第4話『温泉と、女神の計算違い』
「え、温泉って言ったら……アレだよな?」
森を抜けた先、なぜか温泉宿を発見したカケルたち一行。もちろん、彼が意図してたどり着いたわけではない。
「うん、ここは“絶対にリラックスできる場所”って思い浮かべたら飛んできたの。……まさか温泉とは思わなかったけど」
「いや、わざとだろ、お前」
女神シエルは涼しい顔でうふふと笑う。
「カケルくん、そんなに私と混浴したいの? …ちょっとはしたないけど、まあ……いいよ?」
「してねぇわ!!」
結局、男女別の温泉ということで話はまとまり、それぞれ湯へ向かう。
カケルはのんびり湯船につかっていたが……数分後。
「ふぅ〜〜……やっぱ風呂って最高だな〜」
その時だった。
「きゃっ!? な、なんでカケルくんがこっちにいるの!」
ばしゃっ!
「わっ! ちょっ、シエル!? なんで女湯に俺が……」
「まさか……またワープが!?」
そう、カケルは“落ち着く場所”を再イメージしてしまい、シエルのいる女湯へ無意識ワープしてしまったのだった。
「こ、これは事故だって! 完全に予期せぬバグで!」
「……ちゃんと説明してもらおうか、カケルくん。どこを“落ち着く”と思ったのかな?」
シエルの表情が引きつり、カケルの視線が一瞬“揺れるもの”に向いたのが見逃されなかった。
その瞬間――
「うぎゃあああああっ!!」
湯の中で爆発音とともに、カケルが空中ワープされ、次に目を覚ましたのは――
「……ここは……天井が見える。痛ぇ……背中焦げたかも」
天井には怒りのオーラを纏ったシエルの顔。
「カケルくん、これは罰として、今夜は“外で”寝てね」
「せ、せめて虫除けの加護だけ……ください……」
夜、カケルは満天の星空の下で反省しながら寝袋にくるまっていた。
「……でも、あれは事故だったんだよな。うん、不可抗力不可抗力」
「その“不可抗力”って言葉、明日三百回言ったら許してあげる」
耳元に現れたシエルが微笑んでそう告げた。
「ちょ、見てたの!? というか、なにその罰ゲーム!」
そんなこんなで、今日も異世界ワープ生活は下ネタ(というか事故)とともに、ちょっとずつにぎやかになっていくのだった。