⑤⑧
しかしメイジーが怪我をしそうになるたびにベルーガに貝を焼かれていては、真珠を取り出せない。
メイジーにとっては大損失である。
熱々の貝を前に近くにあった棒でつついてみるも、中にあったであろう真珠はふにゃりと形を変えてしまい見る影もない。
かなりの高温で焼かれてしまったのだろう。
「ベルーガさん、貝をもう焼かないでください」
「ですがメイジー様に傷一つつけるわけには……!」
「ですが、貝が焼けてしまうと中の真珠がなくなっています。怪我をしないように気をつけるので焼かないでください!」
ベルーガはメイジーの熱意ある言葉に驚いているようだ。
それからメイジーは貝の中で真珠を作っていることを説明をする。
それでもメイジーを守るために貝を焼き払うと言うベルーガに、メイジーは叫ぶように言った。
「──真珠だけは譲れませんっ!」
再びこの場所にきたらメイジーがやることは決まっている。
(この真珠でわたしは成り上がってみせるんだから!)
ベルーガはため息を吐くと、あることを提案した。
「わかりました。でしたら私が代わりに貝から真珠を取りますから」
「魔法は使わないでくださいね」
「……善処いたします」
そう言うと、ベルーガは貝の一つを手に取る。
先ほどの焼け焦げた貝のせいなのか、ベルーガに向かってガブガブと凄まじい勢いで貝たちが口を開けたり閉じたりを繰り返しているではないか。
ベルーガはメイジーの貝を生かしたまま取り除くという先ほどの話を聞いた通り、魔法を使うことなく挑戦するようだ。
けれど結果は以前のメイジーと同じ。
鼻を噛まれて指を噛まれてひどいありさまだった。
少し前の自分を見ているようだと思いつつも、メイジーは手慣れた様子で貝を開けていく。
特製の棒があればメイジーは無敵である。
ベルーガにも渡したのだが、まだうまく使えないようだ。
貝と実の間にキラリと光もの。
それが種をうまく囲ってくれたらと思いつつ、取り出したものは上は丸いが下は潰れている不恰好なものだ。
(やっぱり入れる場所によっては、貝殻に沿って作られてしまうのね)
挿入器、ひっかけ、メス、開口器など専用の器具を使って適切な場所に入れなければならない。
長い年月をかけて美しい真珠となるのだ。
(綺麗な真丸にはなかなかならないのね)
幸い、何年もかかることなく層が厚くなっている。
形はいいが長くかかることはない。だが、丸になる保証はなく、一週間ほどである程度の大きさになるとわかっただけいいだろう。
メイジーは歪な真珠を空に掲げて眺める。
(貝の出口に近い端の方は歪になりそうなのね。なら真ん中の辺りはどうかしら……)
貝の真ん中辺りに触れてみると、コロリと丸い感触がある。
(こ、これは……!)
このまま育ってほしいため、メイジーはすぐに手を離す。
運任せになってしまうが、こうして何個か入れて美しい丸の形になるものを見つけて取っていくしかないのだろう。
(量と運で勝負するしかないわね。種を入れてからまだ一週間でこの大きさ……恐らく一カ月で十分な丸になるはず)
新しい発見に胸が躍る。
メイジーが貝を元に戻すと、疲れたのか貝がぐったりとしていた。
貝は雑食のため、何も残らない葉や果物の皮を食べさせているグループと肉を食べさせているグループに分けていた。
同じ色の貝で二つのグループの歪な真珠を取り出してみると、肉を食べた方のが比較的大きくなっている。
葉や果物の皮は小ぶりだが輝きはいい。
メイジーがブツブツと呟いて、結果を確認する。
帝国の部屋に戻ったら、今までのことをメモしようと考えていた。
(今日の収穫は大きいわ。あとは毎日通って世話をしないと……)
メイジーが貝を観察しているとミミがご飯の時間だと呼ぶ声が聞こえた。




