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そうなればスリーダイト帝国に来た途端に優しくなったことや、メイジーの好きなように島を行き来させていたのも合点がいく。
真珠が採れてメイジーが魔力を込めたら、スリーダイト帝国は儲かるということなのだろう。
だからこそドレスや快適な暮らしを与えたり、復讐を手伝って先に恩を売っておこうということなのかもしれない。
(返報性の原理を利用しようというのね。なかなかやるじゃない。さすが皇帝だわ)
ガブリエーレの気持ちに一切気がつくことがないメイジーは着々と勘違いを進めていた。
彼の気持ちに答えるためにメイジーもあることを口にする。
「わかったわ。その代わりわたしがあなたの役に立てばいいのよね!」
『は…………?』
ガブリエーレのメイジーを抱きしめていた力が緩む。
メイジーは顔を上げると、そこにはこれ以上なく驚いている彼の姿があった。
「だって最初に言いましたよね。俺の暇つぶしになれ、役に立てって。そういうことでしょう?」
『…………いや』
「わたしがスリーダイト帝国の役に立つ代わりに、あなたはわたしの生活の保証や復讐を手伝ってくれる……理解しましたわ」
『あー…………』
「今は貰ってばかりですが、わたしも役に立てるように頑張ります……!」
それにメイジーは元々、スリーダイト帝国相手に真珠を使って大儲けしようと考えていた。
商売相手にもってこいではないだろうか。
当初は大儲けしようとしていたが、今回はガブリエーレの婚約者として互いに手を取ろうではないか。
(そしてお母さまの指輪を取り返してみせるわ! 真珠作りに自分磨き、やることはたくさんあるわ。それに魔法のことについても学ばないと……!)
メイジーが気合いを入れていると、何故かガブリエーレは苦い表情だ。
横にいたベルーガやマオ、イディネスが心配そうにしている。
「皇帝陛下、このままでいいのですか?」
「……お気持ちがまったく伝わっていませんよ?」
眉を寄せながら頭を押さえるガブリエーレ。
彼らの言葉の意味がいまいち理解できないでいるとガブリエーレはメイジーからそっと体を離した。
「わたし、もしかして思い違いを……?」
『いや……今はこれでいい』
ガブリエーレの返事に自分の考えが正しかったのだと安心するように息を吐き出した。
「……ですが」
「皇帝陛下、このままでは……!」
ベルーガとマオの心配を他所に、メイジーの心は燃え上がっていた。
メイジーはガブリエーレの気持ちがまったく理解できないまま、マオと共に今日も島に向かったのだった。
──それからメイジーの真珠作りは本格的に始まった。
毎日のように島に行って、メイジーは作業を繰り返す。
貝の餌やりや真珠の核となるフルーツの種を用意してもらっていた。
島民たちの協力してもらい順調に色とりどりの真珠が出来上がっていく。
ただ大半が形が歪なものばかりで美しい真円、もしくはやや歪んだ丸がなかなかできないことが悩みだった。
種を大きくしたものだと、逆に層が薄くなり輝きが薄れてしまう。
強度が落ちるのか種がすり潰されてしまうこともあった。
帝国にある固いもの、つまり鉄などを使ってみても貝は鉄砲玉のように吐き出してしまう。
(なんで生意気な貝なの……っ!)
身がついていない固いものだと異物として吐き出してしまうようだ。
メイジー効率のいい真珠の作り方を島民たちと模索していくことになった。
何度も緻密な調整が繰り返されていた。
メイジーに付き添っているベルーガは火の神、マオは水の神、イディネスは緑の神として崇められるようになった。
それから島民たちにずっとお礼をしたいと考えていたメイジーは三人に相談をしてみることにした。
ベルーガ、マオ、イディネスは困惑した表情で「それは皇帝陛下に……」と言う。
ガブリエーレとは顔を合わせたり合わせなかったりだ。
メイジーが一日の大半を島で過ごしていることもあり、自然とベルーガたちと共に過ごす時間が多くなっていく。




