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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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137話 トロル、時々オーガー

「【パライズ】!【パライズ】!!【パライズ】ゥゥゥッ!!!」


 マヒル、怒りの三連【パライズ】発動。

 感覚で分かる……射程範囲外だってなぁ……!!


「……! 投石、くる!」

 ラヴィが短く叫ぶ。


「【サモン・セバスチャン】ッ!!」

 ――と同時に、ベルがセバスチャンを召喚!!

 首無し執事がズイっと出現。


 バシィッ――!!

 セバスチャンは飛んできた石を華麗にキャッチ。

 どうやって見てるんだろうか。

 そのままセバスチャンは大きく振りかぶって――


 ブォンッ――!!

 華麗な投球フォームから、豪速球を放った!


「アギィッ……!!」

 小さく、汚い悲鳴が聞こえた。

 好機……!


「攻めろぉぉぉ!!」

 俺の号令に続き、ベルとラヴィも一気に駆け出す。

 と言ってもラヴィは早すぎて、単身突入。


 ズバァッという小気味良い音が響き、その時点で俺は察していた。

 ようやく追い付いた頃には、案の定息絶えた《トロル》の姿があった。


 灰褐色のぬっぺりとした肌、歪んだ顔面、異様に伸びた両手。見るにおぞましいモンスターの代表格だ。

 こいつがブンブン危ねぇモンを投げてやがったのか……!この手が悪い……!


「カタキ、とったり……!」

 ラヴィは嬉しそうに、フンスと刀を掲げた。

 うん、相変わらずの強さ。頼もしい。


「でも、まだ終わりじゃない」

「そう、ですわね。 あと一体を――」

「そう、あと一体を血祭りにあげるまでは、俺の気が済まない……!!」

「……そこまでは言ってませんわ」


 今回の標的は、二体。

 目撃情報からして、近くにもう一体いるはずだ。

 

「ひぃあぁぁぁっ!?!?」


 突如、森中に悲鳴がこだます。

 こんなところに、誰かいるのか?

 もしかして、トロルと鉢合わせたのか……!?


「まずいぞ、二人とも! いくぞ!」

「はいですわ!」

「了解……!」

 

 ガサガサと茂みにわけ入り、悲鳴のした方へ――

 頼む、間に合ってくれよ……!


 そしてすぐに視界が開けた。

 俺の願いが届いたのか、どうやら悲鳴の主は無事なようだ……!

 

 顔までは見えないが、ズリズリと後退る獣人……それに相対するように、ゆっくりと歩を進めるのは――


「なんだ、アイツ……」


 そこら辺の木よりもデカく、鈍い青銅色の筋肉質な体。大きく反り返った角と、剥き出しの牙、ゴワゴワッとした黒い体毛。


「……! あいつは、《オーガー》!」

「危険度C+の凶悪なモンスターですわね……!」

「いかつい野郎だな……!」


 悠然と歩く《オーガー》の後ろでは、見覚えのあるモンスターの亡骸がある。《トロル》だ。

 無惨にも頭を叩き割られ、ご自慢の腕もあらぬ方へねじ曲がっている。


「ひえっ! あのやろう、《トロル》をやったのか……? おい、デカブツ! 俺の相手を横取りしやがって!」


 俺の怒声に気付いたのか、ゆっくりと俺の方を向いた《オーガー》。その瞳は濁った黄色で、およそ知性を感じさせないものだ。


「グオォォォッ――!!」

 咆哮一閃。

 森の空気は張り裂け、木々が揺れる。


「なにが「グオォォ」だこの野郎が! そこに直れぃ!!【パライズ】!!」


 俺の右手から、怒りの稲妻エフェクトが炸裂。

 デカイ標的だ、勿論外すことなく命中。


「グゴゴアァッ――!?」

 巨体が、震える。


「弾け飛びなさい!【暴波泡(ブラスター・バブル)】!!」

「むん……!【羅刹(らせつ)】!」


 ラヴィ必殺の居合い斬りが炸裂。

 《オーガー》の毛むくじゃらの胸元を大きく切り裂いた。


 続いて、ベルの魔方陣から放たれた泡が、ゆっくりと、着実に近付き――

 ドババァンッ――!!

 盛大な水飛沫を撒き散らした。


「グゴアァ……」

 されど立つ、怪物。

 目を血走らせ、まさに赫怒の視線を俺たちに向ける。


「うおっ……今さら怯むかよぉ! 【パライズ】!」

「グ、グゴゴアァ――」

「よし、麻痺った! 今のうちにトドメを――」


 その時、信じられないことが起こった。

 確実に麻痺って倒れた《オーガー》だったが、ズズンと大地を踏み鳴らし、ぬらりと立ち上がったのだ。

 その体色は、錆びたような鈍い緋色を帯びて――


「なっ……!?」

「あれは……狂乱(バーサーク)状態ですわ……! 全ての理性を解き放ち、手当たり次第に攻撃する……!」

「あんな奴、もともと理性なんか無ぇだろ!?」


 まずいぞ、マヒル!

 麻痺が効かない!――いや、正確には"上書き"された、というのが正しいか。

 

「グオォアッ!! グギャオガァァッ――!!」


 最早誰ともなく、手当たり次第に暴れまわる《オーガー》。これじゃあ、手をつけられねぇ……!

 頼みの麻痺も上書きされるようじゃあ……!


「……ん? 上書き?」

「マヒルさん、もう少し下がらないと危ないですわ!」

「ん? あぁ……【パライズ】!」


 ビシィッ――

 稲妻エフェクトが、暴れ狂う《オーガー》に命中。


「ガガギャアオギャギャギャギャギャ――!?」

「……おぉう、ビンゴォ。 うん、名付けて、上書き上書き(オーバーライオーバー)|作戦」


 《オーガー》は鈍い赤色に染まったまま、地に伏し大きく痙攣している。


「えぇっ!? ど、どういうことですの!?」

「……狂乱バーサーク状態、なのに」


 驚いた様子で目をぱちくりとさせる二人。

 俺は当然、どや顔で応える。


「なぁに、簡単なことさ! 俺の麻痺が狂乱バーサーク状態とやらで上書きされたなら、さらにそれを俺の麻痺で上書きできるんじゃないか……って思っただけ。 そしたらば、ご覧の通り……!」


 どこかうらめしそうに俺を見る《オーガー》。

 やめてくれ、そんな目で見るのは。


 その後は、ラヴィが華麗にトドメを刺して終了。

 一時はどうなるかと思ったが、さすが俺様マヒル様!

 機転を効かせて大勝利!


「機転を効かせた大勝利でしたな!!」

「おお、まさにその通り……って誰ぇ!?」


 妙にテンションの高い声で拍手をしながら近付いてきたのは、恐らくさっきの悲鳴の主。

 恰幅の良い体に、見るからに高そうな服。

 そしてその顔は……タヌキ?タヌキの獣人さん……??


「やぁやぁ、初めましてぇ! 私は、《ポッピントッピン》と申しますぅ! 以後、お見知りおきをぉ」


 そう言って彼は、ふかふかの頬毛をひょこっと動かした。

 やれやれ、まーた妙なキャラが出てきたもんだぜ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

感想、ブクマ等お気軽にいただけたら励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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