では相当危なかったらしい。クールな受付のお姉さんからは「ワイルドホーンの討伐実績がなかったら落ちてましたよ」と言われる程だ。危ねぇ。
ラヴィは遠い所からこの街に来たはいいものの、特に行く当てもやることも見つかっていないとのことなので、ひとまずパーティーを組んで共に行動することになった。
バランス的にも近接職はありがたいし、何より奇麗で可愛いもんな!可愛いは正義!
帰り際にお姉さんから「とりあえず三人共パーティーとして登録しましたけど……あなたたち、どんどんクセが強くなってますね」と、呆れ顔で言われた。
ははは、心外ですね。
俺なんて、どこにでもいる優秀で真面目な冒険者ですよ?
それにしても――
白銀の騎士、ラヴィーナ=シルヴァリオ。
新たな仲間は、ちょっと変わってて、やたら美しかった。
次の冒険が、またちょっとだけ楽しみになってきた。
いや、ちょっとだけってことはねぇな。
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