⑥①ガブリエーレside4
抵抗するメイジーと口喧嘩をしながら帝国へと戻る。
それがガブリエーレにとっては面白くて仕方ない。
扉を潜って帝国に到着すると、メイジーは魔力を使った影響でぐったりとしていた。
(まだ安定しないのか。それか魔力自体が少ないか、どちらかだな)
本人は気がついていないようだが、この扉は魔力がなければ通れない。
昨日、無理やりメイジーの魔力を覚醒させたのは魔力の有無を確かめるためだ。
(彼女の母親はスリーダイト帝国の人間だ。魔力を継いでいたが今まで使う機会がなかっただけだけか。それとも……)
ガブリエーレの思った通り、彼女は隠れた才能を持ち合わせている可能性がある。
少しずつ自覚していった方がいい。そう思っていた。
ただの疲れだと思っているメイジーをエレナに預けて部屋へと戻る。
島でたくさん食事をしたのだろう。
メイジーの顔色は随分とよくなっているような気がした。
報告を聞くためにベルーガを連れて部屋へと戻る。
メイジーと違って彼の顔色は悪い。
久しぶりにここまで感情が乱れたベルーガを見た気がした。
ガブリエーレの予想通り、メイジーに振り回されたのだろう。
ベルーガがメイジーをよく思っていないことは知っていた。
だからこそ今日は彼女につくように言ったのだ。
近くにいる者たちはガブリエーレに肩入れしすぎている。
神のように慕い、絶対だと思っていた。
だからこそメイジーも同じようにしなければならないと決めつけている。
彼女はガブリエーレに微塵も興味を持っていないし、帝国にいたいとは思っていない。
恐らくベルーガに『このまま島にいればいい』と言われたのだろう。
メイジーはそれをあっさり了承。
誰だって不便な暮らしよりも贅沢で華美な暮らしを好むのは当然だと思うだろう。
しかしメイジーは逆なのだ。
だからこそガブリエーレはメイジーが自分に夢中になった瞬間を見てみたいと思ってしまう。
今、生まれて初めて手に入らないものが目の前にある。
そのことが何よりも楽しくて仕方がないのだ。
こんな感情は今まで知らなかった。
『ベルーガ、ひどい顔だな』
メイジーには振り回されて、彼のきっちりとした衣服が乱れている。
それにベルーガの腫れた肌を見ていると何があったのか想像できる。
「……この通りですよ。魔法で貝を焼いてしまったらメイジー様の欲しいものがなくなってしまったんです。魔法を使わないということが、どういうことなのか久しぶりに思い知りました」
『……くくっ』
「笑い事ではありません!」
ベルーガの言葉を聞いたガブリエーレは笑いが止まらなかった。
火の神扱いされたことも、食べ慣れない食事に戸惑ったことも新鮮だったのだろう。
『それでメイジーはどうだった?』
「メイジー様は何をしだすのか予想ができません。目が離せないんです。不思議な魅力を持った女性だと思いました」
『ははっ……』
「私は……彼女が皇帝陛下に相応しくないと思っておりました」
珍しく直情的なベルーガにガブリエーレは笑みを深める。
彼女は周囲を巻き込みながら自分の道を突き進んでいく。
「それは間違いでした。彼女こそ皇帝陛下に相応しい」
「ほぅ……」
どうやら今日でベルーガのメイジーへの印象は変わったようだ。
「ですが彼女を婚約者にするには帝国貴族の反発からは逃れません」
『父上も母上からの許可はもう得ている。帝国貴族のことも何も問題はないはずだ。俺の予想が正しければな』
「……なんと!」
周囲など、どうとでも丸めこめてしまう。
両親はこの話を聞いた時には大喜びだった。
すっかり捻くれたガブリエーレが相手をみつけることは不可能だと思っていたからだろう。




