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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
5章

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157話 対決、トカゲの王!③

 視界が霞む、体も痛ぇ。

 だけど俺は、ここで倒れる訳にはいかない――俺の後ろに控えるこいつらの為にも……!


「……おぉい、トカゲ野郎! 熱烈な視線、受け取ったぜ? きっちりお返ししてやるから……よぉく見とけよ、このやろう……!」


 膝はガクガク、息も荒い。

 それでも俺は、やつをジット睨み付けた。

 渾身の気迫を込めた視線をぶつける。


「だ、だめですわマヒルさん! このまま撤退しますのよ! 相手も追ってこないようですし、今のうちに――」

「ベル……反撃だ」

「なっ……!?」


 俺の肩を掴むベルを制して、一歩……また一歩とやつに向かって進む。


「……何か、考えがあるんですわね? 分かりましたわ。 でも、これ以上無茶したら引きずってでも撤退しますからね……!」

「……あぁ、そん時は頼むわ」


 俺の後ろでは小さな詠唱の声と、刀を構える音が聞こえる。

 全く、頼もしい仲間たちだよ本当。

 やっぱり俺ができるのは、こいつらに繋ぐことだ……!


「ギュグアッ……!」

 威嚇のつもりか苦し紛れか、俺を睨みながら《ロイヤル・バジリスク・ロード》が低く唸る。取り巻きたちもギャアギャア騒ぐ。


 だが、進む。牛歩の如く――!

 そして、ついにその時がきた。


「おいおい、そんなに俺に見とれてると――痺れるぜ?」 

「ギュ、ギュガッ――!?」


 次の瞬間、やつの体はバシィッと硬直し、小刻みに痙攣を始めた。


「「えっ!?」」


 俺の後ろで、ベルとラヴィが同時に叫ぶ。

 無理もない。なぜなら、俺はスキルを使うそぶりすら見せていない。

 ――にも関わらず《ロイヤル・バジリスク・ロード》は、突如として麻痺ってその場に崩れ落ちたのだから。


 取り巻きの《バジリスク》たちは、いきなり倒れた主に、訳も分からず狼狽えている様子だ。

 好機――!


「……フフッ、お前ら"お得意の技"を……受けた気分はどうだ……?」


 あの時――

 意識の狭間で習得した新スキル。


『スキル【這い寄る牙(サイレント・スネイク)】を獲得』

【スキル:這い寄る牙(サイレント・スネイク)

 効果:3秒間目が合った相手を5秒間麻痺状態にする。

 MP消費:20


 フフッ、睨まれたら睨み返せってか……?

 最高の意趣返しじゃねえか。

 やってやったぜこんちくしょう!!


「――そいじゃ、後は頼んだ……!」


 俺は最期にそう叫ぶと、バタンと仰向けに倒れ込んだ。

 ――と同時に飛び出したのはベルと、彼女が召喚したセバスチャン。そして、刀を越元で構え気迫を纏ったラヴィだ。


 うん、もう無理。立てない。

 マジでもう、後は頼んだぞ……二人とも……!


「やっておしまい、セバスチャン!!」

 ベルの号令と共に、首なし執事が猛進。

 混乱する《バジリスク》の間をすり抜け、黄金の右アッパーがやつに炸裂した……!


「ギュワッ!?」

 硬直したまま大きく頭を仰け反らす《ロイヤル・バジリスク・ロード》――その喉元、最初にラヴィの斬撃で負った傷から、鮮血を吹き出した。


「そこっ……!【羅刹(らせつ)】ッ!」

 驚異の踏み込みで距離を詰めるラヴィ。

 振り出した刀は、まるで吸い寄せられるようにぱっくりと開いた傷口へ向かい――


 ザンッ――!!


 一閃のもとに、全てを断ち切った。

 降りしきる雨粒が、まるでスローモーションのように感じる一時。

 

 直後、ゴロリと《ロイヤル・バジリスク・ロード》の巨大な頭が地面を転がる。

 グロい断面からは、激しい血飛沫が吹き出した。


「キッ……! キシャァッ……!?」

 

 残ってた《バジリスク》たちは、主が亡くなったかと思うとあっという間に四方へ散っていった。

 ……こっちとしちゃあ助かるが、随分と薄情なやつらだぜ。


 まあ、何はともあれ……俺たちの勝利だ……!

 超辛勝だけどな……!


「マヒルさん! 大丈夫ですか!?」

「マヒル殿!」


 二人が俺の元へ駆けてくる。

 その顔には、勝利の喜びというより、安堵と不安がごちゃ混ぜになったような表情が浮かんでいる。


「……ははっ、どういう顔、してんだよ。 俺たち、勝ったっていうのに……」

「だ、だってマヒルさん、ワタクシたちを庇ってあいつのスキル、【王蛇睨み】を受けたんですわよ!? それも、二回も…!!」


 ベルはもはや、心配とかいうより怒ってないか?

 目頭に涙を浮かべながら、顔を歪めている。

 ……っていうか、【王蛇睨み】っていうのね、あれ。

 できればもう、一生喰らいたくないわ。


「ご、ごめんって。 でも、あの時はあれが最善策だと思ったんだよ。 結果的に、お前たちに繋ぐことができたからな……」


「け、結果論過ぎますわ!? ワタクシたちを過信して、あなたに何かあったらどうするんですの!?」


「ベル殿の、言うとおり。 マヒル殿、死んじゃうかと、思った……」


「うぅっ、悪ぃって本当に……でも、過信じゃなくて、"信頼"、な。 お前たちならやってくれるって信じてたからな。 ベル、お前だって俺を信じてくれただろ?」


「それは、そうですけど……もうっ」


「あいたっ! あがっ!?」


 ベルに軽く頭をしばかれる。

 続いて、ラヴィも俺の頭をしばく――が、素で力が強いもんだから今度こそ意識が飛ぶかと思った。


「も、もう、無茶はなるべくしない!……多分! ひとまず、勝利を祝って……休憩しようぜぇ……?」

「それは……賛成ですわ」

「うん。 もう、へろへろ」


 そう言って二人は、俺を挟むようにして仰向けに倒れ込んだ。

 いつの間にか小雨になっていた雨が、ちょっと冷たく、そして優しく顔を撫でる。


 三人揃ってドロベッチャだ。

 帰るのも大変だし、洗濯するのはもっと大変だろうなぁ……


 そんな呑気なことを考えながら、俺はただ呆然と空を見上げていた。

 ――瞬間、空いっぱいに広がった灰色の雲が一斉に霧散した。


「……はっ?」

 

 あまりの衝撃に、俺は空を見上げたまま動けなくなった。

 視界いっぱいに広がるのは、不気味な程の青空と――それを遮るように空を覆う巨大な影。


「えっ――」


 それは、何かと比較することすら難しい程に巨大なドラゴンだった。

 怪しく光る銀色の角、太陽を照り返す純白の体毛。

 ただただ美しく、荘厳で――途方もない何かだった。


 一緒、チラリと目が合った気がしたが、そいつはあっという間に飛び去った。


 俺たちはしばらく口を開くことなく、快晴の青空をただただ見つめ続けていた。

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