119話 峠の戦い②
「クエエェェェッ!!」
威勢のいい鳴き声を上げて、やや小柄なドレイクが二体突っ込んできた!
恐らく、さっき倒したやつの子どもだろうか?少し残酷かもしれんが、冒険者として見過ごすわけにはいかない。まとめて痺れてくれ!
「【麻痺連鎖】!!」
バリィ、バリィ、と稲妻エフェクトがドレイクたちを駆け巡る。
しかし、危機を察知したのか一番でかいやつは上空に飛んで回避。【麻痺銃】の射程からも外れてしまった。
「ラヴィ! 今のうちに小さいやつを仕留めるぞ! ベル、魔法の準備は!?」
「いつでもいけますわ!」
ベルが応え、魔導書のページがバラバラとめくれる。
ラヴィは既にドレイクとの間合いに入り、居合の構えを取っていた。
「【羅刹……!】」
瞬間――ラヴィの姿が一瞬にして消え、次に現れたのは刀を振り払った後ろ姿だった。
ドレイクの首がボトリと落ちる。ラヴィ、圧倒的強さだ。
「よし、そのまま――」
「グオォォォォッ――!!!」
咆哮。
空の彼方から、轟音と激しい熱気をまとって大型ドレイクが旋回してきた。深緑色の瞳は、怒りの限りに血走っている。
恐らく、母親だろう。
旦那と子どもを倒された怒りか、クチバシのように尖った口は赤熱し、火の粉をちらつかせる。
あれは、まさか――
「ぶ、火炎の息か!? やばい、みんな――」
俺がそう言いかけたところで、ベルがずいっと前に出た。
魔力の奔流に、ご自慢のツインテールがざわざわとはためいている。
「みなさん、ワタクシの後ろに下がって……! 【暴波泡】!!」
ベルが展開した魔法陣から、巨大な泡が三つ現れた。
以前はバレーボールサイズだったのが、今やバランスボール並みのデカさだ!それに、前みたくボヨンボヨンと跳ねることなく、空中に漂っている。
次の瞬間――地面すれすれの低空飛行をかます巨大ドレイクが大きく一息吸い込む。
空気が揺れ、一気に白っぽく発光。直後、ボガアァッ!という爆発音のような轟音が響く。
まさに、大型の火炎放射器。離れていながらも肌にチリチリと熱を感じる。
俺もラヴィも、思わずベルの後ろにすがる形になったけど……大丈夫だろうなぁ!?ベル!!
直後、火炎の息が【暴波泡】に直撃……!
ドバァン、ドバァン、と激しく泡がはじけ飛ぶ。魔力で練られた飛沫が、ドレイクから放たれた熱線をバチバチと受け続ける!
視界が歪み、ジュワジュワッと蒸気が沸き上がる。しばらくして音が止み、視界が開けた時には巨大ドレイクは再び空高く飛び上がっていた。
「べ……ベルぅ! お前、火炎の息を受けきったぞ!! すっ……げぇぇぇ……!! ――ん?ベル……?」
華麗に水のバリアを貼ったベルだったが、両手をまっすぐ突き出したまま、固ぁく目をつぶっている。
もう、どうにでもなれぇ!みたいに現実から目を背けるかのように、きつぅく目を閉じている。
「ベル殿、すごい! 水の花火みたい、だった……!」
「おい、ベル……?」
「へっ!? え、あ、ああ、そうですわよ! ワタクシにできないことはないんですわ!」
ベルは焦った様子で威勢を振りまいてはいるが……
「ベル、お前……何の確証も無しに『ワタクシの後ろへ!』とか言ってたの……? あんなに頼りになりそうな雰囲気を出してたのに……?」
「えっ、まあ、あれですわ! 結果オーライってやつですわ!! それにしても、改めてワタクシの魔法の凄さが証明されましたわね!」
なんかもう、逆に堂々としだしちゃった。
まあ、結果オーライには違いないんだけど、結果が違えば大惨事だからな?全く、ノリと勢いでどうにかしようだなんて誰に似たんだか。
ああ、俺か。
「まあ、とにかくこれで火炎の息対策はできた! あと二体、気を引き締めていくぞ……!」
「了解……!」
「やってやりますわぁっ!」
俺たちは再び戦闘態勢をとった。
いくら火炎の息対策ができたとはいえ、相手は素で強い。単純なフィジカル勝負じゃ勝ち目は無ぇから、悪ぃけど俺の土俵で戦ってもらうぜ……!
ドレイクたちは揃って旋回し、距離を保ちつつ俺たちの様子を伺っているようだ。最初の麻痺を警戒しているあたり、知能もあるようだ。
――しかし残念。入ったぜ、射程距離に……!!
「撃ち抜け!【麻痺銃】!!」
間髪いれずに二発目も発射!稲妻エフェクトをまとった麻痺の弾丸が空を走る。そしてドレイクたちの旋回軌道上へまっすぐに進み、見事に命中――!!
「グオォッ!?」
翼に麻痺を受け、不安定な飛行を続けるドレイクたち。バタバタと慌ただしく体を動かすも、お互いにぶつかり合ってそのまま墜落。
好機到来……!
「二人とも、いくぞ! ここで決着だっ!!」
俺の掛け声に、ベルとラヴィも構える。
全く、ピュンピュン飛び続けやがって……!
だが、ようやく俺たちの土俵に引きずり落としてやった。ここからは一方的に、俺たちのターンだ!!
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