⑤⑦
メイジーはベルーガが付き添いだと説明するも納得してもらえない。
自分もガブリエーレの、神の遣いだと言って島民たちの仲間に入れてもらったことを今になって思い出す。
詳しく話を聞いてみるとメイジーはムーたちの中で女神様に昇格したようだ。
「ベルーガさんは付き添いだから……」
『神の遣い、メイジーの世話する』
『メイジーの世話、すごい』
「違いますよね、ベルーガさん!」
メイジーがそう言って振り返るがベルーガは静かに首を横に振った。
「私には彼らの言葉はわかりません」
「……え?」
メイジーが驚いているとベルーガは信じられないことを口にする。
「皇帝陛下があなたに力を分け与えた。だから言葉も理解できるし、太陽の元を歩いても肌が焼けることはないのでしょう」
「……どうしてわたしに?」
「さぁ、わかりません。私が知りたいくらいですよ」
ベルーガはそう言って微笑んだ。
「私は護衛ですので、気にしないでください」
やはりメイジーに敵意があるのだろう。
口にしなくてもそんな気がした。
メイジーはムーに手を引かれたことで視線が逸れる。
ベルーガとの気まずさを感じながらも歩き出す。
ムーとデーと色部に分けられている貝を見ながら感動していると、こちらに走ってくる島民たちの姿。
どうやらドーが皆にメイジーが来ていることを知らせたようだ。
頭を下げようとするミミやダダナたちを止める。
神様扱いはガブリエーレだけで十分だ。
そう思っていると、メイジーの前に差し出される大きな網。
一晩で随分と大きな網を編んでくれたようだ。
どうやらミミたちはガブリエーレからメイジーのやりたいことを聞いて、手伝うように言ってくれたらしい。
それを聞いてメイジーの心臓がドキリと跳ねた。
彼は口こそ悪いが、メイジーのことを思い、メイジーのために動いているように思えたからだ。
(そ、そんなわけないわ……! たまたまよ!)
メイジーは考えを振り払うように首を横に振る。
そして貝がある場所に向かうと、網がしっかりと固定されているではないか。
ダダナたちがやってくれたのだろうが、これもガブリエーレのおかげだと思うと複雑な気分だ。
メイジーが網を引っ張り出して、貝の中身を確認しようとした瞬間だった。
いつものように貝がガバリと口を開ける。
ガブリエーレのことばかり考えていたメイジーは貝の口に挟む棒を用意するのを忘れていた。
(また噛まれる……!)
顔に向かって飛んでくる貝を見て、目を閉じたメイジーだったがいつまで経っても鼻に痛みがない。
目の前でボンッと何かが弾ける音が聞こえた。
(いた……くない?)
不思議に思って目を開くと、そこにはベルーガの姿があった。
貝はメイジーの前にポトリと落ちてしまう。
漂う焼けた貝の独特な香り。
ほんのりと磯の匂いがして無性に醤油が恋しくなってしまう。
そして島民たちの視線も貝が集まっている中、こちらに腕を伸ばしているベルーガの姿。
どうやらベルーガがメイジーが鼻を噛む前に貝を魔法で焼いて防いだようだ。
「怪我はありませんか!?」
「ベルーガさん、ありがとうございます」
「あなたが怪我をすれば皇帝陛下はお怒りになるでしょうから」
「そんなことないと思いますけど……」
「いいえ、あなたが思っている以上に影響は大きいのです」
島であんなに怪我をしていたとしても、ガブリエーレは一度だけ治してやろうかと言っただけだ。
(……どうして今更、わたしを気にするのかしら)
島民たちの中で何人かはベルーガの魔法を見ていたのだろう。
『火の神だ! メイジー、守ってさた』
『貝、焼け死んだ。火の神!』
島民たちの火の神コールが始まると、ベルーガは珍しく困惑したように眉を寄せた。
「メイジー様、これは一体……」
「ベルーガさんの魔法を見て、あなたを火の神だと思っているようです」
「…………否定してくれませんか?」
ベルーガは複雑そうにしている。
メイジーがベルーガが火の神ではないと説明するが時すでに遅し。
彼は島民たちの中で火の神になってしまった。
「もう火の神だそうです」
「…………そうですか」
ベルーガが赤い髪をしている。そして火の魔法を使う。
マオやイディネスを見ると、髪や瞳の色は魔法に直結しているのだとわかる。
きっとマオは水の神、イディネスは緑の神と呼ばれるのだろう。




