④⑦ ガブリエーレside3
なんだかんだ理由をつけて避けていたことを見透かしていたのだろう。
皇帝である以上、結婚から逃げることなど不可能だ。
そしてスリーダイト帝国の皇帝として粗相はできない。
パートナーも必須になってくる。
ガブリエーレは自然とメイジーの顔が思い浮かぶ。
魔法がまったく使えないメイジーへの風当たりは強くなる。
だが彼女はこの国で何かを変えてくれると、そう期待してしまう。
彼女は今、貝に執着しているため一緒に帝国に来ることはないだろう。
だがこの島から帝国までは、ガブリエーレの魔法の力で繋げてある。
それからメイジーを説得すればいいと思ったのだ。
島と帝国を繋いでいるため行き来は自由だが、複数人通れるように改良しなければならい。
それもメイジーのために、だ。
そして迎えの船が来たが、帝国の様子を見に行っている間にメイジーを攻撃してきたのだ。
ガブリエーレの頭に血が昇る。
しかしもっとわからないのは殺されそうになった相手を許すメイジーの考えだ。
思えば島民たちもそうだった。
二度ほど命の危機を迎えたが今では打ち解けていた。
それにしても少し目を離すだけでメイジーは死にそうになる。
ますます目が離せない。
もうすぐ一時間経つという時だった。
ベルーガが数枚の紙を持って部屋の中へと入ってくる。
その顔は険しく、額に汗が滲んでいた。
「お待たせいたしました」
『さすがだな、ベルーガ』
「えぇ、他の者では一時間など不可能ですから。これ以上、無茶なことはやめてください」
『わかったわかった……早く見せろ』
ガブリエーレは調査の結果を読み進めながら初めて真実を知る。
病弱というのはまったくの嘘だった。
異母姉妹の姉、ジャシンスと王妃に虐げられ続けて物置部屋に閉じこもりきりだったこと。
それを知りながら国王は放置して、メイジーを女王に指名したことで、彼女たちに追放されて島流しにあった。
(まさか本当に王女だったとはな……)
『役立たず王女』、周りからはそう呼ばれていたらしい。
メイジーが役に立つことにこだわっていたのも納得できる。
けれど役立たず王女と呼ばれていたメイジーと今の彼女が噛み合わない。
今のメイジーならば逆境を跳ね除けて周囲を味方につけることだってできただろうに。
それから紙の最後に書かれていた言葉を見て、ガブリエーレは目を見開いた。
『ベルーガ、このことを知る者は他にいるか?』
「私だけです」
『そうか……』
ガブリエーレは手のひらで口元を覆った。
これは運命の出会いといってもいいかもしれない。
ガブリエーレが持っていた紙が灰になって燃えた。
『やはり俺に相応しいのはメイジーしかいない。大臣たちをすぐに集めろ。それと父上にも手紙を送れ』
「すぐに手配いたします。三十分後には召集いたしますので会議室に。マオとイディネスはどうしますか?」
『お前だけでいい』
ガブリエーレがそう言うと、ベルーガが控えめに問いかける。
「もしやメイジー様を傷つけようとしたり……したのでしょうか」
『ああ、俺の許可なしにな』
「それは私からも謝罪させてくださいませ。申し訳ございません」
ベルーガが深々と腰を折る。
肩にかかる赤い髪がサラリと揺れた。
三人は兄弟でガブリエーレの側近兼執事兼護衛だった。
ベルーガが一番上、真ん中がマオ、一番下がイディネスだ。
『お前に免じて許してやりたいところだが、メイジーが許せば俺も許そう』
「お心遣い痛み入ります。二人にはそう伝えときます」
ガブリエーレは上機嫌だった。
メイジーの出生はなかなかに興味深いものだった。
それはまだ本人ですら気づいていない。
だがガブリエーレの側にいるには都合のいいものだ。
(メイジー……これからも俺を楽しませてくれ)




