第5話『美少女コスプレ大会と、神の雷』
「カケルくん!村の祭りでコスプレ大会があるって!」
朝からテンション高くミナが告げる。村の子どもたちから老人までが盛り上がる、一年に一度の「変身祭」らしい。
「コスプレって……異世界でもそんなノリあるの?」
「あるよ! 私はネコミミメイドにするつもり!」
「ちょ、即答!? なにその安定の可愛さ……」
すると背後からズイッと何かが迫ってくる。――神の気配だ。
「ふふふ……私も参戦するわ。せっかくだから“巫女服”にしてみたの」
振り返ると、深紅のミニ巫女服姿のシエルが、背中に扇子を背負ってどや顔していた。
「似合ってるけど……露出、高っ!?」
「ふふっ、“神”は布面積に縛られないのよ」
大会当日、村の広場にて。
さまざまな格好をした参加者たちで溢れる中、ミナとシエルは周囲の視線を総取りしていた。
「カケルくん、見ててね!」
ネコミミメイドのミナがポーズを取れば、
「どう?神の威厳も可憐さも兼ね備えた、この“絶対神巫女スタイル”!」
シエルが謎の自信を炸裂させる。
――そして問題はここからだった。
「カケルさん、最後のサプライズ枠としてあなたも出場してください」
実行委員に無理やり押し込まれたカケルが着せられたのは――
「なんで俺だけバニーガール!? どんな性癖してんだこの村の連中!」
つるつるのタイツ、ピッチリスーツ、うさ耳装備のカケルが登壇するやいなや、村人は大歓声。
「おおおおおっ! なんという破壊力!」 「これは……これで“アリ”かもしれん!」
「アリじゃねえよ!!!」
しかもカケルの焦りと羞恥がピークに達した瞬間、ワープが暴発。
「シュンッ!」
「ま、またかよおおおおおお!!!」
――次の瞬間、カケルが飛ばされたのは、
「え、ここ……シエルの更衣室!?」
鏡の前で脱ぎかけていたシエルとバッチリ目が合う。
「……」
「……ごめん! 今のは完全に不可抗力!!」
ビリビリビリビリッ!!!
激しい雷がカケルの体を貫いた。
「このバニー神経野郎っっ!!」
その夜、カケルは例によって外で寝袋生活。
「俺、ただの一般人だったはずなのに……なんで異世界でバニー着せられて雷落とされてんだ……」
ため息まじりに空を見上げると、星空の下にふわりとシエルが現れた。
「でも……楽しかった、でしょ?」
「……まあな。お前らが楽しそうだったから」
「……なら、よし」
ぽつりとつぶやいて、シエルは隣に腰を下ろす。
静かな夜。隣から感じる体温が、妙に近くて――
「おやすみ、カケルくん」
「……お、おう。頼むからワープは……すんなよ?」