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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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135話 愛ゆえ重く、それもまた嬉し

 恐怖のハロウィンから数日が経ったある日。日に日に寒さは厳しさを増し、人肌恋しいこの季節――

 いきなり部屋に押し掛けてきたラヴィから、恥ずかしそうに顔を赤らめて「渡したいものがある」と言われた。


 これはあれか?モテ期到来ってやつか……!?ラヴィってば、俺のことをそんな目で見てたのか……!?

 これを期に、人生初の"お付き合い"というものに発展しちゃうのか……!?


 俺は万に一つの可能性に胸を踊らせながら、自室でそわそわしながら待っていた。なぜか、ベルと一緒に。


「……なんで、お前がいるんだよ」


「……べ、別にいいじゃないですか」


 どこから話を聞いていたのか、いつの間にかしれっと隣にいるベル。


「あれだろ、「ラヴィさんを独り占めするなんてズルいですわ!」とか思ってんだろ」


「……ふ、フンッ! なんのことだか分かりませんわね!」


「お前なぁ……せっかくラヴィが、俺に愛の籠った贈り物をするって言ってるのに、野暮だとは思わないのかね?」


「なぁっ!? だ、誰もそんなこと言ってませんでしたわ!! "ただ"の贈り物ですわ!!」


 ベルは立ち上がり、大声で猛抗議。


「おまっ、"ただ"のとはなんだ"ただ"のとはっ!!」


 俺も立ち上がり、抗議する。

 ――とその時、『コンコンッ』と扉をノックする音が聞こえた。


「……マヒル殿、入っても、いい?」


 き、きたっ……!!

 でも、待ってくれ、心の準備が……!!


「待ってましたわ! どうぞ入ってくださいまし!」


「おまっ、何勝手に!?」


「あれ、ベル殿もいるの……? じゃあ、入るね」


 俺、心臓バクバク。

 心拍数が有頂天。


 そして、扉がゆっくりと開く。

 やはり、どこか恥ずかしそうな表情を浮かべるラヴィと――その手には粗く梱包された包み紙。


「やあ、ラヴィ……待ってたよ。 ごめんな、一人変なのがいるけど」


 精一杯のイケボを意識して優しく語りかけると、ラヴィは小さく首を振った。

 

「ううん、大丈夫」


 隣ではベルが「お前マジか?」みたいな顔で俺を見ている気がするが、そんなのどうだっていい。

 今は俺とラヴィの時間なんだから――


「あの、これ……もしよかったら、使って欲しい」


 贈り物を持つラヴィの手にキュッと力が入り、包み紙にうっすらとシワがよる。

 意を決したように、それをおずおずと差し出すラヴィ。あぁ、なんていじらしいのだろう……


 俺はそれを、まるで赤子を抱っこするかのように優しく、大事に、丁重に受け取り――


「おぼぉッ――!?!?」


 予想外の重みに、伸ばしきった両手はグンと下がり、思わずスクワットような体勢になった。

 それを見てベルはニヤニヤしている。あのやろうマジで。

 

「お、おぼぼぉっ……思いのほか、ズッシリしてるんだな……ちょっとだけ驚いた、ぜ」


 なんとか体勢を立て直す。

 改めて、重い。いや、激重って訳じゃないが両手にズッシリくる。しかも、なんかチャリチャリ音がしてる。これが、愛の重さってやつ……?


「ところでラヴィ、これは一体……?」


 俺が聞くと、ラヴィは恥ずかしそうに顔を背けながら「鎖帷子(くさりかたびら)」と言った。


「く、鎖……え、何?」


鎖帷子(くさりかたびら)……それも、特注品」


 呆然と、包み紙を眺める。

 じんわりと広がる重量感。鎖帷子(くさりかたびら)ってあれだろ?鉄でできた服ってことだろ?やったぁ、防御力アップじゃんちくしょう。


「お、おほほほほ!! おほほっ、ゴホッゲホッ……!! 良かったですわね、マヒルさん! 想いのこもった贈り物ですわ!何を勘違いしていたのか知りませんけど――はばばばばばッ――!?」


 俺はごく自然に、流れるように【パライズ】を発動。

 ガクガクと震えながら、ベルはベッドに倒れこんだ。


「……ありがとう、ラヴィ」


 俺が心の底から絞り出して言った言葉を聞いて、ラヴィは嬉しそうに微笑んだ。

 そりゃあそうだ。人生、そううまくいくもんじゃないよな。謙虚に、謙虚に……


 俺は泣いた。

 心の中で、ちょっぴり泣いた。

 鎖帷子(くさりかたびら)がチャリっと鳴った。

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