第2話『女神シエルと森のキャンプ!?』
森の中、相変わらずカケルは行きたい場所に行けないワープ能力に振り回されていた。
「なあシエル、これどうにかならないの? 王都って言ったら王都じゃん!」
「ごめんね、カケルくん……設定ミスで、目的地が絶対外れる仕様なの。女神の力だけど、私も直せなくて……」
「お前が設定ミスってどういうことだよ!」
そんなやり取りをしながら、二人は木陰にある空き地で休憩していた。
「まあ、せめて腹ごしらえしようよ。カケルくん、あそこに木の実があるよ」
「マジかよ、さっき食ったばっかりだろ!」
カケルがそう言いながら、女神シエルは無邪気に木の実を頬張っていた。
「カケルくんって、意外と食いしん坊なんだね」
「いや、君の食い方があまりにも美味しそうだから……ってそういう問題じゃねえ!」
その時、不意に木の茂みから物音が聞こえた。
「……また獣かよ!?」
カケルが構えた瞬間、そこから現れたのは――
「おはようございます! 道に迷ったんですか?」
可愛らしい少女だった。
「え、いや……そうなんだよね、実は。あれ、君は?」
「この森の近くの村から来たミナです。よかったら案内しますよ!」
カケルは少しホッとした。
「よし、助かった。シエル、こいつが人間界の唯一の希望だな」
女神シエルはにやりと微笑んだ。
「……ふふ、カケルくんが好きだから、ちゃんと面倒見てあげるよ」
カケルは思わず顔を赤らめた。
「え、なに急に……」
シエルはすぐに照れてそらした。
「ま、まあね。こんなあなたを放っておけるわけないじゃない」
そして三人は、ミナの案内で近くの村へ向かうことになった。
その道すがらも、カケルのワープ能力は変な方向に暴走し――
「うわっ! また崖の上! ここどこだよ!」
「落ち着いて、カケルくん。私が何とか助けるから」
シエルはしっかり彼を支えた。
「はぁ……まったく、チートのくせに迷惑かけまくりだな」
「でもね、カケルくんのワープ能力のおかげで、面白いこともいっぱいあるんだよ?」
「おい、俺のピンチなのにポジティブすぎない?」
そんなこんなで、カケルの異世界迷子ライフは今日も絶賛進行中である。