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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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120話 ドレイク戦、決着

 【麻痺銃(パライ・ガン)】で狙撃し、ようやく地面に降り立ったドレイク二体との直接対決が始まる。


「まずは先手必勝、【パライズ】!!」


 続け様に二発の【パライズ】を発射。稲妻エフェクトがほとばしり、まずは小型のドレイクが麻痺。

 しかし、大型のドレイクは咄嗟に地面を蹴りあげ、巨体に似合わぬ俊敏さで回避。


「いきないさい!【サモン・セバスチャン】!!」


 回避直後の隙を見逃さす、間髪入れずにベルの魔法が炸裂。頭の無い上半身だけの執事が現れ、ドレイクに猛攻をしかける――!!


 相変わらず不気味な光景だ。

 セバスチャンはドレイクの体に片腕でしがみつき、もう片方の腕でやたらめったら殴りつけている。恐怖。


 さらに、小型のドレイクのほうはラヴィが一瞬で距離を詰め、その刀を胸元に深々と突き立てた。


「クオォォッ……」


 弱々しい断末魔の声を上げ、ガクンと首が項垂れる。

 残すは、一体。


「グオォッ!! グオォォォォォッ……!!」


「うお、なんだ!?」


 セバスチャンの攻撃に怯んでいたドレイクが、急に轟音を響かせ威嚇するかのように大きく翼を広げた。

 その瞬間、明らかに空気が変わった。


 深緑色の瞳に、はち切れんばかりの血管が浮かび上がり、全身の筋肉が隆起する。口元からはメラメラと火の粉が散りつき、その熱で空気が揺らめいている。


 このデカいドレイクが、この群れの母親だとすると、旦那さんと子どもをいっぺんに亡くしたって訳だ。

 そりゃあ、ぶちギレるだろう。まさに鬼気迫る表情。

 ――だけど、俺たちだってやられる訳にはいかねぇっ!!


 ドレイクが再び飛び立とうとした瞬間、地面を蹴ろうとする足目掛けて【麻痺銃(パライ・ガン)】を放つ。グラリと巨体が傾き、追い討ちで【パライズ】。


「グオォォ……!? ググッグ――」


 全身が細かく痙攣。しかし、その目には消えない闘志というか、執念のようなものが見てとれる。

 そのあまりの気迫に、思わず足が震えた。


「ラヴィ、トドメを!!」


 俺は恐怖を隠すように叫んだ。


「了解……!」


 ザンッ――


 一筋の赤い線が走る。

 ラヴィの一撃はドレイクの喉を深々と切り裂いた。ドレイクはビクン、ビクンと数回跳ねたあと、完全に沈黙。決着だ。


 俺は、無意識のうちにドレイクから目を背けていた。段々曇っていくドレイク瞳を、見ていられなかった。


「……ッ! はぁ、はぁ……。 ナイスだベル、ラヴィ……」


「や、やりましたわね……!」


「……うん。 大きいの、倒した……!」

 

 二人はハイタッチを交わし、この勝利を心から喜んでいるようだ。

 でも、俺の心の中はほんの少し複雑だった。


 俺は冒険者として、クエストだからドレイクを倒しに来た。危険なモンスターがいるから、倒す。この世界では至って普通のことだ。


 でも、結果として俺はドレイクの群れ――恐らく家族を殲滅し、その結果として報酬を得るんだ。

 ……今までだって、同じようなことをしていたはずなのにな。なんで、今日はこんなに考えてしまうんだろうか。

 

 ……それは恐らく、あのデカいドレイクのせいだ。俺はあの、ドレイクの目に――気迫に負けたんだ。

 生きようとする、倒そうとする、鬼気迫る執念に気持ちで負けたんだ。


「……? マヒルさん、どうしましたの? 疲れちゃいました?」


 一人浮かない顔をしている俺に気付いたベルが声をかけてくれた。


「マヒル殿、拙者がおんぶ、する?」


 続いてラヴィも聞いてきた。

 こいつらは、この感覚が当たり前の世界で生きてきたんだよな。ちくしょう、強ぇわ。


「……うん、大丈夫だよ」


 自分でも驚く程、情けない声が出ていた。

 よろよろと立ち上がると、ベルとラヴィが俺の腕を引っ張って無理矢理肩を組んだ。


「え? おい、何してん――」


「ほら、早く行きますわよ! 全く、ワタクシがいないと駄目なんですから」


「うん。 拙者がいないと、駄目なんだから」


「いや、別にそこまで疲れて――いや、うん。 ありがとう」


 そう言いながら、俺たちは肩を揃えて三人で馬車へ向かう。これが、初めて受けるCランクのクエストの結果だ。


 冒険者として高みを目指すには、まだまだ道のりは長く険しい。そんなことを痛感させられる戦いだった。

 ……それでも、このパーティーだったら。この仲間たちとなら、希望はある――そう思えた。

 うん。まだまだ、俺も成長しないとな。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(__)m

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