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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
5章

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159話 生誕、トカゲの子

 謎の巣を後にした俺たちは、待たせておいた馬を連れてラヴィの元へと戻った。

 着いた頃には、馬車いっぱいに魔結晶や鱗、爪に毒腺など、バジリスク系の素材が所狭しと積み込まれていた。


 さすがラヴィ、素早く丁寧な解体作業だが……俺たちの乗る場所はいったいどこですか……?

 俺たちに気が付くと、無表情のままパタパタと手を振った。


「む……お帰り。 こっちは、終わったよ」

「おう、お待たせラヴィ! にしても、すごいな。相変わらずの手際だぜ」

「えへへ……それほどでも」

「……てか、怪我は大丈夫なのか? こんなに動いちゃって」

「うん。ベル殿の魔法のおかげ、治ってきた」


 あっけらかんと言うラヴィだが、ベル唯一の回復魔法である【ヤヤヒール】にはそんな効果は、ない!

 せいぜい、病院で点滴を打つ程度の効果しかないと思うんだが……っていうことはつまり、ラヴィの体が単純にすごいってだけなのか……?


 もんもんと考える俺をよそに、当の本人はいたって元気そうだ。

 ラヴィはいかにも興味津々といった感じで、俺が重そうに抱えている黒い塊と、上半身が隠れる程の脱け殻を持ったベルに交互に目を向ける。


「……ところで、二人とも、何持ってる?」

「フフッ、さすがはラヴィさん、お目が高いですわ……! ここにありますは、《ロイヤル・バジリスク・ロード》の脱け殻ですわぁっ!」


 ベルは、両手に抱えきれない程の脱け殻を意気揚々とラヴィに見せつける。

 顔は隠れてるけど、多分ドヤってるんだろうなぁ……


 対するラヴィは、一瞬目を細めたあと「……バッチい」と小さく呟いた。


「えぇっ!? ち、違うんですのラヴィさん! これは、持ってるだけでお金がザクザク入ってくるという、伝説の品物なんですわ!!」

「いや、そこまでは言ってねえよ。 ただのお守りだお守り」

「えぇっ!? こ、こんなにたくさん集めたのに……」


 ベルのツインテールがしょぼんと垂れ、持っていた脱け殻をトサトサと落とした。

 ……いや、最初から俺はお守りだっつってたのに。


「まあ、そんなことよりラヴィ、これ見てくれよ!ほれ! すんごいぞ!」


 俺は大事に抱えていた黒い卵を見せた。

 瞬間、ラヴィの目はキラキラと輝く。


「そ、それは……もしかして、卵?」

「多分な! 巣の中で見つけたんだぜ、俺が」

「すごい……大きい……よく、見つけたね」

「うんうん、分かってくれるかラヴィよ」


 うっとりしながら卵を見つめるラヴィ。

 俺はベルに「ほらな?」と顔で示すと、彼女はベーッと舌を出してきた。子どもか。


「……それで、どうするの?」

「へ?」

「どうやって食べるの?」


 俺は無言で卵を抱え込み、数歩後ずさる。

 よく見るとラヴィは、よだれを垂らしているじゃあねえですか。


「おまっ……まさか、食べる気かよ、これを」

「……? 違うの?」


 心底残念そうな顔をするラヴィ。

 だめだ、こいつにまともな感性を期待した俺がバカだった。


「おーっほっほっほ! た、確かに、モンスターの卵は物によっては珍味とされますからねぇ! おーっほっほっほ!」

「ぐぬぬ……」


 勝ち誇ったようなベルの高笑いが、辺りに響く。

 ちくしょう、俺が万全なら麻痺の餌食にしてやるってのに……!


「……じゃあ、それどうするの?」

「え? どうするってラヴィ、そりゃあ……どうしようか……?」

「食べる?」

「それはちょっと待って! 大分待って!」


 ラヴィに聞かれるまであんまり考えてなかったけど、本当にこれ、どうしようか……?

 鑑定に出したら価値はつくのか?

