④②
「えっと……」
『お前も行くぞ』
「ど、どこにでしょうか?」
そう聞きつつもメイジーの顔が引き攣ってしまう。
ガブリエーレの視線が怖すぎる。
『俺の話を聞いてなかったのか?』
「……はい、まったく」
『はぁ…………』
ガブリエーレから逃げるのに必死になりすぎていて、メイジーは彼の話をまったく聞いていなかった。
ため息を吐いたガブリエーレはメイジーを連れていく。
メイジーが足を必死に動かしても宙に浮いているため、まったく意味がない。
(な、なんで……!?)
メイジーは腕に網を引っ掛けたままガブリエーレに運ばれるようにして船へと向かう。
島民たちもまさかメイジーまで行くとは思っていなかったのだろう。
急な別れに困惑しているように見えた。
状況がわからない子どもたちは大声で泣きながらメイジーの名前を呼んでいるではないか。
その姿を見て胸が締め付けられる。
「ちょっと離して……! 離してよっ」
『…………』
「ここにいたいのっ、行きたくないってば! 離しなさいよ」
彼が皇帝だということも忘れてメイジーはいつも話している口調に戻ってしまう。
そして抵抗もできずに宙に浮いて運ばれてしまった。
メイジーは無理やり船の上に連れて行かれてしまう。
その後からついてくる青年たちは、メイジーと目が合うと気まずそうに視線を逸らしてしまう。
島民たちがどんどんと遠くなっていく。
メイジーの心の中にはモヤモヤとした気持ちが湧き上がっていた。
彼らにお礼も言っていないし、きちんとお別れもできていない。
それにメイジーの腕についた網がヒラヒラと揺れている。
(まだやり残したことがたくさんあるのに……!)
メイジーは悔しさからギュッと唇を噛んだ。
すると宙に浮いていた足がやっと地面に触れた。
感覚に慣れずにメイジーは尻もちをついてしまう。
お尻の痛みを感じつつも呆然としていた。
『お前、何やってるんだ?』
ガブリエーレが俯くメイジーを覗き込むようにして座り込む。
メイジーは考えていた。このままでは絶対に後悔するだろう。
あの島でやり残したことは今後の人生を生きていく中で後悔として残るだろう。
(やっぱり戻らないと! そのためには……)
考えを巡らせているのにガブリエーレは反応しないメイジーで遊ぶように頭をツンツンと突いているではないか。
睨み上げると、彼は逆に楽しそうに唇を歪めている。
だんだん苛立ちが募っていったメイジーは勢いに任せて、ガブリエーレの首元を掴んだ。
「ちょっと待ってよ! 今、考えているん……っ」
そう言いかけた途端、大勢の人たちがメイジーに武器や魔法でできた尖ったものを向けているではないか。
先ほどガブリエーレに牽制されていた青年たちは彼らを止めるように「やめろっ!」と大声で叫んでいる。
メイジーはガブリエーレの首元から手を離して両手を上げる。
ビリビリと肌に刺さる殺気。命の危機を感じていた。
メイジーの喉がゴクリと鳴ったのと同時にガブリエーレは一気に不機嫌になった。
この光景は先ほど見たものと一緒ではないだろうか。
メイジーに攻撃した青年二人はガブリエーレから返り討ちにあった。
メイジーが口を開こうとした瞬間だった。
『…………不愉快だ』
ガブリエーレの言葉と共にメイジーを攻撃しようとしていた者たちは何かに押されるように床に押し付けられている。
それは船の床にミシミシと頭が食い込んでしまうくらいだ。
ただ先ほどの青年たちは二人とも立っている。
汗がびっしょりと額に浮かんでいるが動けないらしい。
重たい感覚はあるものの、メイジーだけは普通に動けていた。




