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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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124話 ハロウィン・ホラー・ナイト①

 深夜零時を過ぎた頃――

 草木も眠る真夜中に、ぼんやりと薄明かりが灯る。

 当然誰もいないはずの街外れの農場に、ゆらりゆらりと動く影が……


 俺たちだ。

 どうやらつい先日この付近に、ハロウィンモンスターなる特殊なモンスターが現れたみたいで、俺たちはそこを狙いに来たという訳だ。


 神出鬼没かつ、複数種類もいるハロウィンモンスターを討伐するには、目撃情報があった場所を地道に探すしかない。これは、長期戦の予感だ……


「……あっ、いた」


「ひいっ!」


 全然撤回。どうやら、夜目の効くラヴィが早速何かを見つけたようだ。その声に驚いたのか、ベルは小さく跳ねた。いや、怖がり過ぎだって。


「……え、どこ?」


「ほら、あのあたり」


 ラヴィがしきりに指差すが、目を細めて見てもいくつかのカカシしか見えない。


「……いや、分からん。 俺には、ただのカカシしか――」


 ギギギィ――


 俺がそう言いかけた所で、ただのカカシだと思っていたモノの、カボチャ頭だけがゆっくりと俺たちの方へ振り返った。


 ギョロリッ――

 カボチャ頭とガッツリ目が合う。

 くりぬかれたカボチャの中――その目の部分には、炎のよう赤い瞳がぼんやりと浮かんでいる。


「ギャアァァァァァァッ――!!」


 ベルの悲鳴が、こだます。

 女性だとか、お嬢様だとか、そういう全てを捨て去った、野太き魂の叫び。


 ギギィッ――ギギッ……

 

 不気味に揺らめく赤い目が、いくつも闇に光る。

 どこに隠れていたのか、その声に反応するかのようにワラワラとカカシが集まり出した……!


 見た目はほぼカカシそのものだが、しっかりとその両足で歩いている。まあ、めっちゃ遅いけど。


「こいつは……《ジャックオーランタン》だな……! 全く、不気味な姿してやがるぜ」


 そう、こいつはハロウィンモンスターの代表格で、ジャックオーランタンというモンスターだ。危険度は低くFランクだが、その数が厄介らしい。


「……数、多い」


 実際、あっという間に取り囲まれて、やつらが歩く度にギシギシという耳障りな音が耳に響く。

 夜中にカカシに襲われるなんて、想像しただけで相当なホラーだが、これは現実。そして対処法もある……!


「ベル! あいつら動きは遅い! セバスチャンで一気に片付けてやれっ!!」


「……」


「ベル? おい、ベル――ギャアァァァァァァッ!!」


 そこには、腰まで伸びた金髪ツインテールが特徴の、顔面蒼白のオバケが仰向けに倒れていた。

 いや違う、ベルだ。


「寝てる――いや、これは……気絶か……?」


 とにかく、こちらの戦力は無事に一人減ってしまった訳だ。うん、大丈夫。想定内!


「【麻痺連鎖(ショック・チェイン)】!!」


 バチチィッとカカシたちの間を稲妻が駆ける……!

 ジャックオーランタンはカタカタと震えながら、次々に倒れていく。


「いくぞ、ラヴィ! 総攻撃だ!!」


「了解……!」


 それからはもう、俺たちの――いや、俺とラヴィの独壇場。倒れたカカシをバキバキと壊していく様は、まるで悪質な畑泥棒。

 ち、違うんです、オバケ退治してるだけなんですぅ……ってか。


 そうして、ものの数分で全て撃破。


「……本当に、数が少し多いだけの敵だったな。 うん、楽勝楽勝」


「……手応え、ない」


 ラヴィは不満そうだが、楽に倒せるに越したことはないからな!

 どっちかって言うと一番厄介なのは、未だに寝転がってるコイツの面倒を見なきゃならんことのほうだ。


 チラッと地面に目をやると、う~ん、う~んと小さくうなされているベル。これ、どうしようかな。


「ベル殿、起きて」


 そう考えていると、ラヴィがベルの顔をペチペチと叩いた。容赦ないっすね……


「う~ん……はっ!? 敵は!? モンスターは!? オバケはどこですのっ!?」


 目が覚めた途端シュバッと起き上がり、腰の引けたファイティングポーズをとりながら辺りを警戒するベル。


「おい、落ち着けって。 もう全部倒したから」


「ふえっ!? ほ、本当ですの……?」


「ああ。 お前がぶっ倒れてる、一瞬の間にやっつけちまったよ」


「うぅ、ご迷惑をおかけしました、ですの……」


 ベルはそう言ってしおらしく頭を下げた。

 いつもなら一言二言言い返して来そうなものだが、いやに素直だ。


「いや、こっちこそごめんな? まさか、気を失う程怖がりだとは思ってなかった」


「……こ、怖がってなんか! いえ、まあ、その……少しは驚きましたが……」


「少し? それにしちゃあ、ギャアァァッて叫んでたような気がするけどな」


「うん。 声、おっきかった」


「き、気のせいですわっ!! ほら、早く次の所に行きますわよ!!」


 そう言ってベルはドレスの汚れを払い落とした。

 えぇ、まだやるつもりなんですか……?さっきの件があるというのに……?


「ベル、今日のところは帰らないか? 怖いなら、本当に無理して付いてこなくても大丈夫なんだぞ?」

 

「拙者もそう思う。 オバケは、拙者の敵……だから、戦う。 ベル殿が、無理をする必要は、ないよ?」


 うん、ラヴィがそこまで敵視するのは不思議だが、ベルの言うとおりだ。無理強い、ダメ、絶対。


「お二人とも……で、でも、大丈夫ですわっ! 貴族たるもの、オバケだなんだというものを怖がっていては、品位が疑われてしまいますわっ! さあ、行きますわよっ!!」


 そう言ってベルは、夜の農場をずんずん進み出した。

 なーんか、既に空回り気味ではあるけど……大丈夫かぁ?それに、今歩いてるそこは――


「ギャアァァァァァァッ!!」


 ベルの野太い悲鳴が、こだます。

 ついさっき俺たちが倒したジャックオーランタンの頭を見て、へなへなと座り込んでしまったベルお嬢様。

 おい、品位はどうした、品位は。 


 こうして俺たちのハロウィンパーティーが始まった。

 ――そう、身の毛もよだつ恐怖の夜は、まだ始まったばかりなのだ。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

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