⑥⑧
こうしてガブリエーレの一声によってメイジーの願望が叶えられ、牛が船で島に送られることになったのだった。
島民たちと牛舎を作りつつ、牛に興味津々だった。
それからというものすぐに牛を殺して肉にしようとする島民たちを長時間の説得することとなる。
メイジーはなんとメスの乳からは飲み物が出ることを教えると一気にそちらに関心が集まった。
牛を番わせて育てて増やしていけば、安定して肉が食べられることを教えて、やっと食べようとするのを止めてもらえたのだった。
メイジーはこの真珠が売れたということを話すと、島民たちは牛欲しさにメイジーの手伝いを積極的にしてくれるようになった。
貝の色分けや網の大きさが広がったことで、貝もたくさん飼育できるようになる。
帝国にいても島民たちに任せておけば心配はない。
そしてついに……最初にメイジーが仕込んだ貝からは一粒だけ、美しい丸い真珠が出来上がった。
それは本当に美しい仕上がりだった。
メイジーの瞳の色と同じヘーゼル色。
艶や光沢はメイジーが知っていた真っ白な真珠よりもずっと増している。
それも上品な輝きで光の当たり具合によっては色が変わって見える。
ずっと見ていたくなる輝きにうっとりとしてしまう。
更に二週間経つ頃には、また一つ丸い真珠ができあがるようになっていった。
大きさはまちまちでネックレスに加工することは不可能だろうが、指輪やイヤリングならば作ることができそうだ。
(マオさんの友だちに宝石を加工して、一からアクセサリーをつくっている店があるって言っていたわね。頼んでみようかしら……)
初めての丸い真珠は指輪にしようと考えていた。
たまたまではあるが、メイジーの手元には以前ガブリエーレにあげた雫型の真珠と同じ色の青い真珠が一つ。
(これも一緒に加工してもらいましょう。まだお金はあまっているし……)
ふとガブリエーレに何気なくあげた雫型の真珠がどこにあるかが気になってしまう。
(もう捨ててしまったかしら……)
メイジーはガブリエーレに雫型の真珠があるかを尋ねてみることにした。
最近、朝食の時間になるとメイジーの元に顔出すガブリエーレ。
ベルーガからガブリエーレの食欲がないと聞き、彼のことが気になってしまう。
一緒に食べるように誘ったことがきっかけで毎朝、朝食を食べるようになる。
メイジーにとっては当たり前のことだが、それにはシェフたちも驚いて厨房は緊張が走った。
どうやら彼は静かに食事をするため、部屋で一人で食べることがほとんどだったそうだ。
かなり好き嫌いをするガブリエーレを平然と注意して世話を焼くメイジー。
島でもずっとそうだったため違和感はなかったが、シェフやウェイターたちはメイジーがいつ消されてしまうのか気が気ではなかったらしい。
ガブリエーレはメイジーが食べてから味を説明すると警戒しつつも必ず口にする。
帝国でも島でもメイジーとガブリエーレの食事風景は何も変わらない。
食後の紅茶を飲みながら、メイジーはガブリエーレに雫型の真珠をまだ持っているのかを尋ねる。
「島で渡した青い雫型の真珠、まだ持っていますか?」
『あのヘンテコな形のやつか?』
「ヘンテコって……やっぱり捨てちゃっているわよね」
ガブリエーレが持っているはずがない。
そう決めつけていたのだが彼から返ってきたのは予想外の言葉だった。
『持っているに決まっている』
「え……? 本当に……?」
ガブリエーレは手のひらを上向きに。
何もなかったはずの手から出てきたのは、美しい装飾がされた小さな銀色の宝石箱だった。




