⑥⓪
「今日を含め、あなたの行動を見ていましたが皇帝陛下に相応しいとは思えません」
「そうですか」
メイジーが平然としているのもまた気に入らないのかもしれない。
だが相応しくないと言われたらそうだろうとしか答えられない。
ここでメイジーは気になったことを問いかける。
「どんな方なら皇帝陛下に相応しいのですか?」
きっとベルーガたちはどんな女性でもこうなりそうだと思っていると……。
「それはもちろん美しくて皇帝陛下が気に入っておそばにいたいと心から思えるような……」
そう言いかけて、ベルーガはピタリと言葉を止めた。
ピンク色の瞳が動揺しているのか揺れ動く。
それを隠すように彼は視線を逸らしてしまった。
(……どうしたのかしら)
彼が何が言いたいのかがわからず、メイジーが言葉を待っているとベルーガは咳払いをしてこちらを向き直る。
「ゴホン……この話はもういいです。あなたもここにいたいなら、ずっといたらどうですか?」
ベルーガの提案にメイジーは目を見開いた。
そう言われたらメイジーの答えは決まっている。
ガブリエーレからメイジーのことをどう聞いているのかは知らないが、帝国に帰りたいなどいうはずもない。
ベルーガはガブリエーレの側近の中で一番、信頼されているような気がした。
もしかしたらガブリエーレを説得できるかもしれない。
(このチャンス、逃せないわね……!)
メイジーは目を輝かせながらベルーガの手を掴む。
「いいんですか!? なら、お言葉に甘えてそうさせていただきます。わたしは島で暮らしますから説得してくださいね!」
「だから言ったので…………えっ?」
ベルーガが言い直す前にメイジーは彼に背を向けて砂浜を凄まじい速さで駆け出していく。
「メ、メイジー様っ!?」
「皇帝陛下にベルーガさんから伝えといてください! さよなら~っ」
メイジーはその場にベルーガを置いて森の中に消えていく。
(よし、大成功……!)
帝国での窮屈なお姫様暮らしはもうたくさんだ。
(わたしはここで完璧な真珠を作る……!)
何故か目的は大きく変わっているが、明日から制限なしに色々できると思うと開放感でいっぱいだ。
島民たちとまた過ごせると島の子どもたちと大はしゃぎをしていると、荒く息を吐いたベルーガが追いかけてくる。
「メイジー様、帝国に帰りましょう!」
「絶対に嫌です。わたしがここにいた方がいいと言ったのはベルーガさんですから」
ベルーガはメイジーがガブリエーレに言って帝国に無理やり居座っていると思っていたのだろうか。
明らかに焦っているようだ。
「先ほどのことは訂正いたします。ですから一緒に……!」
「訂正は必要ありません。わたしはここにいるので帝国へ帰ってもらって大丈夫ですから!」
「いえ、そうではなく……!」
そんな押し問答を繰り返しているうちに、すっかり日が暮れてしまった。
ついに強硬手段に出ようとしているベルーガを見て、メイジーが太い幹に足を絡めてしがみついて抵抗していた。
「このままでいいんです! 説得しておいてくださいっ」
「困りますっ! お願いですから離してください」
「嫌です……! 早く帰らないと皇帝陛下が心配するんじゃないですか!?」
「それはこちらの台詞です……からっ!」
島民たちは戸惑っているように見える。
すると森の向こうから見覚えのある光の玉が見えた。
(ま、まさか……!)
メイジーが嫌な予感を感じていると、ガブリエーレとその背後にマオとイディネスが立っているではないか。
『メイジー……何をしている?』
「……見てわかりませんか?」
『芋虫の真似か?』
「違います」
ベルーガがメイジーから手を離して膝をつく。
『珍しいな、ベルーガ』
「……申し訳ございません」
『いや、構わない。こうなることはわかっていた』
意味深な発言にメイジーは眉を寄せる。
そして一瞬で移動したガブリエーレは、メイジーを抱えてしまう。
「なんでよ! 離してくださいっ」
『皆に迷惑をかけるな』
「ぐっ……!」
メイジーは些細な抵抗とばかりにガブリエーレを蹴り飛ばす。
げしげしと蹴っているとベルーガ、マオ、イディネスの顔が引き攣っていく。
『お前といると退屈しないな』
「…………いっ」
仕返しとばかりにガブリエーレに足をつねられたメイジーは悔しさを噛み締める。
抵抗虚しくガブリエーレに帝国に連れ返されるのだった。
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