第66話『温泉と爆笑とリュミエルと』
俺たちは、壮絶なバトル(のようなドタバタ劇)を終えて、いつもの拠点へとワープして戻ってきた。
「はぁ〜……やっぱ地面って最高だな……」
地面に大の字で寝転ぶ俺。なんかもう、空飛んだり、魔王軍の幹部と笑いながら魔法撃ち合ったり、色々あって脳が疲れてる。
「……よく地面を褒められるよね、あんた」
シエルが呆れながらも、そっと水筒を差し出してくれる。や、優しい……!
「お前、ほんとに地面フェチなんじゃない?」
突然、空から落ちてきた声とともに、リュミエルが俺の上にドサッと降ってきた!
「ぐえっ!背骨が『さようなら』って言った気がした!」
「ただいま〜、って感じで派手に登場したのに!もっと歓迎しなさいよー!」
ふくれっ面のリュミエルを背中に乗せながら、俺はぎゅうぎゅう言っていた。おかえり!まじで背骨が心配になる重さだよ!
「それで?私がいない間に、また何かやらかしたの?」
「それがさぁ……魔王の幹部全員集合して、バトルしながら大運動会してさ……」
「……説明が雑すぎて逆に分かる気がしてきたわ」
「でもまあ、勝ったってことで、今はご褒美タイムってわけよ」
シエルが笑顔でにやりとし、旅館のチラシを取り出した。
《本日開湯!冒険者限定・全裸で勝負!温泉射的大会!》
「……全裸……?」
「最後の単語の破壊力がすごすぎる!」
「いや、ちゃんとバスタオル着用だよ!たぶん!」
シエルが曖昧なフォローをする中、リュミエルはチラシを奪って即決。
「行こう。今すぐ」
「早いな!?リュミエル、温泉好きだったっけ?」
「え、あんた、温泉の水質による肌のケア効果なめてるの? しかもバスタオルありなら、むしろ勝負よ」
「何と!?」
***
温泉旅館に着くと、案の定、変なイベントが始まっていた。
「ルールは簡単!温泉に浮かぶ的を、湯けむり越しに射的で撃ち抜け!外したら、バスタオルがちょっとずつ……ぴゅふっ、キャ〜〜〜!」
司会の女将さん(おそらく元忍者)の説明が終わるや否や、リュミエルとシエルはやる気満々でライフルを手に取っていた。
「……俺は応援係でいいかな……?」
「甘いわね」
「逃がさないよ?」
なぜか両サイドから肩をつかまれ、俺は自動的に「混浴射的チーム戦」へと巻き込まれていった。
温泉の湯けむり。照れる視線。的を狙うリュミエル。ニヤリと笑うシエル。
的に当てると、まさかの湯けむりが増えるという謎仕様。
外すと逆に湯けむりが減る!
「……なにこのデスゲーム」
「安心して。私たち、百発百中だから♪」
そう言って、にこにこ顔で連射していくシエル。
いや、にこにこしながらライフル乱射って、いろいろ怖いんだけど!?
結果――
「俺、今日だけで寿命3年縮んだ気がする……」
「なに言ってんの、人生って毎日がサバイバルじゃない?」
そう言いながら、リュミエルが俺の背中をバシッと叩いた。
「いてて!寿命さらに1年削れたわ!」
「ふふっ。まあ、楽しかったならいいじゃない?」
シエルが湯けむりの向こうで、静かに微笑む。
なんだかんだで、笑いに包まれた日常だった。
でも、俺たちは知っている――次の波乱は、すぐそこまで来ているということを!
だってこの世界、落ち着いた瞬間がないんだもん。