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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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116話 ベルちゃん成長譚②

 迫りくる一体のリザードマン。

 対するは、余裕の笑みを浮かべる我らがベルフィーナ嬢。さっきまで泣きべそかいて逃げ回っていた姿はなんだったの?幻?


「お~っほっほっほ! さあ、哀れなトカゲちゃん? ワタクシの驚異の魔法にひれ伏すが良いですわっ!」


 うん、さっきまで泣いてたやつが言うセリフじゃねえ。

 ベルはそう言うと、自身の魔導書であるグリム・ド・ベルをリザードマンへビシッと向けた。

 おお、なんかかっこいいぞ、ベル!


「轟けですわ!【高貴なる咆哮(ロイヤル・ハウル)】! お~っほっほっほ!」


 で、出た!ベルの必殺魔法、【高貴なる咆哮(ロイヤル・ハウル)】だ!あの高笑いを聞いた敵は、萎縮してしまうという恐ろしい魔法だッ!!


「――っておい!! お前、いつもの高笑いするだけの魔法じゃねえかっ!!」


「フフン、どうかしらね?」


「なっ……」


 何故だ?何故、ベルはあんなに余裕そうなんだ?

 さっきの魔法だって、そもそも魔法と呼べるかも怪しい代物だし、敵を"ちょっと萎縮させる"っていうしょっぱい効果しかないはずだ……!


「……! マヒル殿、あれ!」


「どうしたラヴィ! って、リザードマンの動きが……止まった?」

 

 なんだろう、さっきまでバタバタと走り迫っていたリザードマンは、ピタッと足を止めてその場に棒立ち。おまけにベルのことをジッと見つめている……?


「おい、どうしたんだベル! なんか、見てるぞあいつ!」


「お~っほっほっほ! これこそが、進化したワタクシの魔法ですわ! 萎縮させる効果はそのままに、ワタクシの華麗な姿を注視するようになったのですわ!」


 はい、終わりです。

 解散解散。なんだよ、注視させるって。

 要するに、ベルに標的(タゲ)が向くってことだろ?防御力のある重装兵(タンク)な訳でもないのに。ダメじゃん。ダメじゃん……!


「おい、ラヴィ!帰るぞ! もう、あんなやつ知らん!」


「……待って、マヒル殿。 なんだか、不思議な感じ。 気持ちが、フンフンする……!」


「お、おい、ラヴィ? お前までおかしくなっちまったのか? フンフンするって何――」


「それこそが……! ワタクシの魔法の更なる力、ですわ! なんとワタクシの【高貴なる咆哮(ロイヤル・ハウル)】には、仲間の士気を上げる効果がついたのですわ!」


 ベルはまるで勝ち誇ったかのように、大袈裟に間を取りながら説明する。普通に話せ、普通に。

 つまり、バフ効果がついたってことか。効果がどれくらいのものか分からんが、明確にハズレ魔法ではなくなったという訳か。


「さらに続けていきますわ! 久し振りの視線をあなたに!【冷厳なる微笑(クリスタル・アイズ)】!!」


 そう言うとベルは、世にも冷たい、心の底から蔑むような視線をリザードマンへ送った。

 で?


「おい、俺も忘れかけてたぞ、その魔法! 確か、えぇ~っと……」


「この魔法を受けた相手は、いたたまれない気持ちになる、ですわ!」


 あぁ、そうそう。そうだったわ。聞いてるこっちがいたたまれない気持ちになる、明確なハズレ魔法だったわ。んで、ここでこの魔法を使ったということは、付随効果が付いたってことかな?


「それで、どんな効果があるんだ? なるべくサッサと教えてくれい!」


「なっ、なんだかカチンときますわね!? まあ、いいですわ。 ワタクシの視線を受けた相手は、物理と魔法に対する防御力が低下しますわ!!」


「……へぇ――ってマジか! それはちょこっと凄いかもだな!」


「ベル殿、器用! 何でも屋さん!」


「フフン、そうでしょうそうでしょう! もっと褒めてもいいんでしてよ?」


 ベルときたら、もう、すっごく嬉しそうにしている。満面の笑みってやつだ。

 まあ、そのせいで大事なことを忘れているんだけどな。


「それで、ベルよ。 あいつをどうやって倒すんだ?」


 ベルの背後から、バタバタと近付く影。

 ……得意気になりすぎて、モンスターから完全に目を離しちゃってるよこの子。


「へ? って、きゃあぁぁぁ!」


「キシャアァァァ!」


「【パライズ】」


 俺は準備していた【パライズ】を当然のように放つ。だって、こうなる未来しか見えなかったもの。

 リザードマンは見事に麻痺って、走ってきた勢いをそのままに――


「はぶんっ!?」


 ベルに突撃。

 ごめん、そこまでは考えてなかったわ。


「い、いやぁぁ! とってですわ!どけてですわ!は、早くぅ!!」


「……ラヴィ、助けてあげなさい」


「了解」


 ベルの上にのしかかるようにして痙攣するリザードマンを、ラヴィが一撃の元に両断した。

 ゴロリと転がるトカゲの生首に、ベルが小さく「ひいっ」と息を呑む声が聞こえた。 


 今回のクエストで倒したリザードマンは、十三体。クエスト目標である五体を大きく越えた成果だ。

 しかも、その全てをラヴィが倒したというのは本当に頼もしい限りだ。


 ――しかし、その代償はあまりにもでかかった。俺は、敵の返り血で汚れきったケモミミ娘と、爬虫類臭い金髪ツインテールを街まで送り届けなければならかった。


 ああ、ほらもう、皆の視線が痛い。俺なーんにも悪いことしてないのにね。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

感想、ブクマ等お気軽にいただけたら励みになります。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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