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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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109話 襲来、グレーターデーモン

 グルバトまで残り三日。罰ゲームみたいな食材を使って、起死回生のカレーを作ると決めた俺たちは連日野営して、朝は食料集め、夜は試作品作りに奔走していた。

 

何しろ試作品の数が多いから、食材はいくらあっても困らない。そんなこんなで俺たちは、今日も今日とて草原を駆け回る――!


「いったぞ、ラヴィ!」


「了解! ふんっ……!」


 ラヴィの神速の居合い切り、羅刹が炸裂。散々逃げ回っていたホーンラビットの頭がスパンとはねる。今日は、ウサギカレーだ……!

 ……今日もカレーかぁ。


 日が暮れる頃には無事解体も終わり、早速カレー作り。料理が得意じゃない俺でも、毎日毎日、何度も何度も作っていればさすがに慣れた。三十分程で今夜の試作第一号の完成だ。


 こっちの世界では今のところ米を見てないから、ナンの変わりにパンでいただくスタイルだ。俺は断然米派なんだけどなぁ……


「うーん……少し淡白過ぎる、かしら」


 仕事を終えてやって来たセラ姐は、カレーを一口食べてそう呟いた。彼女は忙しいギルドの仕事をこなしつつ、時間を見つけては様々な調味料や材料の調達をしてくれている。


 そして夜になると必ず試作品を食べてくれる。よほど忙しいのか、目の下にはドス黒いくまができていたけど言及しないでおこう。目付きの悪いパンダみたい。


「そうですわね……これなら、前回の《コッコ》カレーのほうが良いですわ!」


 ベルがうーんと首をかしげながら言った。コッコというのは、もう、見たまんまニワトリ型のモンスターだ。


「うん。物足りない、かも」


「まじかぁ~……ウサギ肉、面白いと思ったんだけどなぁ……」


 俺は何カレーにするかという強大な壁にぶつかっていた。ひとえにカレーといっても種類は様々。考えつく限り、ビーフ、ポーク、チキンと試しているが最高の答えには辿り着けていない。


 カレー作るのも小学生以来の俺からしたら、ベストな組み合わせを考えるのなんて無理ゲーすぎる。カレー作り、奥が深すぎるってぇ…… 


「他に試してないのは……ヒツジとか、カエルとか……?」


「「カエルぅ!?」」

 ベルとセラ姐がハモる。


「な、なんてことを言うんですの!? カエルを使ったカレーなんて聞いたこととありませんわ!!」


「いや、そもそもお前カレーっていう料理知らなかっただろ」


 セラ姐はハァとため息一つ、眉間にシワをよせる。


「マヒルさん、さすがにそんな奇抜な料理作るのでしたら、帰りますよ?」


「"カエル"だけにってことですか?」


「なっ、違っ……!」


 セラ姐の寒ぅいダジャレに風邪を引きそうになりながらも、俺はぼんやりと考える。

 一体何を使えばいいんだろうか。異世界カレーとか言ってみたはいいものの、全然だめだ。


「全部」

 ラヴィが呟く。


「ん……?」


「拙者の村では、余った肉、野菜……色んな食材、全部入れて煮込む料理、ある。手間はかかるけど、すっごく美味しい」


「フフッ、なんだよその豪快料理。 ……でも、悪くねぇかもな」


 全部、ぶちこむ。

 実に単純明快、シンプルさの極みだ。でも、悪くない。それどころか、むしろ良い……!

 俺の疲弊しきった料理人魂に、再び熱い火が灯るのを感じた。いけ、マヒル!心のコンロに火をつけろ……!


「……よっしゃ! 俺は今までの食材使って試作品作るわ! お前たちは、先に休んでてくれ」


「……でも、マヒルさん、いつも夜遅くまでカレー作ってるじゃないですの? ゾンビみたいな顔しながら」


「ゾンビは余計だっつうの。 いいんだよ、俺はバトルで体力使ってない分、こっちで頑張らないとだから。 セラーナさんも早いとこ――セラ姐……?」


 セラ姐はぼんやり虚空を見つめたまま、微動だにしない。スプーンをすくったまま、まるで時が止まったかのように――


「……セラーナさん?もしかして――」


「目を開けたまま、寝てますの……?」


「すごい。器用」


 遂に限界を迎えたのだろう。ただでさえギルドの仕事は忙しいはずだ。朝早くから夜遅くまで働いて、食材調達やカレーの試食まで……本当にお疲れさまです。

 ……とはいえ、このまま外に置いとくのはさすがにだめだよな。


「ベル、ラヴィ。 こちらのお方を丁重に運んでさしあけげなさい」


「な、なんですのその喋り方は。 とりあえず行ってきますけど、マヒルさんは本当に大丈夫ですの?」


 セラ姐を肩にかつぎながら、ベルとラヴィは心配そうに俺を見つめる。


「大丈夫だって! なんでそんなに心配してんだよ」


「……だって、目の下にドス黒いくまができてますわよ? まるでやる気のない《グレーターデーモン》みたいですわよ」


「誰だよソイツ」


 どうやら俺は、知らないうちにグレーターデーモンになっていたらしい。まじで誰だよ。


 っていうか俺もくまができてたのか。でも、今は不思議と疲れを感じない。これが、カレーハイってやつか……!そんなもんがあるのか知らんけど。さあ、作るとしますか……!最高に痺れるカレーを……!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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