⑤③
『この扉はあの島へと繋がっている』
ガブリエーレの言葉にメイジーは目を見開いた。
あの島と言うのはメイジーたちがいた島のことだろう。
(道って……あの島とスリーダイト帝国を繋ぐ道のこと!?)
メイジーは改めてガブリエーレの言葉を理解することになる。
そして繋いだということは、島に行けるということではないのだろうか。
「本当に……あの島に繋がっているのですか?」
『ああ、そうだ』
「まさかっ、いつでも島に行けるといこと……?」
『お前次第だが……まぁ、いつでも行ける』
メイジーは気になることがあった。
島からここまでは船ごとワープしたからだ。
その時の浮遊感は今も忘れられないし、できたら二度と経験したくない。
「あの船みたいになるなら、わたしは……」
『あれは船ごと移動させているんだ。十数人分の魔力の消費がかかる。だが、ここは俺専用の部屋だ。島に行ける扉ならいつでも使ってもいい』
メイジーはその言葉に目を輝かせた。
そして今までのガブリエーレにやられたことをすべて忘れて、喜びから彼に勢いよく抱きついた。
「本当にありがとうございます……! とても嬉しいわ」
『……!』
ガブリエーレはその言葉に大きく目を見開いている。
そのことに気がつくことなく、メイジーは心躍らせていた。
「今すぐに部屋に置いてある網を持ってこなくちゃ……!」
メイジーはガブリエーレから離れて、網を取りに行こうとすると彼がマオとイディネスに視線で指示を出す。
すると彼らはすぐにメイジーの部屋に網を取りに行ってくれたようだ。
(また貝の真珠作りの続きができるわ。それにいつでも島のみんなに会えるなんて!)
あまりの嬉しさにメイジーは飛び跳ねたくなった。
『貝は着替えてからだ。今日は挨拶だけにしろ』
「……………」
ガブリエーレの言葉に、メイジーはピタリを動きを止める。
今すぐに着替えて行きたいのだが、それはダメだということだろう。
それよりも大切なことは島にどのくらいいられるかだ。
「その……ずっと島に滞在しても?」
『夕食までには必ず帰ってこい。護衛にはベルーガかマオ、イディネスの誰かを連れて行け』
面倒な条件の数々にメイジーは顔を顰めていた。
ガブリエーレから提示される島に行くための条件はどんどんと増えていく。
島へ何日も滞在することは許されないし、護衛は必須。
三兄弟かガブリエーレと共にではないと行ってはいけないようだ。
メイジーが反論する隙を伺いながら目を細めて彼の話を聞いていると、こちらの考えを察しているのだろう。
『条件は必ず守れ。いいな?』
「…………。はい」
今日は島民たちと挨拶だけらしく、ガブリエーレも同行するらしい。
美しいドレスを汚すわけにもいかずに自由に動けない悔しさを噛み締める。
マオたちが一瞬で持ってきてくれた網を受け取ったメイジーは木の扉に手を伸ばした。
そして軋む扉を開くと、ぼやけた景色が見えた。
見覚えのある岩場、どこまでも続く水平線。
(本当にあの島と繋がっているの……?)
メイジーが手を伸ばそうとすると、後ろからベルーガとガブリエーレが話す声が聞こえた。
「皇帝陛下、本当によろしいのですか?」
『ああ、これでハッキリするだろう』
「ですが、もしメイジー様に何もなければ……」
『そうなったらそうなったで考えるさ。だが、今はこの方法が手っ取り早い』
何のことを言っていたかは理解できないが、メイジーはとにかく早く行きたいと思っていた。
鏡のような境目を指で突いてみる。
すると、指が飲み込まれていくような不思議な感覚に目を見張る。
こちら側はひんやりとして冷たいのに、あちら側は温かいのだ。
確認するようにガブリエーレを見ると彼は頷いた。
未知の感覚にメイジーはガブリエーレの手を握る。
そしてメイジーは扉の先に飛び込んだのだった。