 っていうか、そもそも本当に卵かどうかも分からんしな……


「……ひとまず、保留で! 街に帰ってからこれのことは考えよう!」

「……本当、行き当たりばったりですわね……」

「マヒル殿らしい」


 俺は華麗なリーダーシップを発揮して、まずは街に帰ることを提案。すぐさま帰り支度をすることになった。

 

 馬車の荷台にあった大量の素材の置き場に困ったが、ポッピンに貰った神アイテム、アイテム袋Mのおかげで全て解決。

 あれだけあった素材は、まるで魔法みたいにすいすいと袋の中に消えていった。


 ただ、例の卵(仮)だけは俺が大事に持っておくことにした。ラヴィの視線が気になったけど、抱えるのに丁度良いサイズ感で妙に落ち着くんだ、これが。 


「さあて、準備はよろしいかしら? 無事に帰るまでがクエスト……なるべく事故を起こさないようにかっ飛ばしますわよぉっ!!」


 ベルの不穏な宣言と共に馬車が動き出し、戦い続きのこの場所ともようやくお別れの時間。

 早くこの、泥だらけの服をどうにかしてえなぁ……

 

 * * *


 山頂を出発してから数時間が経った。

 日が傾き始め、心地よい馬車の揺れにまどろんでいると、ガタガタッ!という振動で目が覚めた。 

 

「んおっ……!?」

「どうかしたんですの?」


 ベルは御者席で華麗に手綱を捌きながら、俺をチラッと見る。


「ん……いや、ちょっと揺れてビックリしただけだよ」

「もう、夢でも見てたんじゃないですの? ずっと平坦な道ですわよ?」

「え、あれぇ……?」


 確かにベルの言うとおり、馬車はいつの間にか山を下り見慣れた街道を進んでいた。


「……悪ぃ、ちょっと寝ちゃってたみたいだ」

「そんなの、全然いいですわよ。 荷台にいてもやることはないでしょうから、休んでてくださいまし? マヒルさんが一番ダメージを負っているんですし」

「ベル……本当助かるわ」


 ベルは返事の代わりにフフンと鼻を鳴らした。

 ベルだって魔力をかなり消費してるはずなのに、全く頼もしいやつだよ。


「じゃあ、お言葉に甘えて――うおっ!?」

 不意に、ガタガタと揺れる。

 い、今のは確実に夢じゃない……よな?


「ん……マヒル殿、どうしたの?」

「おお、悪ぃ、起こしちまったか。 いや、何か揺れた気がしたんだけど……多分俺の気のせい、かな……?」


 ラヴィは眠たそうに目をこする。


「……! マヒル殿、それ」

「へ?」


 ラヴィに指を指されて、ようやく気付いた。

 俺が大事に大事に抱えていた卵に、いつの間にかヒビが入っているではないか……!


「ヒビ!? や、やべぇっ、どっかにぶつけちまったか!? これ――」

 

 慌てて卵を持ち上げた瞬間、不意にガタガタと動き出した。揺れの正体は、これか……!


「えっ!? 待って待って、動いてる、これ動いてるヨォ!?」

「落ち着いて、マヒル殿」

「な、何っ!? 後ろで何が起きているんですのぉ!?」

「落ち着いて、ベル殿」


 急遽路肩に馬車を止め、三人で卵を見守る。

 ガタガタ、ピキピキ音をたてる卵。見る見るうちに、ヒビが広がっていく。


「こ、これ、本当に卵だったんだな!! え、どうしよう、つまり、俺は何、お父さんになるってこと!?」

「マヒル殿、何言ってるの?」


 狼狽える俺に冷静なツッコミを入れるラヴィ。

 でも、これが落ち着いていられるか!?まさか、本当に卵で、こんなにすぐ産まれるとも思わんじゃん!?

 

 そうこうしているうちに、卵の殻がググっと浮き始めた。それはまさしく、この世界に新たな命が産まれる瞬間――俺たちはただ、固唾を飲んでそれの時を待った。


 ピキピキ、パキパキ――卵は激しく揺れる。

 そして遂に――


 パキョッという軽い音とともに、手の平サイズのトカゲが姿を表した!

 薄茶色の柔らかい肌はうっすらと膜に覆われ、つぶらな瞳で俺を見つめる。


「う、産まれたぁ……!!」

「キューイ!」


 黒トカゲは元気な産声を上げる。

 目と目で通じあう、俺たち――

 瞬間、俺は完全に母性に目覚めた。


「よろしく坊や、私がママよ」

「マヒル殿、ずっと何言ってるの?」


 マヒル、今日この時からお父さん――いや、お母さんになります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

感想、ブクマ等お気軽にいただけると励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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