130話 決戦、ハーロウ!!③
俺とハーロウの一騎討ち。正直、万に一つの勝機も見出だせないが、戦わないことには勝ち目なんて来ない。
まずは俺の放った【パライズ】を受け、麻痺ったハーロウ。
「ぐっ――フフッ、無駄なことを!」
しかし、ハーロウが常時発動させている【自動浄化】により麻痺は解除。
続いてハーロウの展開した魔法陣から、大量の《ホロウ》が現れた。夜空を埋め尽くさんばかりの白い亡霊の群れ――
俺はすかさず【麻痺連鎖】で応戦。夜空に浮遊する全ての《ホロウ》を地面に落としてやった。
「フハハッ、無駄なことを! 的が増えた所で、俺の麻痺からは逃れられないぜっ!?」
「……! 面白い、ならばこれはどうだ……?」
ハーロウは次々と魔法陣を展開。そりゃあもう、尋常じゃない数を――
「はっ? いやいや、待て待て――」
いくつもの魔法陣から、ウジャウジャと《ジャックオーランタン》が現れる。その数、十数体どころじゃない。もはや数え切れない程、辺りはカボチャ頭に埋め尽くされた。
ギチ、ギチ、と近付いてくるカボチャ頭たちに【麻痺連鎖】を何度も叩き込み、次々と倒れ込んでいく。
――が、数が多過ぎた。
倒れた《ジャックオーランタン》を踏み越えて、新たに召喚されたものが続々と行進を始める。
まさに無限地獄。
「……くそっ、キリがねぇ……! それにこのままじゃあ、俺のMPだってもたないぞ……!」
現状、俺の【麻痺連鎖】で麻痺らせられる数は十数体程度。それを何発も撃ち込んでいるにも関わらず、行進は止まらないことから敵は少なくとも数百体。全部を止めるのは不可能だ。
ただでさえ相当無茶な戦いだってなに、長期戦になると最早戦いにもなりゃしねぇ!
それを分かっているのか、当のハーロウはローブをはためかせてフワフワ浮いて高みの見物。
「てめぇ、このやろう! 降りて戦え――うわっ、このっ……!」
いつの間にか迫っていた《ジャックオーランタン》に服を掴まれ、慌てて振りほどく。
せめて、何か隙でもありゃあ……!
藁にもにすがる思いで、麻痺を撃ち込み続けていたその時――
「……お、お~っほっほっほっほ!!!」
高らかな笑い声が響いた。
それは、清く美しい奏でとなって俺の心を凛と照らした。
圧倒敵な物量差に弱腰になっていた俺の、身体の芯からほとばしるような熱を感じる――!!
ベルの【高貴なる咆哮】だ!付随効果による、士気の向上はとんでもなく俺に効いたぞ……!!
そして、【高貴なる咆哮】のもう一つの効果――
俺に大挙として迫っていたカボチャ頭の群れは、一斉に別の方を向き、進んでいく。そう、ベルのいる方へ。
「ベルっ……!!」
だが、この隙を逃すことはできない。
どこにいるかも分からないベルが、必死の思いで繋いでくれたこの一瞬を、無駄にすることは――
「【麻痺銃】ッ!!」
俺の左手から麻痺の弾丸が高速で放たれ、フワフワと漂っていたハーロウを見事に狙撃――ッ!!
「ぬうっ……!?」
そのままバランスを崩し、ゆっくりと落ちていく。
俺は《ジャックオーランタン》の群れをかき分けかき分け、進み続ける。
「くっ、こんなもの、何度やったって――ぐわわっ――」
俺はすかさず【パライズ】を発動!
再び浮き上がり、格好の的となったハーロウを麻痺らせた――!
「解除されようが、麻痺は効く。 お前さえ抑えとけば、後は仲間が――」
刹那、空気が張り裂けそうな衝撃が走り、獣の遠吠えが夜空に鳴り響く。
その声は怒りに燃え、闘士沸き立つ、頼れる仲間の魂の咆哮だった……!
「ウガァァウッ……!! マヒル殿、ベル殿、今助ける……!!」
さっきの衝撃、恐らくラヴィの最後の切り札【超獣化】が発動したんだ。ただでさえ身体能力の高いラヴィが、数段強くなる。
うん、頼もしい限りだ……!
俺はハーロウへの麻痺を絶やすことなく、スタンブレイカーで眼前の敵をなぎ払い続け、とうとう至近距離までハーロウに接近した。
「こんばんは、ハーロウさん」
「ぐぅっ――フ、フハハハハ……! ようこそ、恐怖の根源へ」
ジリッ――と睨み合う。
まるで俺たちの周りだけスローモーションになったかのように、時が張り詰める――
ピクッ――
ハーロウの手が一瞬だけ動く――と同時に、巨大な魔法陣が展開。
――が、魔法陣はシュンッと消えハーロウは小さく痙攣し、地に膝をついた。
「……【パライズ】だ。 俺の方が、ほんの少しだけ発動が早かったな」
そして俺はバチバチとスパークするスタンブレイカーを天にかざす。
ハーロウは麻痺りながらも口角を吊り上げ、この状況でさえ楽しんでいるようだ。
「……気付いてたか? お前が麻痺ってる間は、新しいモンスターが召喚されない。 "麻痺"ってのは、文字通りあらゆる行動を麻痺させるってことだ。 つまり、麻痺している間なら、恐らくは――」
俺はハーロウに追加の【パライズ】かける。スタンブレイカーは、今にも弾けんばかりに唸りをあげる――!
「唸れ相棒!不死なる者に真なる終わりを!!【超電滅撃】ッ!!」
そして、勢いよく振り下ろした――!!
バガアァァン――ッッ!!
凄まじい爆音と共に、まばゆい程にほとばしるスパーク。
確かな手応え。数メートル先に、ブスブスと煙を上げ地面に倒れるハーロウの姿。
俺の一撃は、遂にやつを捉えた――!!
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