第3話『村の夏祭りとワープ地獄』
ミナの案内でやってきた村は、ちょうど夏祭りの準備で賑わっていた。
「これが異世界の夏祭りか……なんだか懐かしいな」
カケルは目を輝かせるが、足元の女神シエルはそわそわしている。
「カケルくん、油断しないでね。あなたのワープ能力がこの人混みで暴走したら……」
「いや、もう慣れたって!」
しかし祭りの夜、予想通り事件は起こった。
「よし、金魚すくいに挑戦!」
カケルが金魚すくいのポイを手に取った瞬間、
「シュンッ!」
突然、光に包まれ……
「うわあああ! ここはどこだ!」
カケルが着地したのは、なんと村の外れの巨大なカボチャ畑のど真ん中だった。
「おい、今夜は夏祭りだぞ! どうしてこうなるんだよ!」
「もしかして、目的地に『金魚すくいの屋台』って具体的に指定しないとだめなのかも」
シエルは申し訳なさそうに頭をかいた。
カケルが慌ててワープを使い直すと、
「次こそは!」
――シュンッ!
「お、今度は……花火大会の会場?」
そう思ったのも束の間、近くの草むらからイノシシが飛び出してきて、
「うわっ!?」
カケルは思わず叫び声を上げた。
数秒後、ミナとシエルが駆けつけ、
「大丈夫!?」「けがはない?」
カケルは息を整えながら苦笑い。
「もうワープのせいで祭りどころじゃねえよ……」
それでも三人は、あきらめずに祭りを楽しもうと試みる。
シエルが「たこ焼き食べよう!」と誘えば、
「たこ焼き屋さんも草むらにいる気がするけどなあ……」
カケルは苦笑いを浮かべた。
最後にミナが、
「ねえ、カケルくん。こんなトラブル続きだけど、一緒にいると楽しいよ」
ぽっと頬を染めるミナに、カケルも目を合わせて照れた。
「俺も……なんだかんだで、楽しいかもな」
ワープで迷子な異世界生活は、今日もドタバタで温かい。