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ガブリエーレは頭を掻いて面倒くさそうにしている。
毎日、共にいたメイジーは何となく彼が何を言いたいのかわかるようになった。
「わかったわ。でもわたくしにはまだまだやることがあるのよ。島に返して……!」
メイジーは腕に引っかかっていた網をガブリエーレに突きつける。
『だから……道を繋ぐと言っているだろう?』
「その意味がわからないの! 道って、一体何?」
『これ以上、どう説明しろというんだ』
会話が成り立たずにメイジーは困惑していた。
『詳しい説明は後だ。そろそろ移動するぞ。捕まってろ』
「はい……?」
そう言った瞬間、メイジーの体は浮いてしまう。
するとすぐにグルグルと視界が回っていた。
浮遊感に驚いて瞼を閉じながらガブリエーレを反射的に摑む。
(うえ……気持ち悪い!)
何とも言えない浮遊感にメイジーは歯を食い縛りつつ膝をつく。
『メイジー、早く立て』
「……うっ」
ガブリエーレに腕を引かれながら、メイジーはなんとか立ち上がる。
まるで絶叫アトラクションに乗った後のような感覚。
口元を押さえながら、フラフラしつつ口元を押さえているとガブリエーレの足を踏んでしまう。
周囲がザワザワと騒がしいことにも気づくことなく、まっすぐに歩けずにいると……。
『ほら、捕まってろ』
ガブリエーレがそう言われると、メイジーの体がまた宙に浮いた。
腹部に感じる圧迫感にまた口元を抑える。
ガブリエーレに小脇に抱えられて地面しか見えない。
なんとか上半身を起こそうとしつつ、文句を言うために口を開く。
「ねぇ……せめてお姫様抱っこにしてくれないかしら!?」
『うるさい』
「……っ!」
そのまま運ばれていくのだが、明らかに上質な真っ青な絨毯に銀色の模様。
顔を上げて狭い視界で確認するが、ガブリエーレに深々と頭を下げている従者たち。
しかも数えきれないほどに。
真っ白な壁は傷や汚れ一つなく美しい。
メイジーはここがどこなのかが何となくわかってしまった。
(もうスリーダイト帝国に着いたの? つまりあの島とは近いのかしら)
気持ち悪さなど消えて緊張から体を強張らせていたが、突然体を放り投げられて目を閉じる。
ふわふわなクッションに顔が食い込んだメイジーは悲鳴を上げる。
「ぎゃ……!」
『身なりを整えたら、俺の部屋に連れて来い』
「ちょっと……!」
メイジーが顔を上げて抗議しようとすると、ガブリエーレは人に囲まれて扉の前にいた。
『そいつに手を出すな。手を出したら殺す』
「……!」
メイジーを指差しながらそう言ったガブリエーレはそのまま立ち去ってしまう。
荷物のように投げ捨てられてしまったショックで固まっていると、数人の女性に囲まれている。
髪色がとにかくカラフルで瞳の色も同系色でまとまっている。
先ほどの青年たちと同じだ。
彼女たちは格好からして侍女なのだろうか。
観察するような視線に身構えていると、誰も触れていないのにいきなり体が宙に浮いた。
それからはあっという間だった。
お湯が張られている猫足のバスタブで丁寧に髪や体を洗っていく。
久しぶりに感じる花の甘い香りと心地よさ。
すっかり軋んでボロボロになってしまったホワイトゴールドの髪にも丁寧に梳いている。
日焼けして赤くなった肌にも何かを塗って手入れをしている。
あまりの心地よさに瞼を閉じそうになっては、警戒して開けることを繰り返していた。
「眠っても大丈夫ですよ」
侍女にそう言われたメイジーだが、ここで寝るのはよくないような気がしていた。
連日、網を作るために夜遅くまで起きていたため眠くて仕方がない。
無理が祟ったのかそのまま眠ってしまったのだった。




