④⓪
短い時間だが、この島で暮らしたさまざまな記憶が蘇ってくる。
原始的な生活では協力して、仲間がいなければ成し遂げられないことばかりだ。
メイジーはこうして暮らしているうちに色々と学ぶことがたくさんあった。
それを薄汚いなどと馬鹿にされるのは腹立たしくて仕方ない。
「ここは素晴らしい場所よ……! そんな言い方はやめてっ」
「……何?」
「お前……」
二人の怒りは完全にメイジーへと向いているようだ。
睨み合いは続いていたがメイジーの頭にはあることが過ぎる。
(この人たち……皇帝陛下って言っていたわよね。それにガブリエーレを探している。それってつまり……?)
苛立ちでそこまで思い至らなかったが、つまり彼らが探しているガブリエーレ。
ガブリエーレは皇帝ということにならないだろうか。
(そ、そんなわけないわよ……! 島で何もせずにぐうたらしている皇帝なんて聞いたことないわ)
だが、ガブリエーレが今まで使っていた不思議な力の数々は魔法だとしたなら納得がいくのではないだろうか。
そしてこの青年たちが使っているのものは魔法だ。
メイジーの知識の中で、ここまで魔法が栄えている国というのは一つしかない。
(ま、まさかスリーダイト帝国の皇帝がガブリエーレってこと!?)
そこでメイジーはあることを思い出す。
王女であるメイジーがスリーダイト帝国の皇帝の名前を知らないわけがない。
皇帝の名前はマルメレ。
マルメレ・ジス・スリーダイトだったはずなのだ。
(でもこの人たちが嘘をついているとは思えないわ)
しかしあの偉そうな態度を考えたら、彼が皇帝だとしたら納得できるような気がした。
「おい、聞いているのか?」
「…………へ?」
緑色の短髪の青年の声にメイジーはハッとする。
どうやら考え事をしていたせいで、まったく話を聞いていなかったようだ。
いつの間にか尖った木の枝がメイジーの首に食い込んでいた。
今にも皮膚を貫いてしまいそうだ。
久しぶりに感じる命の危機にメイジーは息を呑む。
尖った木の枝から離れようとするものの、反対側にはひんやりと冷たい水の塊がある。
窒息死なのか、刺死なのか選べと言われているような気がしてじんわりと背中に汗が滲む。
「もういい……十分だ」
「お前は下がっていろ」
「……っ!」
首の痛みが強くなった気がした。
怖いのに指一本、うまく動かせない。
やられる……そう思ったメイジーがギュッと瞼を閉じた時だった。
『誰がコイツに危害を加えていいと言った?』
低く恐ろしい声が聞こえた。
メイジーがゆっくりと瞼を開けると、そこには青年たちと同様に飛んでいるガブリエーレの姿があった。
そしてメイジーの前にフワリと着地する。
『メイジーを殺していいのは俺だけだ』
「……!」
いつの間にか島民やメイジーたちを囲っていた木々は無惨に枯れ果てて、水の塊はなくなっているではないか。
目を閉じていたメイジーには何が起こったのかまったくわからない。
けれど緑の短髪の青年は木で締め上げられて、青い長髪の青年は水の中にいる。
『ガブリエーレ様、来た!』
『我らの守り神、ガブリエーレ様』
島民たちはガブリエーレの登場に沸き立っている。
周囲から湧き起こるガブリエーレコール。
島民たちは腕を上げて、ガブリエーレの名前を呼んでいた。
メイジーは命が助かったのはいいが、目の前の苦しみ悶える青年たちが気になって仕方ない。
苦しそうに歪む表情を見て、メイジーは狼狽えていた。
「ねぇ……あの人たち、大丈夫なの!?」
『お前は今、コイツらに殺されかけたんだろう? 何故庇う?』
そう言ってガブリエーレはメイジーを見た。
その目には今までに見たことがないほどに冷たい。
初めて会った時の彼を思い起こさせる。
確かにメイジーはもう少しで彼らにやられていたかもしれない。
けれど目の前で彼らが殺されてしまうのだとしたら見過ごせない。




