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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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126話 ハロウィン・ホラー・ナイト③

 ベルをおぶったまま夜の街道を歩くこと三十分。

 真夜中っていうのもあるんだろうけど、なんだかちょっと寒いな~なんて呑気に思っていたその時。


 俺たちの少し先のほうで、慌ただしく揺れるランタンや松明の灯りが見えた。うん、何やらハプニングの予感。 


「キャアァァァッ!!」


「うわぁ、く、来るなぁっ!!」


 男と女の叫び声が聞こえ、俺たちは急いで駆けつけた。見るからに冒険者風の、若い二人組だ。

 二人は青冷めた表情でおろおろと辺りを見渡しながら、何かに怯えている様子。


「ど、どうしましたか?」

 

「うわっ! な、なんだ人間か……。 いや、なんかよく分からないモンスターがたくさんいて……! どうしよう、またすぐに現れるかもしれない……!」


 男の冒険者は、早口でそう話した。

 女のほうは両手で肩を覆うようにして、カタカタと震え相当怯えている様子だ。


 でも……たくさんのモンスター?見たところ、辺りには何もいないようだが……


「とにかく、落ち着いてください。 それって、どんなモンスターでしたか?」


「どんなって、そりゃあ――」


 そう言いかけて男はハッと目を見開き、顔をみるみるうちに青くしていった。

 その視線は俺ではなく、少し後ろ……さらに上の方に向かっている。


 おいおい、そんな古典的な手に引っ掛かるやついないだろ?そんな顔して見たって、俺は絶対に後ろを振り返らないからな!絶対にだ!


「で、でたぁーーーッ!!!」


「おい、ちょっ――行っちまったよ……」


 俺が呼び止める間もなく、二人組はスタコラ走り去ってしまった。まったく、俺を怖がらせようったって、そうはいかないからな。


「まったく、何だったんだろうな、ラヴィ。 ――ラヴィ?」


 ラヴィは尻尾をパタつかせながら、あっちをキョロキョロこっちをキョロリ。


 なに?一体何を目で追ってるの?

 もしかしなくても、本当に"何か"がいるの……?

 さすがに気になった俺は意を決して……思い切り後ろを振り返った!!


「……? いや、なんだあれ? ……ゴミ?」


 そこには拍子抜けする光景が。

 俺たちの上空を、白いレジ袋みたいなものがフワフワ漂っている。


「なあ、ラヴィ。 あれなんだ?」


「……拙者も、分からない」


「あれは、《ホロウ》ですわね」


「うおっ!?」


 突然背中から声がして、ビクリと肩が跳ねた。


「ベル!? お前、起きてたのか!?」


「え? そうですわね、さっきの人たちの悲鳴の辺りから起きてましたわ」


「おまっ、起きてんなら早く降りろよ。 地味に重いんだから」


「お、重くなんてないですわっ!?」


 俺の頭をベシッと叩いた後、するすると降りるベル。

 ちくしょう、許さんからな。

 ベルはパッパッとドレスをはたくと、シャンと背筋を伸ばした。

 

「フンッ。 あんな、小さくて可愛いモンスター相手に逃げるなんて、考えられませんわ!」


 さっきからビビり散らかしてたやつとは思えないセリフだ。


「ベル、お前大丈夫なのか? 一応、あれ、オバケなんじゃないのか?」


「えぇ? あんなにきゃわいい子たちを怖がる理由なんてありませんわよ」


 そう言ってベルは、愛おしそうに《ホロウ》とやらを目で追う。いや、まじでなに?風に浮かされたゴミ袋にしか見ないんだが。


「うーん、分からん。 お前の感覚分からんて」


 乙女心……というかベル心?は全く分からん。

 まあ、分からんが、やることは一つ――


「【麻痺連鎖(ショック・チェイン)】」


 夜の闇に、稲妻エフェクトがほとばしる。

 どうやら《ホロウ》とやらはたくさん涌いていたようで、いくつもの白い塊がボトボトと地面に落ちてくる。


「ちょあっ!? マヒルさん、何をしているんですの!?」


「何って、モンスター退治だろ? 冒険者の努め」


 そう言う俺の隣では、ラヴィが当然のようにブスリ、ブスリと《ホロウ》に刀を突き立てる。

 シュウゥと《ホロウ》が消える度に、その顔はどこか薄っすらと笑みを浮かべていて、ちょっと怖い。


「キャアァッ! ラヴィさんまで!」


「いやいや、ベルよ。 これはハロウィンパーティーだろ? ハロウィンシーズンに出てくる、オバケ型モンスターを倒すっていう当然の行為じゃないか」


「で、でもぉ……でもぉ……」


 オバケを怖がったり、可愛がったり……忙しいお嬢さんだぜ、まったく。


「ふぅ……全部、倒した……!」


 ラヴィは満足気にそう呟いて、刀を納めた。

 しっかりと小さい魔結晶も回収済みのようだ。ちゃっかりしてるぜ。


「さあ、そろそろ眠ぃし、とっとと帰ろうぜ」


「あぁ、さようならオバケちゃん……」


 名残惜しそうに後ろをチラチラと見るベルの手を引き、街へ向かって歩き出す。

 その時――


 ピキィンと、空気が氷った。

 吐く息は白く、まるで冷凍庫の中にいるような異様な寒さに襲われる。


「えっ、なに? 寒っ……!」


 ガタガタと震えながら辺りを見渡すと、黒っぽいモヤのようなものが漂っている。


 冷気……というよりは、霊気。

 そう思わせる不気味な空気が、俺たちの周りにずっしりまとわりついてくる。

 どうやらこのハロウィン、まだまだ無事に終わってくれないようだ――!

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