⑦①
メイジーは着替えるため部屋から出て行ってとガブリエーレを追い出す。
「い、いきなりなんなのよ! もう……っ」
「メイジー様もメイジー様ですが、皇帝陛下も皇帝陛下ですわ……」
「何のこと?」
エレナや侍女たちから「どっちもどっちですわね」と言われたメイジーは再び顔を傾げるのだった。
こうしたやりとりがあったため、暫くガブリエーレと顔を合わせずらくなってしまった。
数日後、メイジーはマオから受け取った宝石箱を見つめながら下唇を噛み締めていた。
(これをガブリエーレに渡さないと……! でもなんとなく顔を合わせずらいじゃない。どうしてくれるのよっ)
あっという間にシールカイズ王国のパーティーに向かう日になってしまう。
スリーダイト帝国からシールカイズ王国までかなりの時間がかかると思っていたが、なかなか声がかかからないことを不思議に思っていた。
メイジーもまさかとは思いつつも、やはりシールカイズ王国の近くまでは扉で移動するらしい。
(魔法って、本当に便利よね……)
そこからは馬車だが、前もって馬車は先に送ってあるそうだ。
メイジーはドレスに着替えてからガブリエーレの迎えを待っていた。
(どんな顔で会えばいいのよ……それに出来上がったアクセサリーも渡さないといけないのに)
メイジーは宝石箱を開ける。
中にはイヤリングが二つ、指輪が二つ入っていた。
ソワソワしているのを察してかエレナが声をかけてくれる。
「メイジー様が島で作ったシンジュ、とても美しいですね」
「えぇ、もっといろんな色ができるといいのだけれど、なかなか難しいわね」
「メイジー様ならできますわ」
「ありがとう、エレナ」
メイジーが島で怪我をしてくると彼女に怒られてしまう。
エレナはとても優しく王宮の皆に慕われている。
そんな彼女が大好きなのと同時に、思い出すのは唯一のメイジーの味方をしてくれていた侍女リディのことである。
「リディは大丈夫かしら……」
「……リディ?」
「シールカイルズ王国で唯一わたしの味方だった侍女よ。無事だといいけど……」
メイジーは手のひらを合わせて握りながら俯いていると、エレナが肩に手を置いた。
「皇帝陛下に相談してみてはいかがでしょうか?」
「……!」
「きっとお力になってくれますよ」
メイジーがガブリエーレのことを思い出して、彼にあげるはずの真珠を眺めていた時だった。
『何を眺めている?』
「──キャアアッ!?」
突然、目の前に現れたガブリエーレに驚いて悲鳴をあげてしまう。
ガブリエーレは不機嫌そうに耳元を押さえている。
「ちょっと……! ノックくらいしなさいよっ」
『俺はノックをしたぞ?』
「……え゛!?」
メイジーは確認するようにエレナを見ると、エレナは何度も頷いている。
どうやら本当のことを言っているようだ。
改めて彼を見た。
(……いつもより神々しい。眩しくて仕方ないわ)
皇帝として正装しているガブリエーレは美しさが増している。
今日はさらに髪を上げているからか印象がいつもと違って見えた。
メイジーは誤魔化すように咳払いをしてから、宝石箱をぐいっと前に出した。
「こ、これを……!」
『この箱は?』
「作っていたアクセサリーが出来上がったのでお納めください……!」
動揺しすぎて変な言い方になってしまったが、メイジーは箱を前に出しながら頭を下げる。
顔が赤くなったことを隠すためだ。
カチャリとガブリエーレがアクセサリーを取った音が耳に聞こえた。
チラリと顔を上げると後ろにいたベルーガに渡しているではないか。
(何をするつもりなんだろう……)
ベルーガは慣れた様子でイヤリングをつけている。
雫型の真珠のイヤリングをつけたガブリエーレは「なかなかいいな」と、呟くように言った。
「イヤリングをつけていくの?」
『文句あるのか?』
「いえ、ないですけど……」
ガブリエーレの圧にメイジーは首を横に振る。




