128話 決戦、ハーロウ!!①
「さあ行くのだ、我が子らよ……!」
ハーロウの声に合わせて、ぼんやりと佇んでいた《ジャックオーランタン》たちがウジャウジャと動き始める。
その数、十体以上だろうか。一気にこれだけのモンスターを生み出すのは驚異的だが――
「俺のっ、許容範囲内だぁっ! 【麻痺連鎖】!!」
ギギッギッ――
稲妻エフェクトが次々と炸裂。カボチャ頭の群れはほぼ一斉に硬直し、ドミノ倒しのように次々と倒れていく。
「今だ、ラヴィ!!」
「任せて! 咲き、誇れ――【乱華】ッ!」
ラヴィの体が闇に溶け――ザザザッと斬撃の音だけが辺りに響く。
次の瞬間には、あちこちで《ジャックオーランタン》の破片が飛び散った。
「……フム、面白い。 では、これはどうかな?」
ハーロウは片方の口の端を吊り上げ、新しいオモチャでも手に入れたかのように嬉々として魔法陣を展開。
ああ、当然、まだ来るよなぁ……!
次は何かと構えていると、何やら魔法陣の様子がおかしい。今までと違って一つだけだし、なにより明らかにデカイ……!
「さあ、存分に暴れるがいい、《スケルトン・ロード》よ!」
ズズッ――ガシャリッ。
魔法陣から姿を現したのは、古めかしい盾と防具でフル武装した骸骨だった。武器は持っていないようだが、殴られるだけでも相当痛いだろう。
そして、骨のくせに、俺たちよりも普通にデカイ。
ゲームとかでよく見る《スケルトン》がこの世界にもいるんだとしたら、今出てきたのはソレの上位種ってことだろうな。
「あ、歩く骸骨ですわっ!? も、もう嫌っ、何もかも吹き飛ばしておしまい……!【サモン・セバスチャン】!!」
詠唱を済ませていたベルも、負けじと魔法陣を展開。
まだまだ不完全なベルの魔法だ。さあ、"骸骨"対"首なし執事の上半身"の戦いだ……!
うん、どっちの方がホラーなんだか分からねぇ……!
魔法陣から執事風の腕がニュッと伸びて、ズルリと這い出す。そしてセバスチャンは――両の足で地面に降り立った。
「なっ……!?」
あまりの衝撃に、思わず声が出た。
だって、今までだったら、首無し執事の上半身だけが召喚されて、それが物凄い勢いで飛んで行くんだぜ!?
こんな……こんか土壇場で、なんて頼りになる子なんだ、ベル!
「おい、ベル! 遂にセバスチャンの完全体を召喚できたんだな!! すげぇぞ! いけ、やったれ、セバスチャン!!」
「フフフッ……同じ魔法使いとして、負けてられませんものね……! 例え相手が、昔話に出てくる悪役だとしても……! さあ、やっておしまいなさい、セバス!!」
セバスチャンは猛然と駆ける。
遂に両足が揃った感動を踏みしめて。
主の敵、《スケルトン・ロード》目掛けて一直線に向かう――
「……ん? あれ?」
俺は気付いた。気付いてしまった。
まだまだセバスチャンは、完全では無かったという残酷な事実に。
「セバスチャン――顔が……ッ!」
そう、召喚されたセバスチャンは、両手両足、体もあるが……顔が――いや、頭だけが無かったのだ。
これが"首無し執事"を召喚する魔法だと言うのなら、これが完成形なんだろうが――
「絶対違うだろっ!? だって、もう、なんか……より不気味さに拍車がかかってる……!」
「フフン、たかが頭が無いだけですわっ! あんなもの、ただの飾りなんですわっ!」
ベルは興奮気味に、高らかに言い放つ。
間違ってる。絶対に色々間違ってると思うが、この厳しい戦いのさなか、ツッコんでる余裕なんて無い……!!
「もういいや! いけぇ、セバスぅ!!」
俺も、ヤケクソ気味に叫ぶッ!
遂に両者向かい合ったッ!
先手は、セバスチャン――高速の左ジャブが幾度となく打ち出されるッ!
対する《スケルトン・ロード》、盾で懸命にガードッ!しかしセバスチャン、怯むこと無く打つ、打つ、打ち続けるッ!
ビキキッ……ガシャアンッ――!
《スケルトン・ロード》の構える盾が、粉々に弾けとんだ。どうやら年代物らしき盾では、猛り狂うセバスチャンの猛攻を防ぎきることはできなかったようだ。
そしてセバスチャンは、そのまま大きく振りかぶり――
バガアァァッ――!!
渾身の右ストレートで、骸骨の頭を兜もろとも打ち抜いた――ッ!!
《スケルトン・ロード》はハーロウの足元までぶっ飛んでいき、シュウシュウと音を立てて消えていった。
同じくしてセバスチャンの体もフッと消え、一瞬の静寂が流れた。
うん、よくやったぞ、セバスチャン!!お前のKO勝ちだ!
……そしてそう、やれる、やれている――ッ!
伝説的な存在のハーロウを相手に、なんとか食い付いていけてる……!!
「ハ、ハーロウッ! さあ、次はお前の番だ!!」
俺は精一杯虚勢を張り、ビシィッとハーロウを指差す。
対してハーロウは、ただ不敵な笑みを浮かべた。
「……フ、フハハハッ! 面白い、面白いぞ貴様ら……! いいだろう、我輩が直々に相手をしてやろう。 この、"恐怖の帝王"がな……!」
そう言うとハーロウは、これまでと比べ物にならないほどの禍々しいオーラを放った。
肌がピリつく程の、過度なプレッシャーを感じる。やっべぇ、やっぱりヤバいかもしれん。無理ゲーだったかもしれん……!!
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