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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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127話 恐怖の帝王、現る

 肌を刺す程の寒気が走り、霊気と瘴気の入り交じったような、重い空気が渦を巻く。

 あとは街に帰るだけだって言うのに、これ絶対ヤバいやつだろ……!


「……! 何か、来ますわ!」


 ベルが叫ぶと同時に、俺たちの目の前に不気味な青い光がぼんやりと現れる。

 おぞましい力が一挙に収縮していくような感覚――俺はただ、その様子を固唾を呑んで見守ることしかできなかった。


 ゴゴゴゴ……と地響きのような音があたりに轟く。

 青白い光と黒いモヤは交差し、竜巻のような渦を形成。それは次第に動きを早め弾けんばかりに膨れ上がり、そして――


「フッフッフッフ……」


 暗闇に響く低い笑い声と共に、えらく迫力のあるジジイが――いや、人型をした"何か"が姿を表した。


 フードを目深に被り、闇夜を思わせる深い紺色に橙色の縁取が施されたローブには、所々に金色の刺繍が見える。

 

 人間の様ではあるが、フードやローブから覗く肌は骨と皮だけのように痩せ細り、血の気は全くない程青白い。まさに、"死人"のように。


「どうやら……我が子たちが世話になったようだな」


 ソイツは俺たちを一瞥するとニヤリと笑った。

 いや、"笑った"というより口の端の皮膚が吊り上がった――そう思う程に、ぎこちなく気味の悪い動きだった。


 この姿からして、魔法職だろうか?腰には杖のようなものも携えている。ちょっと叩けば折れそうな体だっていうのに、威圧感がバシバシ伝わる。

 こんなん、街のすぐ近くで出会っていいやつじゃない。絶対に。


「な、なんだお前ぇ! こっちは疲れてるし眠いんだ! "我が子"とか言われても、知らん!」


「フッフッフッ……威勢がいいな、冒険者よ。 では聞こう。 そこの獣人の女が持っているものはなんだ? 《ホロウ》の魔結晶ではないのか?」


「……!」


 ラヴィは咄嗟に手元を隠す。


「それに、男。 お前の腰のポーチには、《ジャックオーランタン》と《ナイトメアリー》の魔結晶。 あぁ、かわいそうな我が子たちよ」


 そう言うとソイツは「フッフッフ」と小さく笑い、不気味な笑みを浮かべる。


 なんだ、この野郎。オバケ型モンスターのことを我が子とか言ってたし……まさかとは思うが、ハロウィンのボスモンスターとかじゃないだろうな……


「フッフッフ……お察しの通りだよ。 アレは我輩が生み出したモンスターだ。 さて……なんだお前、と言ったかな? では、名乗らせていただこう――」


 ソイツは仰々しく天を仰ぎ、両手を広げた。


「我輩は《リッチ》の中でも最上位種である、《ロイヤル・リッチ》だ。 夜の主にして恐怖の帝王だ。 以後、お見知りおきを……そして、さようなら」


 そう言うと《ロイヤル・リッチ》はいくつもの魔法陣を展開させ、おびただしい数の《ホロウ》を呼び出した――!!


「キャアァッ! きゃわいい子たちがいっぱいですわ……! でも、それどころじゃないですわね!」


「おぉい、あったり前だろ!! こうなりゃやってやる!【麻痺連鎖麻痺連鎖(ショック・チェイン)】ッ!!」


 バチィ、バチィッと稲妻が交差する――!

 蚊取り線香のように、ボトボトと小気味良く落ちてくる《ホロウ》たち。

 数が多いだけのやつらなんざ、俺の麻痺の前にゃ手も足も出まいてぇ……!!


「ラヴィ! やったれ!!」


「了解ッ……!」


 ラヴィが意気揚々と刀を振りかざした瞬間、地面に落ちた《ホロウ》たちがシュンッ――と一斉に消えた。


「あっ……」


 獲物が霧のように消え去ってしまい、呆然と立ち尽くすラヴィ。


「やりました……の?」


「……分からん。 勝手に消えた、としか」


 俺とベルも、状況を理解できないでいると、パチパチと手を叩く音が聞こえる。

 見れば《ロイヤル・リッチ》のやろう、感心したように拍手してやがるじゃねえか。


「ほぉ……幽体のモンスターを行動不能にするだと……? なかなか、面白い男だな」


「……へっ、あの程度で驚いてもらっちゃ困るぜ! お、俺には、まだまだお前が驚く程の力が残っているんだぜ!?」


「フッフッフ……! それは面白い。 是非ともその『驚く程の力』とやらを存分に見せてもらいたいものだな」


 《ロイヤル・リッチ》はそう言うと、再びいくつもの魔法陣を展開――その中から、ギチ、ギチッと《ジャックオーランタン》の群れが現れた。


「ヒ、ヒイィィッ!!」


 ベルは細っこい悲鳴を上げ、フラフラリ。

 ラヴィに支えられながら、なんとか意識を保っているようだ。


 ――にしても、この数。

 あんな一瞬で大量のモンスターを呼び出すなんて、ヤバすぎるって……!


「……おいおい、"我が子"なんだろ? 夜も遅いんだし、寝かせてやっといたらどうなんだ?」


「フッフッ……あいにく我が子たちは悪い子でねぇ。 今みたいに、夜遅くに人を驚かせるのが大好きなんだよ」


 《ロイヤル・リッチ》はニヤリと笑う。

 あの野郎、あくまでも余裕綽々って感じだな。力の差は歴然……ってことか。


「改めて、お前たちには名乗っておこう。 我が名は《ハーロウ》。 《ロイヤル・リッチ》にして、夜の闇と共に恐怖をもたらす者だ」


「は、ハーロウですって……!?」


 その名を聞いて、フラフラしていたベルの目がカッと開いた。まさに、恐怖の色を宿して。


「な、何か知ってるのか、ベル!」


「……し、知ってるも何も……数百年も昔、邪悪な魔術師としてその名を轟かせた極悪人ですわ」


 ベルはそう言いながら、ガタガタと震え出した。

 さらに続けて――


「……そして今日まで続く、"ハロウィン"という存在を作った、張本人ですわ……!」


 ベルの言葉に、頭の奥に鉛をズンと落とされたかのような衝撃を受けた。


 ハロウィンモンスターと総称される、オバケ型モンスターを自ら生み出し、数百年もの間それを定期的に大発生させる存在。


 そんなもの……そんなもの、災害だとか天災だとか、そういうレベルを超えてる気がするんだが。

 例えるなら、そう――まるで"神様"みたいな存在じゃねえか。


「……さて、どうするっかなぁ……!」 


 俺は震える足に無理矢理力を入れ、ハーロウを睨み付けた。さあ、シビれるような戦いの始まりだ――

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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