113話 俺たちゃCランク冒険者
激動の満フェスが終わってから数日後。
朝目覚めると、俺の部屋のドアの隙間から見慣れた封筒が差し込まれていた。
ギルドの紋章が刻印された封筒……こいつぁ、まさか――!
俺はすぐさまみんなを呼び集める。
ーーー
『冒険者ランク昇格の通知』
ギルドの決定により、以下の者をCランク冒険者へ昇格いたします。
・マヒル=パライザー
・ベルフィーナ=エーデルワイス
・ラヴィーナ=シルヴァリオ
詳しくは、冒険者ギルドまでお問合せください。
ーーー
「――と、いうわけなんですけど……マジですか?」
「えぇ、マジです」
淡々とそう答えるのは、クールな受付嬢ことセラ姐。
俺たちは何かの間違いではないかと、慌てて冒険者ギルドまで来たわけだが……どうやらマジらしい。
「で、でも、Cランクと言えば、一流冒険者のボーダーラインですわよ!?」
「うん……! 拙者たち、一流?」
「……まあ、一流かどうかはさておいて……普段からのギルドへの貢献度や、先の牛追い祭りでのスカーブルズ討伐、ひいては合同パーティーとはいえオメガゴーレムの討伐という功績があります。 Cランク冒険者としての素質は、充分にあるかと思いますよ」
そう言ってセラ姐はニッコリとほほ笑んだ。
ベルも言ってたが、この世界の冒険者はC級からが一流冒険者とみなされ、クエスト報酬も、危険度も段違いに跳ね上がるそうだ。
「あれ? でも、C級に上がるには試験に合格しないといけないんではありませんの?」
「えっ、そうなのか?」
「……はい、確かに通常であればC級クエストに該当するものを昇級試験としてお出ししておりますが、ギルド内でもオメガゴーレムを倒したという実績や、Cランク冒険者の方からの強い推薦もあり、特例で昇級といたしました」
「Cランク冒険者の……? それって、まさか――」
「はい。 以前合同パーティーを組まれたクルスさんです。彼曰く、『パライザーたちがいなければゴーレムは倒せなかったし、我も死んでいただろう!』とのことです」
はあ、全く……クルスのやつ余計なお節介を……
今度酒でも奢ろう。
「ともかく、名実ともにあなたがたはC級冒険者となりました。 これからもその名に恥じぬ活躍と、ギルドへの貢献を期待いたします。 ……ってね。応援してますよ」
「……! はいっ!」
この日、俺たちは全員そろってC級冒険者となった。
パライジング・グレイスも、晴れて一流冒険者パーティーとなったわけだ。
これから先、一体どんな試練が待ち受けているかは分からない。だが、痺れるような冒険が待っていることだけは確かだ――!
* * *
「……で、C級になって初めてするのが「対抗戦」ですの……?」
「まあな。 だってほら、俺たちがC級になったのに、対抗戦のランク――つまりパーティーとしての評価が低かったら、なんかかっこ悪いだろ?」
「……まあ、それは確かにそうかもですわね」
「だろ? それに、丁度これから試合できるみたいだし、腕試しも兼ねてやったろうじゃねえか」
「うん、やったる……!」
そう言ってラヴィはグッと拳を強く握る。
なんか、一番乗り気なのはこいつかもしれんな。獣人だからか分らんが、闘争本能の塊みたいな部分があるんだよな。うん、元気があっていいことだ。
「よし、それじゃあ早速……いくぞっ――!」
――俺たちは戦った。そして勝った。
勝って勝って勝ちまくった。
修行を経て更に強くなったラヴィは、並みの冒険者なら一撃ノックアウト。さらにはベルも魔法で活躍を見せる。
俺は当然、麻痺、麻痺、麻痺――
斧を使う敵がいれば、斧を振りかぶった所で麻痺させ、落ちた斧が頭に直撃。珍しく弓矢を使う敵がいれば、矢を放つ直前に麻痺させ、盛大に見方に誤射。
全ての相手を麻痺させまくり、言うなればこれは麻痺無双!勢いに任せて、連日連夜闘技場に入り浸り、向かうところ敵無しの快進撃を続けた――!
もちろん、無観客試合だけど。
そして――
「お、おめでとうございます。 あなたたちパーティーは、Cランクへの挑戦権を得ました」
「よしゃあい!!」
セラ姐は、信じられないというような顔で俺たちに告げる。俺たちパライジング・グレイスは順調にDランクパーティーに昇級し、なおも連戦連勝。ついに、Cランクへ挑むこととなった。
どうやらCランク以上は、ランク毎に昇級戦というものがあるらしい。同じく昇級を目指すもの同士で戦い、勝った方が無事昇級というわけだ。
「全く、おかしなスピードでランク上げないでくださいよ……事務処理が追い付きません」
「セラ姐、それって褒めてます?」
「……まあ、三割程度は。 ともかく、昇級戦は明日です。 これまでとは比べ物にならない戦いが待ち受けているはずです」
ゴクリ。
セラ姐があまりにも真剣な眼差しでそう言うもんだから、思わず唾を飲む。
ゲームで言うところの、ランキングの大台に乗るってとこか。本音を言えば、多少は緊張する。
でも――
「俺たちパーティーなら、きっと大丈夫です。 多分。 恐らく」
「ちょおっ!? そこはビシッと言ってくださいまし!? ワタクシの魔法で一撃ですわ!」
「……マヒル殿、締まらない。 拙者の刀が、血を欲してる」
二人からギャアギャア言われながら、セラ姐は一人呆れ顔。え、ていうかラヴィなんか恐いこと言わなかった?妖刀かな?
……まあ、なんだっていいか。
Cランクだろうがなんだろうが、かかってこい!みんなまとめて痺れさせてやるぜっ――!!!
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