⑥② ガブリエーレside5
娘たちを次期皇后の座に押し上げようとしている帝国貴族も難色を示したが、最終的には納得せざるを得ないだろう。
むしろメイジーが来たことで国のバランスを崩すことにならずによかったともいえる。
スリーダイト帝国は今、二つの派閥に分かれて拮抗状態だった。
だからこそ慎重に動かなければと思っていたのだ。
それに今まで会ってきた女性たちはガブリエーレを恐れるか心酔するかのどちらかだ。
(結婚したいなど、思うことはないと思っていたが……)
けれど何も知らないメイジーはいい。
ガブリエーレに平然と注意をして、対等に接してくる。
媚びてくることもなく、思い通りにならない。
こんなに面白いことが他にあるだろうか。
今はどうやってメイジーを説得させるか、考えを巡らせていた。
彼女の頭の中は貝で綺麗なシンジュを作ることでいっぱいだ。
権力をチラつかせても、何を与えても彼女は靡くことはない。
これだけ魔法を目の当たりにしたって、楽をしようとせずに自分で作業を続けているからだ。
ガブリエーレに頼めば一瞬で終わるだろう。
けれどそれがまったくない。
彼女は一つ一つ丁寧に作業をする。島の者たちもそうだ。
原始的な生活を続ける彼らを見ていると、魔法を使うことが当たり前になっていたガブリエーレは考えさせられる。
それはベルーガもあの景色を見て感じたそうだ。
そんな時、一時的に姿を消していたマオが姿を現す。
「シールカイズ王国から招待状が届いています」
『見せろ』
本来ならば無視をするところだが、今はシールカイズ王国の元王女だったメイジーがいる。
封蝋を開くと、そこには女王の結婚式の招待状が入っていた。
ジャシンスは大金をかけて各国の要人を招待しているらしい。
(……コイツは国を潰すつもりなのか?)
今、シールカイズ王国の状況からして結婚式をしている場合ではないことは確かだ。
もっと他にやるべきことがあると思うのだが、彼女には関係ないのだろう。
メイジーが女王になっていたのなら、また違う結末になっていただろうに。
『メイジーと共に出席する。お前たちも来い』
「かしこまりました」
『それと明日、メイジーを呼べ。今回の件で奴らがどんな反応をするのか楽しみだ』
「ですがメイジー様はなんて言うでしょうか」
『さぁな……』
ガブリエーレはそう言って口角を歪める。彼女がどう反応をするのか予想していた。
(嫌がるだろうか。それとも復讐のために俺を利用しようとするだろうか)
逃げ腰になるなんてつまらない。ガブリエーレはメイジーに後者を選択することを望んでいた。
次の日、ガブリエーレは島に行く前のメイジーを呼び出した。
どうやら今日はマオが付き添うらしい。
マオは昨日のベルーガの様子を見てか表情に怯えが滲む。
あのベルーガが怪我をしたのが、どんな貝なのか怖がっていた。
目の前にガブリエーレが現れると、メイジーは露骨に嫌な顔をした。
恐らく今日、島に行くのを止められるのではないかと思っていたるのではないだろうか。
そんなメイジーにガブリエーレは昨晩、あったことを伝える。
『シールカイズ王国に向かう。俺の婚約者として参加しろ』
「…………はい?」
予想通りの反応だった。
さりげなく婚約者と組み込んでみたのだが、メイジーはそれどころではないようだ。
目を見開いて言葉を理解しようとしている。
「どうして……シールカイズ王国に?」
『女王の結婚式だ。どうやら各国の要人を呼んで華やかな結婚を開くそうだ』
「…………!」
メイジーの瞳には大きく揺れていた。
女王のジャシンスのことを思い出しているのかもしれない。
やはり報告に書いてあるもの以外にも彼女は傷つけられて虐げられてきたのだろう。
ガブリエーレはふと彼女をこれ以上、傷つけたくないと強く思った。
そして無意識に言葉が漏れる。
『嫌ならば別にいい』
その発言に驚いたのはベルーガやマオだけじゃない。
ガブリエーレ自身だった。
(俺は……今、何を……)




