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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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140話 いきなり・スモウ・バウト!

「ギャギャオッ!」

「ぐっ、むぅ……!」


 ラヴィと《ガッパンドン》はがっぷり四つの体勢のままぎりぎりと力を込め、激しい力比べを展開する……!明らかに体格差はあるのに、両者の力は拮抗している――!


「行けぇ! 押せ押せ!」

「ラヴィさーん! ファイトですわぁ!」 

「……! むぅっ……!」


 俺とベルの声援に応えるように、ググっと力を入れるラヴィ。

 一見すると細身の腕に、しなやかな筋肉の隆起が現れる。なんというかもう、美しさすら覚える。

 ラヴィはそのままジリジリと相手を押し始め――


「よぉし! いけるぞ!!」

「いや――あのままだと、危ないねぇ」

「ポッピンさん!?」


 下がっていてと言ったのに、いつの間にか俺たちの隣にあぐらをかいて観戦しているポッピン。

 その目は細く鋭く、まるで百戦錬磨の解説者のようだ。


「ポッピンさん、なんでここに!? それに、危ないってどういうことですか?」

「ふぅむ……ほれ、見てみなさい」


 俺は促されるままラヴィと河童の相撲対決に目をやるが、相変わらずジリジリと相手を押しているラヴィ。やっぱり、危ない要素なんてどこにも――

 次の瞬間、《ガッパンドン》はくの字に曲がっていた腕の力をガクンと抜き、一歩後退。全力で押していたラヴィは大きくバランスを崩した。


「「ああっ!?」」


 俺とベルは同時に声を出す。

 体勢を崩して大きく前のめりになったラヴィに襲い掛かるのは、強烈な張り手。

 

 バッチィィィッ――!!

 大きな手がラヴィの顔面を覆い、乾いた音が響く。

 まっすぐに伸びきった《ガッパンドン》の腕と、そのあまりの衝撃に体が宙に浮くラヴィ。

 

 決まり手は突き出し。

 俺とベルは、思わず目を伏せる。

 あれほど強烈な一撃だ……勝敗は決した――かに思われた。


「なにぃ!? あ、あれは……あの子は、まだ戦えるねぇ!」


 ポッピンが興奮した様子で叫ぶ。

 ハッと見ると、突き出したままの《ガッパンドン》の腕をラヴィは片手で掴んでいるではないか!

 ラヴィは顔を真っ赤にして、鼻血を出しながらも……その目にはギラギラと闘志が宿っているようだ……!


「ら、ラヴィ! 頑張れ……頑張れぇっ……!!」

「お嬢ちゃん、すごいぞぉ!」

「……あんのドぐされ野郎、ラヴィちゃんの顔に傷をつけやがったなぁ、おぉ……? ラヴィさーん! ファイトですわぁぁぁ!!」


 俺たちの声援にも、思わず熱が入る……!

 なんか今ヤンキーみたいなのが混じってた気もするけど。


「こっからが、勝負……【超獣化(ワイルド・ターキー)】……!」


 ラヴィの纏う空気が変わる――

 風も無く川面はうねり、ラヴィの純銀の頭髪は天を突く。

 金色のオーラを身にまとった、ラヴィの強化形態だ……!


「お、お嬢ちゃんが……金色の光をぉ……!? 幼く見えるのに、獣の力をここまで使えるとはねぇ……!」

 ポッピンが思わず吠えた。


「ハルヴァンさんの修行の賜物です」

「……! なぁるほど。それにしても、あの子は強いねぇ」

「もっちろんですわ! なんてったって、最高のアタッカーなんですもの! 強くて、かわいい……まさに最強ですわぁ!」


 ベルはまるで自分のことのように喜んでいる。

 まあ、その意見には俺も完全同意だけどな。


「グギュア……」

 そして、さすがの野生。《ガッパンドン》は警戒し、距離を取ろうとする――が、ラヴィに掴まれた手はギリギリと締め上げ、振りほどくこともままならないようだ。


「さっきの、技……どうやるの? こう?」

 ギリィッ――

 ラヴィはそう言うと、ガッシリと掴んだ《ガッパンドン》の腕を無理矢理引き寄せた。


「おぉ……お嬢ちゃん、全然違うねぇ。 でも、理にはかなってる、かなぁ?」

 ラヴィの天然っぷりに、困惑する解説者ことポッピン。

 過程はどうあれ、《ガッパンドン》は痛みに顔を歪めながら――バランスを崩した。


「できた……!」と満面の笑みを浮かべるラヴィ。

 いや、全然違うぞラヴィ。さっきのは本来相手の力を利用した技であって、お前のはただの馬鹿力……まあ、なんだっていいか。あんなに嬉しそうなんだし。


「じゃあ、さっきのお返し――」

 ラヴィはそう言うと、掴んでいた腕をパッと離した。

 そして、まるで弓を引き絞るように腕を構え――


「【押蹄(おて)】!」

 

 バヂィィンッ――!!

 空気が張り裂けるような音が川岸に響く。

 ラヴィの強烈……いや、激烈な突き出しによって《ガッパンドン》は大きくぶっ飛んだ!

 そして、川を挟んで向こう岸まで飛んでいき、撃沈。

 決まり手――大突き出しッ!!!


「ふんっ……拙者の、勝ちだね」


 ラヴィはそう言って鼻血を手でぬぐう。

 か、かっけぇ!……っていうか、なんかますます強くなってねぇか……?

 ベルは一目散に駆けていき、思いっきりハグをかましている。


 突如始まった大見物、名もなき川の相撲大会は彼女に白星がついた。

 河原にはポッピンの大きな拍手が鳴り響いていた。

 ――いや、よく考えたらこの時間、なんだったんだ? 

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