101話 VSオメガゴーレム
俺たちは岩陰にかくれてしゃがみこみ、コソコソと作戦タイム。いかにも物理の効きが悪そうな相手ということで、メインアタッカーはうちの箱入り娘、ベルちゃんだ!
作戦はいたって簡単、俺たちがなんとか頑張って、ベルになんとか倒してもらおうって寸法さ。簡単だろう?
「――という感じにやろうと思うんだ。 できそうか?」
「できるかぁ!ですわ!」
「……マヒル殿、無謀」
「えぇー? これしかないと思うんだけどなぁ……」
我がチームからは、どうにも酷評のようだ。ガレオとマルケスも、芳しくない表情を浮かべている。そしてクルスはというと――
「いけるんじゃないか?」
「えぇっ!?」
俺を含めて五人が驚きの声をあげる。え、いけんの?
「作戦としてはザッとし過ぎているが、ゴーレム系にはやはり魔法攻撃が有効だ。 ベルフィーナ嬢の力を借りればなんとかなるかもしれない」
「ほ、ほれ!言うてるぞ! 魔剣士様のお墨付きだ!」
「えぇ、でも、そんな……」
とか言いつつ、ベルはまんざらでもなさそうに身をよじる。早く決めてくんねーかなー。
「……でも、ワタクシの魔法でいいんですの?」
「へ?なんで?」
「いえ、ワタクシの魔法……つまりセバスチャンの攻撃ってことですわよね?」
「あ゛っ……!」
そうだった……!ベルの最大火力はサモン・セバスチャン。執事風の何かを召喚して殴らせる、ゴリッゴリの"物理"攻撃だ。
終わったぁ!なにもかも……!ベルの魔法なんて、魔法とは名ばかりの高笑いとか冷たい微笑みとか、泡がぼんぼん弾けるくらいで――いや、待てよ。
「あるじゃかいか、とびっきりイカれたやつが……!」
* * *
俺たちは再び、オメガゴーレムと対峙する。
岩の巨人というより、鋼の巨兵。その体は鈍い光沢のある金属質で、鎧とロボットの中間みたいな見た目をしている。
改めて思う、デカい。そしてカッコいい。めっちゃカッコいい。だが、倒さねばならん。
「おい、オメガゴーレム! すまないが、人類の安寧の為にお前を倒す! 大人しく、金属片になるがいい……!」
『グオォ……グオォォォォンッ――!!』
俺の挑発が効いたのか、はたまた自分の動きを止める厄介な相手と認識されているのか、オメガゴーレムが唸りをあげる。その背後に、コソコソと忍び寄る影。
「言っただろ、デカブツ。お前の弱点は、そのデカさだってな。 今だ、やれぃッ――!」
俺の号令と共に駆け出したのは、ガレオとマルケス、そしてベルとラヴィ。
「うおぉぉ、【ハードブレイド】!!」
「くらえ、【双連斬】!!」
ガレオの大剣による重厚な一撃と、マルケスの双剣による怒涛の連撃が右膝裏を――
「いきなさい、【サモン・セバスチャン】!!」
「いざっ……【羅刹】!!」
ベルの召喚したセバスチャンによる強烈なラッシュ、ラヴィの居合い切りによる神風のような一閃が左膝裏を――
同時に直撃――!
『グオォッ!?』
オメガゴーレムは、ガクンッと体勢を崩し巨体がのけ反った。これぞ、名付けて「猛烈膝カックン」だ!
「そしてそのまま、【パライズ】ッ!!」
『ググ……グォグォグォグォ――』
うわぁ、バグった機械みたいになった!でも、この体勢で動きを止められたら、どうすることも――
否、それでもなお、巨兵は堕ちず。
もう少しでブリッジをしそうな状態のまま、ピタリと止まっている。なんで?物理法則とかないの?
「まずいぞ、パライザー! このままでは、弱点の頭まで届かない!」
クルスが叫ぶ。分かってる、分かってるが!こっからどうしろってんだ!
バチィッ――
「!?」
俺の相棒、スタン・ブレイカーが唸った――気がした。それはまるで、「俺がいるだろ?」とでも言いたげに。
その瞬間、カチリと俺の中で何かがはまった気がした。
「ふふ、そうだな、そうだよな……クルスぅ!俺の雄姿を目に焼き付けるんだな!」
俺はそう叫ぶと、カシャカシャッとスタンブレイカーを展開。いこうぜ、相棒……!
「【リミット・パライズ】ッ!!」
リミット・パライズ。身体機能を麻痺させ、持てる力以上を強制的に引き出すという荒業だ!
俺の体の中に電流が走ったような衝撃が走る。でも、不思議と痛くない。むしろ、心が、体が、弾むように軽いッ――!
「おぉ……りゃあッ!」
「速っ――」
大地を蹴り、高く高く飛び上がる。スタンブレイカーはガリガリとゴーレムの装甲に打ち付けられ、衝撃を溜めて青白く帯電、スパークする。
さらにオメガゴーレムの体を二、三度蹴ってもっと高く。遂に頭部へと到着した。
「よう、見えてるか? 俺のこと」
『グォグォグォグォ――』
「ははっ、何言ってるか分からん。 唯一分かることは、お前がダウンすることだッ!轟け【超電撃滅】!!」
ドガアァンッ!!と爆音が轟く。
直後、オメガゴーレムの体がグラリと傾き、天を仰いだまま地面に倒れ込んだ――!
軋むッ!体がッ!焼けるようだ……!でも――
いくぞ、このまま決めてやる――いや、決めてやれ、ベル……!
「後は……ワタクシが……!」
ベルは深く息を吸い込むと、一際大きな魔方陣を展開した――
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